砂の女 (1964) 東宝 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 

 

安部公房原作  勅使河原宏監督

 

いつもながら、大ネタばれです。

 

これほどの映画!

是非、是非のお薦めです。

迷った方は、記事をスルーしてください。

 

 

クレジットタイトルに 判コのコラージュ。

この判コにも意味がある。

 

 

ある夏の日

都会に住む 31歳の教師・二木順平 (岡田英次)は

リュックサックに 水筒を背負い

ある県の駅に降り、バスに乗り、終点で降り、海辺に向かった。

 

 

潮の香りのする 砂地を歩いていると 

突然、視界がひらけて 部落があらわれた。

 

部落の それぞれの家の屋根は 

周辺の砂の斜面より低く
砂の窪みの中に 家が沈んでいるという具合だ。

 

二木順平の目的は、砂地にすむ昆虫の採集だった。

 

そろそろ、陽が傾き始めた頃

近づいて来た村人が 親し気に話しかけ

今夜、泊まる家を世話してくれた。

 

村人 (三井弘次)

 

その家の周辺の砂の壁は 屋根の三倍ほどの高さがあり

上り下りには

縄梯子を使わなければならない。

 

それを使って下に降りると

上から カラの石油缶とスコップが降りて来た。

 

それは “私の分” ということだった。

 

 

そこには 30前後の女 (岸田今日子)が一人で住んでいた。

亭主と子供は去年の台風で 砂に埋まって死んだという。 

 

食事どき、頭の上に番傘を広げる。

屋根の隙間からも 砂が落ちて来るのだ。

 

女は夜になると 外に出て 

スコップで石油缶の中に 砂を掬っていた。

 

砂の湿った夜の時間に 砂掻きをして

絶えず、崩れ落ち続けている

周辺の壁の砂が 一挙に崩れる"砂なだれ"を防ぐのだという。

 

村人たちは 夜中に砂掻きをするのが決まりで

これを毎日、朝までやる。

 

翌日、砂はロープと滑車を使って 

村人たちによって 引き上げられる。

 

どの家でも、これをやらないと

飲み水をはじめ、物資の配給が来ない。

注文すれば 何でも揃えてくれるという。

 

「しかし、それじゃあ、

 まるで砂掻きするために生きてるみたいじゃないか」

 

二木は翌日、女が昼寝をしているのを見計らって

脱出することにしたが

見ると 下がっていた縄梯子が無くなっていた。

 

「もう、お分かりでしょう。

 女手ひとつでは ここの生活は無理なんです」

 

数年前にも人手が不足した 家があり 

絵葉書屋のセールスマンと 学生がひとり来たが

セールスマンは もう亡くなり 

学生は3軒おいた隣りに 今もいるという。

 

つまり自分も 蟻地獄に落ちたのだ。

 

冗談じゃない!

馬鹿らしくなって 砂掻きなんか止めろと 

二木は狂暴になって 女の手を縛り 

砂掻きを止めさせたが

 

翌日、ドカッと砂なだれが起きた。

それは想像以上に凄いもので 二木は度肝を抜かれた。

 

やはり、砂掻きをしないではいられないのだ。

何よりも、飲み水が底をついて来た。

 

二木は 砂を掻く作業を受け入れた。

そして

 

自然のなりゆきのように、女と関係をもってしまう。

 

しかし、ちゃんと戸籍を持ち、職業につき

税金も納めているし、保険証も持っている。

そんな一人前の人間を 拉致するなど許されるものだろうか。

 

3日間の休暇はとうに過ぎ

そろそろ捜索願いが 出されていてもいい頃であると

新聞を頼み、見てみたが何も出ていなかった。

 

数日後 二木は着替えのシャツや

女の死んだ亭主の へこ帯などを繋ぎロープを作り

遂に脱出に成功した。

 

が、その瞬間、激しく半鐘が打ち鳴らされ 村人たちが追ってきた。

 

火の見やぐらから 見張られていたのだ。

 

二木は走って走って ぬかるみにはまり

藻掻いているところを 村人に救われ

もとの家の穴に 吊り降ろされた。

 

「今まで逃げられた人はいないんですよ」

ふたたび、女と砂との暮らしがはじまった。

 

女はラジオが欲しいと 内職をはじめ

二木も 天井裏の砂はらいや

米をふるいにかけたり 洗濯などをした。

 

そうして繰り返される 砂との闘いや

日課になった手仕事に 

二木は不思議に ささやかな充足を感じた。

 

そしてあるとき 砂にうずめて置いた樽の中に 

僅かな水が溜まっているのを 発見する。

 

砂の毛管現象である。

表面の蒸発が 地下の水分を引き上げる

ポンプの作用をしているためだった。

 

二木は貯水装置の研究に興味を覚えた。

 

ある夜、突然、女が苦しみ出し

村人を呼ぶと 子宮外妊娠ということが判り 

町の病院に入院させることになった。

 

女がロープで 連れ去られた後

 

縄梯子が そのままになっていた。

 

二木は、梯子を登った。

途中まで登ると 向こうに海が見えた。

 

そして、穴の底をふり向くと 

家の中では ラジオが何やら歌ってる。

 

「べつにあわてて、逃げる必要もないのだ」

 

貯水槽置の研究もある・・

二木はそう思った。

 

 

 

二木の妻から 失踪届けが出されてから七年が経ち

家庭裁判所の審判により 

仁木順平は 失踪者と審判された。

 

 

      黄色い花 

 

何と言っても スタイリッシュなカットに惹かれます。

刻々と姿を変える美しい砂丘、砂に生息する昆虫たちのショット。

武満徹の音楽。

 

体にまとわりつく砂粒の不快感と

心と身体の耐え難い渇き

岸田今日子さんに潜むエロティシズム。

 

 

 

ロケ地は 静岡県御前崎市の浜岡砂丘だそうです。

 

1964年年度 

キネマ旬報 

ブルーリボン賞

毎日映画コンクール 

優秀映画賞で それぞれ第一位を受賞

 

カンヌ国際映画祭審査員特別賞

アカデミー賞外国語映画賞・監督賞ノミネート

 

      黄色い花

 

原作は阿部公房・27歳で書かれた作品。

海外でも高く評価され、世界30か国で翻訳出版されている。