さらば愛しき大地 (1982) | ゆうべ見た映画

ゆうべ見た映画

懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 


柳町光男監督


以前、一度観ていて

そのときはそれほどの 作品とは思わなかった。

 

でも今観ると いいのよ。

昔から 秋吉久美子さんが好きなのですが 
特にこの作品の秋吉さんは 魅力的だなあと思う。

 



お話。

茨城県・鹿島地方。

広々とした田園地帯に 

今、工業コンビナート建設の波が 押し寄せている。


この一角にある 農家の山沢家。


父、母、嫁の三人で 稲作の農業。


長男・幸雄は 砂利運搬のダンプカーの運転手。
次男の明彦は 東京で働いていた。

 


image

山沢幸雄 (根津甚八)

 

 

image

山沢明彦 (矢吹二朗)

 

 

image
母(日高澄子) 父(奥村公延)  幸雄の妻 (山口美也子)

 


幸雄と妻の間には 最愛の双子の息子がいたが
あるとき、この子たちが 沼で溺死してしまう。

 

image


幸雄は 
三人目の子を身籠っている お腹の大きな妻を
責め、なじり、容赦なく乱暴し

 


image
 

自分は
息子たちの供養にと 背中いっぱいに 

観音像と子供の戒名を 刺青した。


そんな折、かつては弟の恋人だった順子を
ダンプに乗せてやったのを きっかけに 

ふたりは同棲をはじめる。
 

 


image

順子 (秋吉久美子) 
 

 

そして4年。

幸雄の二重生活は続き 
順子との間にも 娘が生まれ

それなりに 幸せな日々が続いたが

 

image

 

 

image
 

 

しかし絶頂期に比べると、コンビナートでの仕事は減り始め 
順子はスナックで 働くようになり


image

 

image

 


そんなことへの ストレスやら不安から 

やがて幸雄は 覚せい剤に手を出すようになる。
 


覚せい剤仲間・大尽 (蟹江敬三)

一方、山沢家では 母の強い希望で
東京から戻って来た 

弟の明彦も ダンプの運転手をはじめた。

兄とは違い 真面目な明彦は

着実に仕事をひろげ 一年目に事務所を持つ程に成長し

それを傍目に見ながら ますます荒れて
やがて仕事も しなくなる幸雄。
 

image
「もう一度、あの頃の 男らしいあんたが見たい。」
 ダンプを乗り回していた あんたが見たい」





image


開け放した ガラス戸の向こうに
いっぱいに広がる稲穂を 幸雄が眺めるシーン。

 

image

 

image

一陣の風が さあっと水田を渡っていき

遠い向こうの木々をゆさゆさと揺らす 美しい風景。

 

 

このシーンが 何度か出てくるのですが 

何故か、強く胸を打つ。


image

 

この一帯に広がる水田は 

ここに生まれ、ここで育った、幸雄の原風景である。

 

 

そこから、人間として 

二度と這い上がれない所まで 

ずるずる、ずり堕ちて行こうとしている自分・・・

 

そんな、自分の姿を見据える

幸雄の想いが 伝わって来るシーン。

 

 

しかし現実に戻れば ますます、粗暴性を増し 

順子への暴力もエスカレート。


image


日々、覚せい剤による 幻聴、幻覚に怯え

そして遂に、取り返しのつかない 凶行に走ってしまう

 

 

     〇    

 

内容が暗い、救いようがない、地味などと評され

配給会社をたらいまわしになったが

 

若手宣伝マン達が中心となって 支援する会を結成

結果的に大ヒットとなり

 

キネマ旬報・第二位

日本アカデミー賞・監督賞(柳町光男)

  〃       ・主演男優賞(根津甚八)

  〃       ・女優助演賞(山口美也子)など

たくさんの賞を取りました。

 

     〇

 

この、茨城なまりというのが 

はじめは特に 聞き取りにくいところがある。

 

私にも 茨城に従兄弟がいるのだけど
何十年経っても 早口のこの言葉が判らないときがあって

 

判らないから、うんうん・・なんて 適当に言ってると

えー、そうなんだ!なんて驚かれて

今度はこっちが えー、何が!って・・・ 通じてないじゃん。

 

でも方言は好きですよ。

羨ましいみたい。

 

根津さんなんかも もの凄くお上手なんですよね。

従兄弟の声を 聞いてるみたい。

やっぱり俳優さんて、凄いのだわ。


そして、こんなやりきれない映画の終わりが

のどかで、ユーモラスなシーンというのも とてもいいの。


 

 

 

DVD鑑賞