新海氏は２００２年に発表した「ほしのこえ」で監督・脚本・演出・美術・編集をほとんど１人でこなし２５分ものフルデジタルアニメーションを完成させた凄い人です。
……さすが元ゲーム制作会社（日本ファルコム）でゲームのオープニング映像を手がけていただけあり、ほとんど１人で制作したにも関わらず凄まじいクオリティーでした（この作品は様々な賞に輝いた
）。彼は「彼女と彼女の猫」という５分程度の自主製作アニメで注目を浴び「ほしのこえ」でその才能と技量を世に知らしめました。その後は２００４年に初の長編アニメ「雲のむこう、約束の場所」を、２００７年には「秒速５センチメートル」、２０１１年には「星を追う子ども」、そして昨年２０１３年、「言の葉の庭」を発表しました。
特に今回紹介している「言の葉の庭」では長編映画ではない４６分という短い時間の中でそのことを見事に描き本当に感動しました。
【言の葉の庭】概要
靴を作る職人を目指す高校１年生の主人公：秋月孝雄は、雨の日に限って通学途中の公園で、授業・１限目をサボり公園内にあるテラスで靴のデザインを考案するのが常でしたそんなある雨の日、いつものテラスに先客がいました。千客は仕事を欠勤し朝からビールを飲むＯＬ女性、しかし孝雄はその女性を見知っているように思い声をかけるのですが…しかし彼女は孝雄を知らないと言い、ただ不思議なことに万葉集の短歌・「雷神（なるかみ）の 少し響みてさし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」と言う言葉を残しその場を去ります
…その後、雨の日のテラスではいつも孝雄と彼女が出会うこととなり二人は少しずつ心を通わせていくのでした。
彼女は高３の一部の学生に逆恨みをされた上に、あらぬ誹謗中傷を流されたことで登校拒否教員となっていたのでした。
やがて彼女は辞職届けを出すために高校へと出向いてきます。
多くの心ある学生達は彼女に味方していましたが、学校やその他の教員達は最後まで彼女の力になろうとはしませんでした。
……ただ彼女を古典教師だと知らずに心を通わしていた孝雄は、この理不尽な成り行きに誹謗中傷を流布した高３に喧嘩を吹っかけます。多勢に無勢の孝雄は先輩たちにコテンパンにされますが彼はこの時、自分が雪野百香里に恋心を抱いていることに気付くのです。
……それからしばらくしたある晴れた夏の日、孝雄はあの公園で再び雪野百香里に出会います。孝雄は雪野と初めて出会った時にかけられた短歌の返し歌・「雷神（なるかみ）の 少し響みて降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」を読みます。……二人の間に微妙な距離感と思いが交差するさ中、突然の雷雨が二人を襲います。
雪野は自分のマンションで孝雄を雨宿りさせるのですが、そこで孝雄は雪野に好きだと言うことを告げます。しかし雪野は言葉を濁すばかり……そんな彼女に苛立つ孝雄は雨の中、雪野の部屋を飛び出していきます。
裸足で後を追う雪野………孝雄の淡い恋に雪野は「あの公園のテラスで君と過ごした時間が私の唯一の救いだった」と答えるのです。
……やがて雪野百香里は故郷へと旅立ちます。
……そして秋月孝雄は………「もう少し僕が大人になれたらあの人に会いに行こう」、そう心で呟きながら彼女と過ごしたあの公園に、彼女のために仕立てた靴を静かに置くと、再び靴職人を目指す日々に帰っていくのでした。
…なんかもう、取りとめのない概要になっちゃいましたが、とにもかくにも新海監督のこれまでの作品の中で間違いなく最高であり、またこれまで彼が描いてきたファンタジックでＳＦ的な恋物語ではない、現代の、東京の、日常の、どこかで本当にあったかも知れないようなストーリーがリアルな魅力と感動を与えてくれました。
…全編４６分は長くも短くも感じられ、また視聴後も物語は続いていることを思わずにはいられない作品でもありました。
「言の葉の庭」……僕は視聴後すぐに‘ａｍａｚｏｎ‘でＤＶＤを注文したぐらいに秀逸な作品でした！
……それと最後の最後にこの作品のエンディング曲「ｒａｉｎ」とその曲に乗せて全編の映像をダイジェストしたものがｙｏｕｔｕｂｅにＵＰされていたのでちょっと貼り付けておきます（よかったら一見してみて下さい！）