沈黙が語る | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


韓国映画では、どうしてもハード路線の作品を好んで選ぶ。
何度もそれで「当たり」を出したからだ。
「息もできない」に「殺人の追憶」、「嘆きのピエタ」、「チェイサー」、どれも申し分ない傑作だ。


「声もなく」は女性監督ホン・ウィジョンのデビュー作である。
口のきけない貧しい男と、足の悪い相棒が誘拐された少女を預かることになる。
だが、少女の親は身代金を払おうとせず…。


一風変わった犯罪映画で、韓国での評価は高い。
どこまでも続く田園風景と、人生を変えたいピュアな主人公。
ここで描かれるのは、近年多くの名作が生まれた疑似家族の物語である。


主演は「ベテラン」や「バーニング劇場版」のユ・ア イン。
15㎏増量し、語らずに物語る役で映画にリアリティーを与えた。


ホン・ウィジョン監督は、決して露骨なバイオレンス・シーンを見せない。
激しいアクションも皆無だ。
もちろん声高にメッセージを振り回すこともしない。


それでも彼らの心の声が聞こえてくる。
主人公と少女の、満たされない者同士の心の繋がり。
声なき声が映画から洩れる。
されど人生、一筋縄ではいかない。
悲しいが、それも人生だ。