映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


一言では片付けられない重いテーマを持った映画「安楽死特区」。
高橋伴明監督の気迫を感じる。
もし日本で「安楽死法案」が可決されたら、という話だ。


余命を宣告された元ラッパーが主人公。
それを支えるのは、チベットで出会ったジャーナリストの女性。
安楽死を希望する者達が入居する施設を訪れる二人。


前向きに生きようとする主人公だったが、問題を抱えた入居者と接するうちに心が変化していく。
人間の死を描いた映画は多いが、これ程貫いた映画はそうはない。
タブー視されている安楽死と徹底的に向き合っている。


パーキンソン病に冒されていく主人公を演じるのは、「桐島です」の毎熊克哉さん。
難しい役に毎回トライする俳優の、正に魂の演技だ。
大西礼芳さんとのクライマックスは強烈。


死と向き合った他の出演者の演技も鬼気迫り、余貴美子さんや平田満さん、筒井真理子さんらがスクリーンで揺れる。
ラストの2つのシーンは賛否意見が分かれるだろう。
これも高橋伴明監督らしさかなとは思う。


死を選ぶのは自殺。
死を幇助するのは犯罪。
それでも体が不自由になり、苦しくて死を求める人も少なくない。


ジャン・リュック・ゴダールがスイスで安楽死を選んだ時も、議論を呼んだ。
死せる者と、側にいてほしいと生を望む者。
日本でも安楽死が当たり前になる日が来るのだろうか?





作家の落合信彦さんが亡くなった。

若い頃、「狼たちへの伝言」に影響を受けた。

男の熱い生き様がそこにあり、強引なまでに我々若者を引っ張った。



映画監督の長谷川和彦さんも亡くなった。

たった2作を監督して、生ける伝説になった。

「青春の殺人者」と「太陽を盗んだ男」。



当時、評価もされたが、斜陽だった日本映画でこんなに面白い映画を作れる監督が現れたと期待された。

ファンも多く、新作も常に待ち望まれた。

しかし、実現には到らなかった。



企画が立ち上がっても新作を撮らない。
そのことが尚一層、彼の過去作に対するファンの思いを強くさせた。
それ程の天才だったのだ。


偉大なる先輩達が次々旅立っていく。
作品は死なない。
淋しいが、作品が今後また誰かの心を捉えていくのだろう。







前から何度も繰り返すが、こういう映画には弱い。
これは、 命続くかぎり限りずっと続くのだろうな。
「モディリアーニ!」


絵が売れないのは苦しいことだろうと想像する。
バンドで売れないのも苦しかったし、役者で売れないのも苦しかった。
お笑いで売れないのも同様だろう。


仕事がない、必要とされないことが苦しい。
お金にならない、食えないのも苦しい。
自分が必死で描いた絵に、価値を見出せて貰えないのはどれ程の苦しさか?


モディリアーニは長い首の女性の絵で、今では世界中の人が知っている。
だが当時は無名であり、見向きもされなかった。
アル・パチーノからの依頼で、ジョニー・デップが30年振りに映画を撮った。


大金持ちのコレクターをアル・パチーノが演じている。
クライマックスの主人公とアル・パチーノのヒリヒリするシーンは必見だ。
モディリアーニのプライドと意地は、売れない経験を持った者なら誰もが共感するだろう。


ジョニー・デップが描きたかったのも、モディリアーニの破滅的人生だ。
モディリアーニの死は、肺結核や薬物依存が原因とされている。
絶望し、自分の作品を破壊し、自分をも破壊する衝動に駆られる姿は、あまりにも痛々しい。


デップが敬愛するバスター・キートンやチャップリンのような敢えてドタバタを描いているのも、彼らしい表現。
ユーモアも交えているが、基本はモディリアーニの苦悩が全編に溢れている。
売れなくて自己を破壊していくのはゴッホも有名だが、モディリアーニも生前は全く売れなかった。


近年諸事情で映画に参加出来ず、苦しんだジョニー・デップ。
モディリアーニの人生と自分を重ねたことは間違いないだろう。
映画は、売れない者、貧しき者、夢を追う者への賛歌だ。