わたしを離さないで (2010) 英 | ゆうべ見た映画

ゆうべ見た映画

懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

マーク・ロマネク監督

 

イギリス在住の作家 カズオ・イシグロさんの原作

 

イシグロさんの

『日の名残り』も素晴らしかったですが

 

こちらの作品は 非常に衝撃的で 

その過酷な運命に 想像を超える哀しさで

胸を打たれました

 

 

ネタばれ、ご免

 

 

冒頭、こんなテロップが流れます

 

「1952年 不治とされていた病気の治療が可能となり

 1967年 人類の平均寿命は100歳を超えた」

 

これはいったい、どういうことなのでしょう

 

1978年 緑豊かな自然に囲まれた 寄宿学校ヘールシャム

 

7歳のキャシー、ルース、トミーの三人は

ここで 他の児童と共に 健やかに過ごしていた

 

左 ルース(エラ・パーネル) キャシー(イジー・メイクル・スモール)

 

トミー(チャーリー・ロー)

 

だが ここで学ぶ子供たちは 全員、親も帰る家も無い

 

そして学校は 謎に満ちていた

 

外界とは 完全に隔絶されており 

過去に逃げ出した子供は 手足を斬り落とされ殺された・・

という話を 生徒たちは信じていた

 

生徒たちは「保護官」と呼ばれる先生の指導で

絵画や詩を創作し

授業では 世間で行われる「買い物」の練習もする

そして 頻繁に行われる健康診断

 

そんな日々の中 

キャシーとトミーは 小さな恋を育んでいた

 

トミーからプレゼントされた カセットテープを聴くキャシー

 

 ♪~ Kiss me、never、hold me~

 

ジュディ・ブリッジウォーターという 女性歌手の歌う

この映画の原題でもある

「Never Let Me Go」の 甘美な歌が堪らなくいいです

 

しかしやがて キャシーは 

ルースに トミーを奪われる

 

そんなあるとき

新しく赴任して来た 若い教師(サリー・ホーキンス)によって

子供たちははじめて 自分たちの過酷な運命を知る

 

「子供は成長して何になるでしょう

 ある者は俳優になり、ある者はスーパーで働き

 ある者はスポーツ選手になる

 でもあなた達は違う

 俳優にもならず スーパーでも働かない

 あなた達の人生は 既に決められているのです

 大人にはなるけれど それは僅かな時間で

 やがてあなた達は (誰かの為に)臓器を提供するのです

 そして大抵は3度目か 4度目の手術で 一生を閉じるのです

 どうか自分というものを知ることで 『生』に意味を持たせてください」

 

この子たちは

クローンで誕生した 臓器提供者なのだ

 

真実を告げた若い教師は 職を失い

翌日、施設を去って行った

 

それから11年が経ち 18歳になった三人

キャシー(キャリー・マリガン)

 

トミー(アンドリュー・ガーフィールド)

 

ルース(キーラ・ナイトレイ)

 

施設を卒業した三人は コテージと呼ばれる場所で

他の施設から来た者たちと 共同生活をしながら

臓器移植の連絡を待つ

 

 

だが 今は恋人同士である 

ルースとトミーの傍で 孤立していたキャシーは

介護人の道を選択し コテージを出た

 

介護人とは 

臓器移植が決まった 提供者に寄り添い

心理的にも体力的にも 親身に世話をする仕事である

 

やがて ルースとトミーも 

それぞれ別の場所に 移動となり

三人の関係は 完全に断ち切られた

 

それから 9年が経った

優秀な看護人となったキャシーは

ある病院で 偶然ルースに逢う

 

ルースは既に 二度の手術を受けた後で

歩くにも支障をきたす程だったが

ふたりは キャシーの車で トミーに逢いに行く

 

再会した三人

ルースは ふたりに向かい

自分の嫉妬心から ふたりの仲を裂いたことを謝罪し

 

やがて 3度目の手術の後 「終了」した

手術によって亡くなることを 「終了」と言う

 

ラストシーン

 

キャシーの見つめる ガラス越しの手術台には

トミーが横たわっている

これで「終了」するであろう 最後の手術だ

 

そして

介護人としての キャシーの最後の仕事でもあった

 

一ヵ月後、キャシーにも手術の通知が来ていた

 

「わたし達と、わたし達が救う人とは何が違うのだろう」

 

 

       ピンク薔薇

 

重い題材ですが

若い三人の俳優さんが みんないいのです

 

冒頭部分の寄宿学校での 子供たちの描写など

ちょっと、萩尾望都さんの作品を想わせました。

 

       ピンク薔薇

 

 

長崎県で生まれた カズオ・イシグロさんは 

6歳で お父上の仕事の関係で イギリスに渡り

 

28歳の時の 初めての小説「遠い山なみの光」で

王立文学協会賞受賞

 

35歳「日の名残り」で

英国圏最高のブッカー賞受賞

 

2017年・63歳で ノーベル文学賞受賞

 

日本の影響を受けたとしたら

小説よりも 小津安二郎、成瀬巳喜男など 

1950年代の日本映画に強く影響を受けたと語られています

 

若い頃はミュージシャンを 目指していたそうで

・・なんてカッコいいんだろう