
ガツーンと殴られたような、「ブラック・クランズマン」を観た直後はそんな気分になった。
スパイク・リー監督の激しいメッセージがそこにあったからだ。
黒人刑事がKKKに潜入捜査するという前代未聞の実話を映画化したもの。
これ、アカデミー賞作品賞を受賞した「グリーンブック」と続けて観賞すると、アメリカの今がくっきりと見えてくる。
いかにもアカデミー賞好みの人間ドラマ「グリーンブック」では人種を越えた友情が描かれていたが、「ブラック・クランズマン」は現在も人種問題は終わっていないことを訴える。
カンヌ国際映画祭では「万引き家族」に次いでグランプリを獲得したこの作品だが、アカデミー賞作品賞発表の時には、スパイク・リー監督は怒りを露にしたのだそう。
これまでずっとアメリカのアカデミー賞に正当な評価を受けてこなかったスパイク・リー監督。
今回の受賞ならずは、約30年前の1990年と重なる。
今も評価の高いスパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト・シング」は、「ドライビング Miss デイジー」に敗れたのだった。
その苦い過去が甦ったのだろうか?
映画後半でスパイク・リー監督は、現在のアメリカの元凶であるトランプ政権を映し出す。
何故トランプは人々から熱狂されるのか?
それだけ昔も今も変わらず白人至上主義、つまりアメリカファーストが叫ばれているのだ。
危険な国アメリカが映画のクライマックスで浮き彫りになる。
それこそ、スパイク・リーがこれまでも、これからも戦い続けてきた理由なのだ。
時を経て、スパイク・リーの映画を支え続けてきたデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが、スパイク・リーの叫びを代弁している。