きっと夢はかなう ~乾癬で苦しむ人がいない世界を~

きっと夢はかなう ~乾癬で苦しむ人がいない世界を~

私たちのビジョンは『乾癬で苦しむ人がいない世界』を実現させること。
乾癬という病気を広く一般の人たちに知ってもらい、
乾癬でも暮らしやすい社会をめざし、
たとえ病気でも日々の生活を楽しめるように
乾癬の啓発と患者さんの未来のために活動している団体です。

「今後、病院などで処方してもらうお薬の患者負担が増える...?」というお話を聞いた方もいるのではないでしょうか?今回はこの件について詳しく見ていきたいと思います。

 

 

2023年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針2023)において、「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」ことが盛り込まれました。これを受けて厚生労働省では、社会保障審議会医療保険部会及び中央社会保険医療協議会での議論、答申等を踏まえ、2024年3月27日付けの保険局医療課長通知(保医発0327第11号)にて、2024年10月1日より、長期収載品の処方等又は調剤について選定療養の仕組みを導入することとしました。

 

まずはここに出てくる言葉の説明をしておきます。「長期収載品」とは、すでに特許が切れていることなどにより後発医薬品(ジェネリック医薬品)が発売されている医薬品のことです。こういった医薬品は薬価基準に長期間収載されていることから「長期収載品」とよばれています。「選定療養」とは、「保険外併用療養費制度」の一つで、たとえば、患者希望で個室に入院した場合の差額ベッド代など、保険診療と併用して患者負担で提供される医療にかかる費用です。

 

では、これによって具体的にどのようなことが起こるのかですが、すでに後発医薬品(ジェネリック医薬品)が販売されている先発医薬品(=長期収載品)を使用する場合、後発医薬品の最高価格帯の薬価と先発医薬品の薬価の差額の4分の1が選定療養として患者負担となります。なお、選定療養としての患者負担額には消費税(10%)が加算されます。但し、医療上の必要性から先発医薬品が必要な場合、在庫不足などにより後発医薬品の交付が困難な場合は選定療養の対象外となります。対象となる先発医薬品は1,095品目(対象医薬品リスト参照)あります。なお、後続品(バイオシミラー)が販売されている生物学的製剤は選定療養の対象外となります。

 

実際にどのくらいの患者負担増となるのか、保湿薬のヒルドイドを例にシミュレートしてみます。

医薬品名

薬価(100g)

現行の

患者負担

(3割)

選定療養導入後の患者負担(3割)2)

ヒルドイド

クリーム0.3%

(先発品)

1,850円

1,850 x 0.3

= 555円

813円

ヘパリン

類似物質

クリーム0.3%

(後発品)

320~5601)

560 x 0.3 = 168円

168円

1) 最高価格帯の薬価を参照しますので560円が後発医薬品の参照薬価となります。
2) 選定療養導入後の患者負担額の計算方法は以下のとおりです。

 

このように、ヒルドイド(先発品)100gを処方された場合、選定療養導入後は258円の負担増となり、後発品との負担額の差は645円になります。
 

 

外用薬の場合、塗りやすさや塗り心地など、患者の主観的な使用感は基剤(主成分以外の成分)によって異なる場合があり、それがアドヒアランスに影響を及ぼす場合もあります。したがって、先発品を使うか後発品を使うかは、自分自身の使用感についても主治医の先生とよくお話しした上で決めるのがよいでしょう。
 

突然ですが、「バイオシミラー」って聞いたことはありますか?今回はこの「バイオシミラー」について詳しく見ていきましょう!

