~Atomic Energy・原子力は必要か否か~ | 自炊・電子書籍化応援ブログ

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 1979年3月28日、アメリカ東部にあるペンシルバニア州スリーマイル島の原発で冷却水漏れによる原子炉の空焚きおよび燃料の溶融・崩壊という、あわや大惨事になりかねない事故が起こった。

…それから7年後の1986年4月26日、今度は旧ソビエト連邦のウクライナ共和国チェルノブイリで原子炉の暴走が起こり爆発、この事故による放射能汚染の規模は広島型原爆のおよそ600倍にもおよび、900万人以上が被災、40万人が被ばくした上80万人近い事故処理作業員が放射線障害に苦しむ結果となった。

日本でも1974年9月1日、青森県の太平洋上で‘原子力船・むつ’が航行試験中に放射線漏れを起こした。幸い被曝者や死者は出なかったものの、その後母港への帰港の際、地元住民の猛反対をうけ帰港できず16年もの間、日本の各港を彷徨しながら改修作業を続け、最終的には新設された‘むつ市・関根浜港’で原子炉を撤去されることとなる(これ以降日本での原子力船の建造はなされていない)。

また1999年9月30日には東海村JCOの核燃料加工施設内でウランが臨界に達し核分裂反応が起こり、その際に発生した中性子線を浴びた作業員が2名死亡、1名が重症、667名もの職員・関係者が被曝者となった。

近年では東北大震災での福島原発における広範囲に渡った被爆事故が記憶に生々しい(事故処理は現在も遅々として進んでいない)。

核エネルギーが理論上から現実世界で使用(原子爆弾)されてから70年………今日私たち人間は兵器として登場した原子力をエネルギー供給の手段として利用しているが、はたして原子力は肯定できるのかそれとも否定し新たなエネルギー開発を模索するべきなのか?、世論も各社会・各国家も今だその方向性を見出してはいない。

ところで原子力エネルギーの利用にはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか……下記に書き出してみた。

【メリット・利点】
・安定した電力供給が可能
・発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出がない
・使用燃料が極端に少なくて済む
・化石化燃料(石油)の依存度が少なくて済む
・経済性が高い
・再処理による国産エネルギーが手に入る
・世界に対し技術力の高さを証明できる
・酸素を必要としない


【デメリット・欠点】
・大事故が起こった際、周辺地域はおろか地球規模で被害が出る
・放射性物質(核廃棄物)という有毒物質を生み出す
・放射性廃棄物の処理および処理場の確定が困難
・常に軍事転用という危機をはらんでいる
・起動・停止に長時間を要する
・火力発電に比べ建設コストが大変高い
・テロの標的になる可能性大
・現時点における放射性廃棄物の無害化は不可能
・地質学的観点から建設場所の選定が困難


安定した電力供給や地球温暖化に対するクリーンなイメージ、そして何といっても経済性が非常に高いという点は評価できるが、問題は一朝事ある時は目も当てられないほどの大惨事を覚悟しなければならないという大問題を抱えている。

そして何と言っても一番の難題は使用済みの核燃料(核廃棄物)を無害にできないということである。現在私たちが持つ科学力では廃棄物の無害化は不可能であり、また自然に無害化するまでの時間的経過は人類の時間的観念からすれば、ほとんど半永久といってよいほどの年月がかかる。

……それゆえ、核廃棄物を厳重管理できる場所や施設を建設できたとしても(現にヨーロッパ各地やアメリカにはあるが…)、それはただ単に管理しているだけに過ぎず何か事が起これば、いつ何時放射能汚染が地球規模で広がるか分からないという恐怖がつきまとっている。

日本では福島県での原子力発電所損壊事故による放射能問題が今だ解決の糸口さえつかめないでいる、また管理・運営を行っている東京電力のずさんな事後処理対応は今もなお続いている。日本における原発(核エネルギー)利用に対する有無は、福島事故からわずか4年で継続に傾きつつあるが、それは果たして正しい選択なのか否か?…………。

エネルギー問題は日本にとっては深刻な問題であり、そういった意味では原子力は大変効率よく重宝なモノであることは認めるが、目先の利に目が眩み、最終的には日本国土とそこに暮す市民が塗炭の苦しみを味わうことにならないかどうか、政治家も官僚も、そして研究者達も十分な精査を行って欲しいと思う。

日本が…諸外国が……‘Atomic Energy’について地球規模で真剣に討議する前に、人類全体が墓穴に入らねばならないなどと言うことにならないよう願うばかりである。