パントマイムの神の真実 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


マルセル・マルソーの来日公演に行ったのは25年くらい前だろうか?
自分もパントマイムをやっていた時期か、俳優の養成所の頃か?
マルソーは今度こそ最後の公演と何度も言われながら、度々来日していた。


マルセル・マルソーがホールのセンターに立つ時、センターに歩くのにお付きの人が体を支えていた。
センターに立つと、彼は鮮やかに動いた。
つまり、そういう体でもパントマイム公演を続けていたということだ。


多くのパントマイムの舞台を見て来たが、マルソーはパントマイムの神様。
特に「天国と地獄」という作品には感動した。
右手と左手を使って、天国と地獄を表現するのだ。
これぞ、パントマイム!


「沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家」。
マルソーが若い頃にレジスタンス活動をし、ユダヤ人の子供達を救ったことは知らなかった。
チャップリンやキートンの影響を受けてパントマイムを学んだ彼が、命懸けで戦っていたとは。


マルソーを演じるのは、アメリカで独自のポジションを手に入れて活躍するジェシー・アイゼンバーグ。
「カフェ・ソサエティ」ではウディ・アレンの分身を演じ、「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」ではレックス・ルーサーを、そして今回はパントマイムの神様。
マッチョなアメリカンとは異質の彼の個性が映える。


第二次世界大戦で地獄を見たからこそ、あの「天国と地獄」が人の心を打つのだ。
死の恐怖を乗り越えたからこそ、多くの人を笑わせることが出来たのだ。
あのパントマイム公演が、映画を観た後、別な意味を持って再び胸に響く。