リュウガ 「では、野郎ども!今宵の満月に、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
いつもの満月の宴と同じように、それぞれが好きなお酒を飲む。
もちろん、ナギが作ったおいしい料理も並んでいる。
シン 「・・・いい満月だ」
シンさんが目を細めて夜空を仰ぐ。
「きれいですよね」
ソウシ 「お天気よくてよかったよ。せっかくのブルームーンだしね」
「ブルームーン?」
・・今日のお月さま、別に青くない、けど・・?
シン 「お前、『青くないのに』とか思っただろ」
「!!」
シンさん、鋭い・・
リュウガ 「ははは!お前は素直だからなぁ。言葉通りにとれば、そう思うよなぁ」
船長の大きな手で、ガシガシと頭を撫でられた。
「せ、せんちょ・・ 痛いです・・」
お酒が入って加減できないのか、いつもよりちょっと荒っぽい手つき。
ソウシ 「ブルームーンてね、一ヶ月のうちで2回目の満月のことを言うんだよ」
「2回目・・そういえば、そうですね」
シン 「ほぼ数年に一度、暦の関係で起こる。ただそれだけだがな」
「皆さん、物知りですねぇ」
シン 「お前が知らなすぎるだけだ」
ナギ 「・・船長」
料理を運んでいたナギが、船長にグラスを差し出した。
「うわ、きれい・・」
グラスの中には、薄紫のお酒が入っている。
リュウガ 「これも、ブルームーンだ」
「お酒の名前?」
運び終わり、私の隣に座ったナギにきいてみた。
ナギ 「・・あぁ。菫のリキュールで作るから、ああいう色になる」
「へぇ・・」
リュウガ 「Parfait amour。『完全なる愛』ってリキュールだ。どうだ?俺がお前に、完全なる愛を、教えてやろうか?」
グラスの中身を飲み干した船長が、にやり、と笑って私を見た。
「・・え」
ナギ 「・・・もう一杯、どうぞ」
す、とナギがまた、船長にカクテルを差し出した。
ソウシ 「ふふ。『できない相談』ってことだね、ナギ」
シン 「『叶わぬ恋』ってのも、ありましたよ」
ナギ 「・・・」
リュウガ 「冗談だ、冗談!んな睨むなよ、ナギ!!がははは!!」
できない相談、も、叶わぬ恋、も、このブルームーンというカクテルに込められた意味なんだよ、とソウシ先生が笑って教えてくれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今日のお料理も、おいしかった~」
キッチンで、宴の後片付け。
ナギが洗ったお皿を、布巾で拭いて、調理台に載せていく。
ナギ 「・・そうか」
いつもの無表情だけど、ほんのわずかに、口元が緩んでいるナギ。
こういう小さい変化がわかるようになったのは、ごく最近で、それが、すごくうれしい。
「あ、今日のカクテル、きれいな色だったね」
ナギ 「・・あぁ」
「けっきょく船長が全部飲んじゃったなぁ・・ ちょっと飲んでみたかった」
ナギ 「・・あるよ」
お皿を洗い終え、きゅ、と水を止めたナギが、言った。
「え・・あるの?」
ナギ 「あぁ。飲みてぇのか?」
「うん!」
ナギ 「・・待ってろ」
ナギは濡れた手を拭くと、いま洗ったばかりのグラスを取った。
そして、いつもながら、魔法のような素早さで、あっという間に目の前にカクテルが置かれた。
「・・きれい」
薄紫のお酒は、まるで、青白い月が融けたみたい。
手を伸ばして取ろうとした私よりも早く、ナギの手がグラスを持ち上げた。
「あ、私が飲むのに!」
ナギ 「・・『できない相談』」
ふ、と笑ったナギが、グラスに口を付けたかと思うと、一気にお酒を流し込んだ。
「えーっ!!飲みたかったのに~!!」
ナギ 「・・さんざん別の酒飲んでただろ。飲みすぎだ」
「私のために作ってくれたんじゃなかったの?ナギのイジワル~」
ふい、と顔を背けた私の視界が、遮られた。
・・え?
ふわり、とお酒の香りを感じるのと同時に、唇にあたたかい感触。
ナギ 「・・・味見は、これで十分だろ」
・・・キス、されたんだ、よね。
唇に、わずかにお酒の味があるような、ないような。
二人きりとはいえ、ナギが、こんなところで、こんなことをするなんて。
「ブルームーン、だ」
ナギ 「・・あ?」
「ナギが、こんなことするなんて、珍しいってこと」
ナギ 「・・ま、たまには、悪くねぇ、な」
少し照れたような顔をしたナギが、私に背を向けて、グラスを洗い始めた。
あぁ、私、ナギが、好きだ。
唐突にそう思って、思わず、ナギの広い背中に抱きついた。
ナギ 「・・洗えねーだろーが」
「船長じゃなくて、ナギが教えて・・?」
ナギ 「は?」
・・・今日の私、確かに、飲み過ぎた、かもしれない。
「『完全なる愛』。ナギに、教えてほしい・・」
こんなこと、言うなんて。
呆れられちゃう、かもしれない。
恥ずかしくて俯いていたら。
「っきゃぁ!」
ふわり、と体が浮く感覚。
気がつくと、ナギの顔が間近にあった。
ナギ 「・・あのカクテル、もう品切れだ」
「・・え?」
ナギ 「『できない相談』って返しは、ありえねぇっつーことだ」
ニヤリ、と笑ったナギは、私を抱えたまま、足でドアを開け、すたすたと歩いていく。
ナギの肩越しに見た夜空に、少しだけ雲がかかったBluemoonが浮かんでいた。
■□■□■□■□■□
日付変わっちゃいましたが・・
同じ月内での、二度目の満月を、Bluemoon、というそうです。
綺麗な名前だなぁ、なんて思って、仕事中にググっていたら ←働け![]()
同じ名前のカクテルもある、というのを知って。
満月といえば、シリウスの宴!!と、仕事中に浮かんだネタでした。
9月になっても、残暑が続くとか。
みなさま、ご自愛くださいませ。
それでは、おやすみなさい![]()