別れの準備 | マリリンの独り言

マリリンの独り言

ほんの些細な日常の出来事や、面白エピソード、我が家の動物達の話、ハンドメイド作品の話などを気ままに綴ります。

時々毒吐き。
クズ男やモラ男の話、人間関係についても書いています。

夫婦間だけの呼び名は
『プニ』『プニちゃん』


以前から母と、ゴールデンウィークに買い物に行く約束をしていた。



最初は三月の旦那の誕生日プレゼントとして、礼服を買ってあげたいと言われたのだが、誕生日にお葬式を連想させるものは抵抗があるからと断った。



それでゴールデンウィークにと決めていたのだ。



実家に到着すると、私の礼服も必要だからと、母が昔着ていた服や靴を試着してみた。



しかしデザインが古いし、ワンピースは私には丈が短すぎて膝が出て、礼服としてはみっともない。

靴は小柄な母とサイズが合うわけもなく、シンデレラの姉たちのようにキッツキツで入らなかった。




そこで私の礼服と靴も買うことになった。





はるやまに行って、まずは旦那からカッターシャツや礼服の試着をした。



スーツを試着した姿を見て、旦那のスーツ姿を見たことがない母が


「あ~!ええ男になった♡」


そう言ったあと、旦那が困ったような恥ずかしそうな顔をしていた。



裾のお直しが必要だったが、食事をしている一時間の間に仕上げてくれるとのことで、その日の内に受け取れた。


私も靴を試着して、あまりヒールの高くないものに決めた。


礼服は私のサイズに合うのが二種類しかなく、そのどちらも試着して、何回も母に見せた。



試着室に入っていざ着ようとすると、ファスナーが自分で最後まで上げられないのでドアを開け母に手伝ってもらった。



なんだか首が締め付けられる





店員さんが「それ前後ろ逆です」と言って、私は笑いを堪えられなかった。




改めて気直してみると、前身頃のバストの位置の縦ラインにファスナーがあった。

そしてデザイン的にファスナーも見えない作りになっている。



楽に着られるよう工夫されてるんだなぁと感心した。



しかし試着してファスナーが開いている状態なのに、母は試着室のドアを開けっ放しにするので、その都度旦那が閉めてくれた。




二着を比べてみて、①はワンピースの丈も少し長めで私には良いと思えた。
上着にはリボンが付いている。


②の方はワンピース自体が首元のタックや、ボレロ風になったオシャレなデザインだった。
上着には飾りボタンが付いている。



ワンピースの丈で私は①にしようかと思い、母も賛成してくれたのだが、後々になって上着にリボンが付いているのが気に入らないようで反対し始めた。



私が「お母ちゃんリボン嫌いやな」と言うと

「今はええけど、歳取ってからリボンとか恥ずかしいやろ」

そう母は言う。



その日、私はリボンと総レースのトップスにジャンパースカートを着ていた

(「 ꒪д꒪)「



リボンフリルレースが大好きで、甘ロリゴスロリファッションは卒業したけど、本当なら今でも着たい。


我慢して森ガール系に留めているけれど。




結局上着にリボンが付いていることで①は候補から外れ、選んだのは②の方の礼服だった。

丈は①より少し短めだが、ワンピースのデザインは可愛い。


ブライダルデザイナー桂由美さんのデザインだという。





しかし昨日、桂由美さんが26日に亡くなったとネットニュースで知った。


その人が手掛けた服を買った翌日に、その訃報を知るなんて複雑な心境だ。





旦那の礼服とカッターシャツ、私の礼服と靴を購入して、会計の時に母が大阪人特有の値引き交渉をしようとした。




私は値引き交渉なんて、恥ずかしくてした試しがない。

( ´;゚;∀;゚;)

「八百屋とかじゃないんやから、そんなんやめて」


私が言うと、店員さんは苦笑いしていた。



「言うてみな分からんやろ」

母も引かない。




しかしカッターシャツも一緒に買ったことで千円、それと何だったか忘れたが一万一千円引きもあり、合計一万二千円引きとなった。



「ほら~ちゃんと割引とか色々あるんやから」



値引き交渉なんてしなくても、クーポンや割引などはあるのだから、店の人が困るような交渉はやめてほしいものだ。




そして金額は合計で
十二万円以上となった。




「あ~!これでお母ちゃん安心できるわ。
いざという時に、急に慌てて礼服の準備せんでええやろ?
二十万くらいになると思ってたけど良かったわ」




母は自分が死んだあとのこと、私たちに負担をかけないようにすることを今から考えていたのだ。





私と旦那がこの礼服に身を包んだ時、それは母がいなくなった時のこと·····



別れの準備は心が痛む





そう遠くはないいつか、いつかは分からないけれど必ずやって来るその時。




会う度に弱々しくなって行く母を見ながら、私はそのいつかがまだまだ先であることを願った。