懐かしドラマ 「冬構え」  1985 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 


山田太一 原作・脚本  深町幸男 演出



1980年代に NHKで放送された
山田太一さん×笠智衆さんの ドラマシリーズ 
「ながらへば」「冬構え」「今朝の秋」の三作は 
いずれも胸に染み入る秀作です。 


「ながらへば」「今朝の秋」は
以前、ご紹介させて頂きましたので


今回は 「冬構え」のお話を。

 


岡田圭作 (笠智衆)


6年前に妻に先立たれ 一人暮らしの圭作は
東北へと旅に出た。

近頃、心身共に衰えを感じている圭作。
実は 全財産を持っての 
帰るつもりの無い 死に場所を求めての旅である。


運転手 せんだみつお

タクシーで到着した 鳴子温泉のホテルで
圭作は部屋係の麻美に 2万円のチップを渡した。

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麻美 (岸本加世子)


あまりの高額に 麻美は辞退するが
どうしても聞かない圭作に 

 

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せめてお礼にと肩を揉むと 1万円追加。

翌日、朝食を用意すると、また2万円のチップ。


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「わしは幾らでも金がある。
 普段は秘書だのを何人も連れて旅をしておる」


麻美はそれを 恋人である板前の昭二に話す。
 

昭二 (金田賢一)

賢一さん、画像が暗くてすみません。

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「きっと、松下幸之助みたいな人よ」



ふたりは近い将来、結婚し
昭二の故郷・八戸で小料理屋でも 開きたいと思っている。
 


それで、あのお金持ちのお爺ちゃんに
少しまとまったお金を 出して貰えたらと
ムシのいい事を考えるが・・・

そんなことを知るよしもなく 圭作は翌日ホテルを発った。

晩秋の東北を 歩く圭作。

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そして
途中出会った初老の女性と 束の間、心を通わせ・・・


 


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旅の女性 (沢村貞子)


「穏やかに歳を取られて…
 私なんかいつまでも、生臭くて駄目です」


その頃、昭二が 板前頭と大喧嘩。
麻美とふたりで ホテルを飛び出した。


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「やっぱり、お爺ちゃんを探してみようよ。

 あの人なら、きっと助けてくれるよ」

昭二は、他人のお金をアテにするなんてと
乗り気じゃないが 結局はふたりで圭作の跡を追う。


圭作は八戸で 旧友を訪ねるが
友は癌を患って入院していた。

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旧友 (小沢栄太郎)


「治る見込みも無いのに 年寄りだから進行が遅い。
 早く死なせろってんだ、家族だってうんざりしてるよ」

圭作もつい、本心を洩らす。

「わしだって、子供も孫も、お爺ちゃんお爺ちゃんと
 今は和やかなもんだが ひとたび寝込んだら、そうはいかん。
 たちまち夫婦喧嘩で たらい回しだ。
 贅沢かも知れんが いい爺さんのまま死にたいんだ」

すると、圭作の覚悟を知った 旧友は

 

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「そりゃ、いかん、そりゃあいかんよ!」と
圭作を必死で止める。

この小沢栄太郎さんの 迫真の演技は胸を打ちます。


この後、やっと圭作を探し当てた 若いふたりでしたが


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「爺さんの靴、見たか? 何年も履き古したやつだ。
 服だって高級じゃない。秘書だの何だのって嘘に決まってるよ」


やがてふたりは 圭作が死ぬ気でいることに気づくが
だけど、若いふたりには どうしたらいいのか判らない。


とりあえず、「俺の家に行くか」
と、八戸の昭二の生家に。 

昭二の母も姉も  
出稼ぎで何年も帰らないという その家で
ぽつんとひとり暮らしていたのは この不愛想な爺ぃ。
     ↓

昭二のお爺ちゃん (藤原釜足)


「孫は、わしからあんたに 
 生きてるのが一番だと、言えというが
 わしにはそうしたことは言えねえ」

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しかし、ひと晩経つと

 

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「少しここさ、居てみねえか
 こう見えても気ごころ知れてくりゃ、結構喋るだ」




この作品を書いたのは 
50代に入ったばかりの 山田太一さん。 

ご自身が 70代半ばになられたとき
この作品を振り返って

「一人で始末をつけようと することには限界がある。
 でも、思いがけない他者によって
 別の道が拓けてくる、というようなこともあったら良いな、と思った」


と述べられています。

そして
「人生は ある年齢になると
 こんな当たり前のことに 気がつかなかったのかと感じたり、
 亡くなった方を振り返り あのときの言葉は別の意味だったのかと
 気づかされることがある。
 だからこそ、人生は味わい深いし いろいろな輝きを感じやすくなった」


現在は85歳になられた 太一さん。

まだまだ、いい作品を書いていただきたいな。