 

 

「バイオシミラー」のお話に入る前に、まずは「バイオ医薬品」について整理をしておきます。「バイオ医薬品」とは、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを用いて作られる医薬品のことです。バイオ医薬品には、インスリンなど人間の体に足りない物質を補うはたらきをするものと、私たち乾癬患者が使っている生物学的製剤のような、病気に関係する物質を抑えるはたらきをするものがあります。

 

すべての「バイオ医薬品」は医療用医薬品(処方せんが必要な医薬品)です。また、有効成分がタンパク質でできており、内服することができない(消化されてしまう)ため、ほとんどは注射剤になっています。

 

この「バイオ医薬品」のいわゆる後発品を「バイオシミラー」といいます。

 

 

では、「バイオシミラー」は「ジェネリック医薬品」と同じということなのでしょか?実は「バイオシミラー」と「ジェネリック医薬品」には異なる点がいくつかあります。「ジェネリック医薬品」は、化学合成によって作られた先発医薬品の後発品です。化学合成で作られますので先発医薬品とまったく同じ主成分のものを作ることができます。

 

一方、「バイオシミラー」は、バイオテクノロジーを用いて作られる先行医薬品の後続品です。遺伝子組み換え技術などを使って動物などの細胞の中で作りますので、まったく同じものを作ることができず、「似ているもの」が作られます。「似ているもの」なので「シミラー(類似した)」といいます。なお、化学合成で作られた医薬品は「先発医薬品」、「後発医薬品」といいますが、バイオ医薬品の場合は「先行バイオ医薬品」、「バイオ後続品」といいます。

 

「ジェネリック医薬品」は先発医薬品とまったく同じ主成分のものですので、投与後の体内動態(どのくらいの時間と量で体内に吸収され、どのくらいの時間と量で体内から排出されるか)が同等であること(生物学的同等性)が確かめられれば、患者さんを対象にした臨床試験を行わなくても製造・販売を行うことができます。しかし、「バイオシミラー」は先行バイオ医薬品とまったく同じものではありませんので、製造・販売を行うためには品質と有効性・安全性が先行バイオ医薬品と同等かどうかを評価するために臨床試験を行う必要があります。

 

また、先行バイオ医薬品が複数の適応症を持っている場合、バイオシミラーの臨床試験の対象となった疾患と同じ薬理作用で効果を示す疾患については、その疾患を対象とした臨床試験を行わなくても適応症を取得することができます(例:レミケードのバイオシミラーの場合、TNFαのはたらきを抑えるにより効果を示す関節リウマチを対象とした臨床試験でレミケード(先行バイオ医薬品)との同等性が示されたため、同じTNFαのはたらきを抑えることによって効果を示す乾癬に対しては臨床試験を行わずに適応症を取得しています)。但し、先行バイオ医薬品が持つ適応症のうち、まだ特許期間などがある適応症の場合は、バイオシミラーはその適応症を取得することができません。

 

バイオシミラーの薬価は原則として先行バイオ医薬品の薬価の70%となっています。患者さんによっては、この薬価の違いが自己負担額に影響しない(バイオシミラーを使用しても自己負担額が減らない)場合もありますが、健康保険が負担する額は少なくなるため、日本の国民医療費の削減にはなります。

 

乾癬に使用するバイオシミラーは、先行バイオ医薬品と同様に、日本皮膚科学会による乾癬分子標的薬使用承認施設でのみ使うことができます。2024年1月現在、乾癬に適応のあるバイオシミラーはインフキキシマブ(先行バイオ医薬品:レミケード)、アダリムマブ(先行バイオ医薬品:ヒュミラ)、ウステキヌマブ(先行バイオ医薬品:ステラーラ※薬価未収載)です。

乾癬と同様に乾癬性関節炎もメンタルヘルスと深く関連しています。この記事では乾癬性関節炎と不安・うつとの関連について考えてみます。

 

 

日本人における乾癬性関節炎の有病率は尋常性乾癬患者さんの14~15%と報告されています[1]。一方、海外では、報告によってばらつきはありますが、尋常性乾癬患者さんの14~30%に乾癬性関節炎があると報告されています[2,3]。

 

乾癬性関節炎患者さんにおいても不安やうつなどは比較的よく見られる精神症状です。実際、乾癬性関節炎患者さんにおける不安の有病率は15~30%、うつの有病率は9~22%という報告があります[4]。

 

