
「失踪」というサスペンス映画はかつて観ていた。
今回30年の時を経て日本劇場初公開となった「ザ・バニシング~消失」のハリウッド・リメイク版だ。
ハリウッド版はジェフ・ブリッジスとキーファー・サザーランド、サンドラ・ブロックが出演し、監督はオリジナル同様ジョルジュ・シュルイツァーが務めた。
ラストの主人公の選択に賛否あるだろうが、それにしても衝撃は大きい。
この映画の面白さは主人公と犯人の両者を交互に描くことにある。
かつて黒澤明監督は「天国と地獄」で、前半で主人公、後半で山崎努さん演じる犯人を描いた。
一気に代わる主人公が、鮮烈であった。
この「ザ・バニシング~消失」では、主人公の幸せな妻との旅路と、突然行方不明となった瞬間、その後の生活の苦悩。
一方で家族を持つ犯人が家族との幸せな生活を築きながらも、歪んだ女性誘拐の行動を失敗を繰り返しながらも、主人公の妻に辿り着く瞬間まで描いてみせた。
犯人役の怪演により、映画の恐怖は増し、絶望的なラストへとなだれ込むのだった。
3年間妻を探し出そうと奔走する男の執念と、3年間それを隠し通して日常生活を送る男の異様さを、その目で焼き付けてほしい。