市川崑監督
久しぶりに観ましたが やっぱりいいですね。
映画がはじまったとたん、ゾクゾク来る。
クレジットタイトルに流れる
芥川也寸志さんの音楽にも シビレる。
もの凄くモダンで スタイリッシュな作品。
シャープな画面構成、モノクロの映像が 恐ろしく素敵です。
お話。
テレビプロデューサーの 風松吉(船越英二)は
美しい双葉 (山本富士子)という 妻がありながら
他に、9人もの愛人がいる。
妻の双葉は 松吉の浮気癖には もうすっかり慣れていて
レストラン経営に力を注ぐことで 気を紛らわせている。
この、妻も入れて
十人の愛人たちの名前が 番号になっているところが面白い。
↓
市子 双葉 三輪子 塩 五夜子 虫子 七重 八代 櫛子 十糸子。
妻と愛人たちは お互いの存在を知っており
不思議な連帯感と 奇妙な友情が芽生えている。
あんな男のどこがいいのかしら と言いつつ
他の女といるのを見ると
悔しくて悔しくて 頭がいっぱいになって 何も手につかない。
いつもいつも 気にかかって、あんまり苦しいので
顔を合わせると 女たちは口々に言う。
「風松吉なんか、ぽっくり死んでしまわないかしら」
「誰か殺してくれないかしら」
「僕のどこがいいんだい、僕なんかつまらない男だよ」
「誰にでも優しいってことは、誰にも優しくないってことよ」
あるとき 愛人のひとりである
女優の市子 (岸恵子)が 双葉を訪ね
松吉を殺す計画を話し合い 楽しんだ。
「分量が難しいわよ、グーグー寝ただけで 起きて来られたら堪らないわ」
「枕をかぶせて、窒息死は?」
「駄目駄目、相当な力がいるわ、こっちが汗ダクダクよ」
そんな自分の殺しの噂を 聞いた松吉は
海岸で十人の女に囲まれ、無理矢理、薬を飲まされて
海に捨てられる場面を 想像する。
恐ろしくなった松吉は 妻に相談、助けを求め
ふたりは 狂言殺人を思いつく。
みんなの目の前で 双葉が松吉を殺し
そのまま松吉は、しばらく雲隠れしてしまう・・・
そういう計画。
松吉が死んだことで 愛人たちの心も ぷいっと離れるわ。
銃は空砲、血はトマト。
計画は大成功。
だけど 誤算があった。
後を追って 自殺した。
(幽霊になって、この後もたびたび 出て来ます)
その後、妻・双葉は 市子に松吉を譲り渡し
市子の元で 怠惰な日を過ごした松吉は
やがて、市子から 会社に退職願が出され
双葉に 離婚届を提出され
女9人で 生活費を出し合って
松吉を養う計画に なっていることを知らされた。
全てを失ったことに 気づいた松吉・・・
なんと言っても 女優さんたちが
自分の美しさに 絶対の自信を持っている。
目尻をキュッと上げて引く 太めのアイライン。
大きく膨らませたヘア・スタイルが 今見ると新鮮。
「殺して、殺して、殺してやりたい」
これが当時の キャッチ・コピー。
伊丹十三
ハナ肇とクレイジー・キャッツ
森山加代子・・・
レンタルDVD鑑賞