ファルハディが描く誘拐 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


イランの映画監督アスガー・ファルハディの新作を期待する映画ファンは多いだろう。
実際自分の周りにも、早く観たいと口にするファンがいた。
もうすっかり彼の名前は、日本のファンにも定着したはずだ。


この10年は賞の常連で、「彼女が消えた浜辺」でベルリン映画祭銀熊賞、「別離」でアカデミー賞外国語映画賞、前作「セールスマン」でもアカデミー賞外国語映画賞、カンヌ国際映画祭で脚本賞と男優賞を受賞している。


彼の映画では、家族の崩壊や人間関係の歪みが描かれ、その心理描写の巧みさが光る。
ジリジリとその時間を共有すると、いつしかファルハディ中毒になるのだ。


今回は実際の夫婦でもあるペネロペ・クルスとハビエル・バルデムを迎え、娘の誘拐によって明らかになる疑惑や闇を描く。
「誰もがそれを知っている」
濃厚なサスペンスであり、人間ドラマである。


主要な賞こそ逃したものの、何とも言えない後味が残る良質の作品である。
アッバス・キアロスタミ監督がイラン映画の道を切り開き、現在イラン映画を支え、世界に発信するアスガー・ファルハディ。
もう既に次回作が待ち遠しい。