また、別の報告では、乾癬性関節炎患者さんにおける不安とうつの有病率はそれぞれ36.6%、22.2%となっており、これは尋常性乾癬患者さんにおける不安、うつの有病率(それぞれ24.4%、9.6%)と比較して有意に高くなっています[5]。

 

乾癬性関節炎とうつとの間には炎症反応が関連していると言われています。うつ病患者さんではIL-6、IL-17、TNFαなどの炎症性サイトカインが過剰に発現しています。精神的なストレスと炎症性の免疫反応には視床下部-下垂体-副腎系の過活動が関係しており、これが自己免疫細胞の活性化による炎症性サイトカインの放出や慢性の炎症の引き金になっているようです[6]。

 

うつ病患者さんにおける視床下部-下垂体-副腎系の過活動は副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを増加させます。この副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンによるシグナル伝達は関節の炎症にも関与していると言われています[6]。

 

うつ症状の程度は痛みの程度と、また、痛みの程度はうつ症状の程度と、弱いながらも相関するといった双方向の関連がある言われており、これは痛みとうつ症状には因果関係があり、炎症の原因を共有していることが示唆されています[7]。

 

乾癬性関節炎患者さんは、尋常性乾癬患者さんとくらべて不安やうつの頻度が高く、また、乾癬性関節炎と不安・うつは一部の生物学的な基盤も共有していることから、こころの健康には特に気を付ける必要があります。こころの問題を防いだり和らげたりするには、炎症を抑えるだけでなく、痛みをうまくコントロールすることも大切です。

 

この記事を書くにあたって参照した文献:

1. 朝比奈昭彦,他.乾癬性関節炎診療ガイドライン2019.日皮会誌2019;129(13):2675-2733

2. Alinaghi F, et al. Prevalence of psoriatic arthritis in patients with psoriasis: A systematic review and meta-analysis of observational and clinical studies. J Am Acad Dermatol. 2019;80(1):251-265

3. Ogdie A, et al. Treatment guidelines in psoriatic arthritis. Rheumatology (Oxford). 20201;59(Suppl 1):i37-i46

4. Kamalaraj N, et al. Systematic review of depression and anxiety in psoriatic arthritis. Int J Rheum Dis. 2019;22(6):967-973

5. McDonough E. et al. Depression and anxiety in psoriatic disease: prevalence and associated factors. J Rheumatol. 2014;41(5):887-896

6. Mathew AJ, et al. Depression in psoriatic arthritis: Dimensional aspects and link with systemic inflammation. Rheumatol Ther. 2020;7:287–300

7. Husted JA, et al. Longitudinal study of the bidirectional association between pain and depressive symptoms in patients with psoriatic arthritis. Arthritis Care Res. 2012;64(5):758-765

一般的に乾癬はメンタルヘルス(こころの健康)と関連していると言われています。では、具体的にはどのように関連しているのでしょうか?乾癬患者さんに比較的よく見られる「うつ」との関連について考えてみましょう。

 

 

一般人口におけるうつ病の有病率は男性で2~3%、女性で5~9%と言われています[1]。乾癬患者さんにおけるうつ病の有病率は、報告によってばらつきはありますが、12~36%となっており[2-4]、一般人口における有病率にくらべてかなり高いようです。日本人においても、臨床的に診断はついていないとしながらも、うつ症状のある乾癬患者さんの割合は27%であったとの報告もあります[5]。

 

うつ病には脳内におけるセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の減少が関与していると考えられていますが、近年、TNFαやIL-17などの炎症性サイトカインや免疫細胞もうつ病に関与していると言われています[6,7]。ご存知のとおり、これらの炎症性サイトカインや免疫細胞は乾癬にも主要な役割を果たしています。

 

実際、これらの炎症性サイトカインをターゲットとする生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者さんではうつ症状も改善していたという報告があります[7,8]。

 

