何故ジョン・カーペンターなのか? | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


現在上映されているジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022。
「ゼイリブ」「ザ・フォッグ」「ニューヨーク1997」、知らない人はまるで知らない3作品。
ホラー映画の帝王とも呼ばれ、B級でチープな映画を発表し続けるも、ファンは熱狂的だ。


クエンティン・タランティーノや黒沢清監督に影響を与え、信者は後を絶たない。 
新作を撮らなくなってから早12年、カーペンター監督もおとといで74歳を迎えた。
「ハロウィン」ではマイケル・マイヤーズという歴史に残る怪物を生み出し、「遊星からの物体X」では擬態する 宇宙生物の圧倒的な映像を作り出し、その影響下にある数々の亜流を登場させた。


アカデミー賞にも三大映画祭にも無縁な監督。
何故そこまで影響力を持ち、特集上映が組まれるのだろう?
「ニューヨーク1997」はキャスティングが魅力的だ。


オープニングでのキャスト名に、期待値が一気に上がった。
「ポセイドン・アドベンチャー」の濃いー顔で悪役道を90過ぎまで貫いたアーネスト・ボーグナインが、主人公の道行きを助けるタクシー運転手役という贅沢。


鋭い目で「真昼の決闘」等で多くの悪を演じたリー・ヴァン・クリーフが警察本部長役で、主人公に命令を下す。


ロード・ムービーならこの人、ハリー・ディーン・スタントンが 悪のリーダー的存在で物語を動かす。 
これもまた、映画ファンなら嬉しいはず。


悪に捕らえられる大統領役に、ドナルド・プレザンス。
ジョン・カーペンターのお気に入り俳優。
「大脱走」では失明する捕虜役でスティーヴ・マックイーンに次ぐインパクトを残し、「ハロウィン」シリーズでの精神科医役も評価される、名優中の名優である。


こういった俳優達が決して作品を選ぶことなく出演してくれるからこそ、この通好みのキャスティングが生まれたのだ。


騒ぐような傑作でもないし、かと言って無視出来ない作品。
何より、このキャストを揃えたことの奇跡。
ボーグナインとスタントン、プレザンスが並んでいるだけで、もう高揚してしまうのである。


傑作じゃなくていい。
名作なんてぶっ飛ばせ。
娯楽でいいじゃないか。
だってジョン・カーペンターだもの。