
正統派のアメリカ映画「黒い司法 0%からの奇跡」。
無実の死刑囚と弁護士の長い闘いを描いた、熱いヒューマン・ドラマである。
1960年代ならシドニー・ポワチエが、1980年代ならデンゼル・ワシントンが演じそうな、正義感に燃える新人弁護士が主人公。
黒人差別が残る1980年代のアラバマ州。
冤罪を晴らすために奔走した、弁護士ブライアン・スティーブンソンの実話である。
彼らの前に立ちはだかるのは、差別という分厚い壁だ。
問題を抱える子供達のグループホームを描いた「ショート・ターム」で評価を得た、デスティン・ダニエル・クレットン監督。
彼の目は常に人間を信じ、真摯な眼差しはどこまでも温かい。
「ショート・ターム」以来出演3作目になるブリー・ラーソンが、法律事務所で主人公を支えるエバを演じる。
「ショート・ターム」以降目覚ましい活躍をし、「ルーム」でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、「キャプテン・マーベル」ではヒロインを演じているブリー・ラーソン。
彼女が一躍注目されたのが、クレットン監督「ショート・ターム」でのケア・マネージャー役であることは間違いない。
今回も堅実な演技で映画を支える。
主人公には「クリード チャンプを継ぐ男」のマイケル・B・ジョーダン。
死刑囚役にオスカー俳優のジェイミー・フォックス。
脇を固める俳優達の演技も鳥肌もの、とにかくいい。
古くからある裁判物、例えば「12人の怒れる男」のような真実を追求する男のドラマ。
差別の理不尽さを徹底して描いた「夜の大捜査線」のようなアメリカの暗部を突いた作品。
そういった名作と肩を並べると言っても言い過ぎではない程、映画の出来は完璧だ。
何故彼はここまで自分を信じて、信念を貫いたのか?
何故死刑囚は希望を持ち続けて、その日を待ったのか?
アメリカの闇は暗くて深いが、一方で絶対的な正義もある。
困難に立ち向かう彼らの勇気に感動する。