乾癬とうつは、その皮膚症状が人目に触れることや、かゆみや痛みといった身体症状によるストレスなどの心理的因子が関係していることは間違いありませんが、前述のような生物学的な因子も共有していることがわかってきました。さらに、乾癬の症状を改善することがうつなどの精神症状も改善する可能性もあります。

 

このように、乾癬患者さんは健常人と比較してうつになりやすい傾向があることがわかってきましたし、逆にうつによる精神的なストレスは乾癬の悪化因子の一つにもなっています。

 

私たち乾癬患者が乾癬とこころの健康について知ることは乾癬と付き合っていく上でとても大切なことだと思います。よく眠れない、何となくやる気が起きない、物事に興味がなくなってきた...こういった症状が何日も続く場合には、一度、主治医の先生に相談してみてください。

 

この記事を書くにあたって参照した文献:

1. 中込和幸.うつ病の概念と疫学.昭和医会誌2003;63(1):3-6

2. Dowlatshahi EA, et al. The prevalence and odds of depressive symptoms and clinical depression in psoriasis patients: a systematic review and meta-analysis. J Invest Dermatol. 2014;134(6):1542-1551

3. Pollo CF, et al. Prevalence and factors associated with depression and anxiety in patients with psoriasis. J Clin Nurs. 2021;30(3-4):572-580

4. Kromer C, et al. Screening for depression in psoriasis patients during a dermatological consultation: A first step towards treatment. J Dtsch Dermatol Ges. 2021;19(10):1451-1461

5. Ohata C, et al. Difference in health‐related quality of life between anxiety and depressive symptoms in Japanese patients with plaque psoriasis: the ProLOGUE study. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022;36(1):e57–e59

6. 北岡志保,古屋敷智之.ストレス・うつにおける炎症反応の役割.ファルマシア2017;53(7):681-685

7. Fabrazzo M, et al. A systematic review on shared biological mechanisms of depression and anxiety in comorbidity with psoriasis, atopic dermatitis, and hidradenitis suppurativa. Eur Psychiatry. 2021;64(1):e71

8. Talamonti M, et al. Secukinumab Improves Patient Perception of Anxiety and Depression in Patients with Moderate to Severe Psoriasis: A Post hoc Analysis of the SUPREME Study. Acta Derm Venereol. 2021;101(3):adv00422

コロナ禍ではありますが、できることをできる範囲でやっていこう!

ということで・・・

今年も東京タワーで乾癬の啓発活動を行います♪

 

 開催日時:10月30日(土) 10:00~18:00 

         10月31日(日) 10:00~16:00

 

>>>今年のメニューはこちら

・乾癬という病気を知ってもらうためのポスター展示

・マンガで伝える『乾癬あるある』

・乾癬の啓発の動画上映

・パネルを見てくれた方へのプレゼント配布

・感染対策を施した“患者さん同士のトークブース”の設置

 

東京タワー フットタウン2Fの通路には、東京タワーを訪れたお客さんたちが通り過ぎていきます。

その途中で足を止めてパネルを見てくださる方もいます。

 

「乾癬? 初めて知りました」と言ってくださる方もいます。

偶然に?!「私も乾癬なんです」という方も毎年いるんです!!

「私の知り合いがこの病気なんです…」 という方も。

今年も乾癬という病気の事をひとりでも多くの方に知っていただけたらいいな♪

 

毎年、この場所でいろんな出会いや奇跡が起こります。

偶然の出会いから治療につながった方、

ここでの出会いがきっかけで患者会とつながった方、

ちゃんと治療してみよう、

もう一度病院へ行ってみようと思ってくれた方、

ここがきっかけで寛解を手に入れたという方もいました。

 

乾癬の啓発は

一般の人に乾癬という病気を知ってもらうことだけでなく

乾癬の患者さんの“希望”につながるような啓発も大切だと思っています。

 

乾癬の患者さんが安心して暮らせるような社会を目指して♪

そしていつの日か…

東京タワーが“乾癬の聖地”になったらいいな♪

という願いを込めて,゜.:。+゜

インスパイアは今年も東京タワーに集まります。

<2020年:東京タワーにて>