~閉鎖空間に漂う変なテンション~ | 自炊・電子書籍化応援ブログ

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 僕が以前の以前に勤めていた某男子高校は、新幹線の高架と異常なまでに隣接していました。

特に3階・美術教室は、彫刻や造形作品の制作環境を考慮して教室から並行に伸びた広い作業用ベランダがありました。
しかも、このベランダが4~5mほどの道路を挟んで新幹線の高架とほぼ同じ高さにあったことで、新入生などが初めて美術教室に訪れた時など、新幹線が通る度に、上半身が‘夢の超特急‘に釘付け状態となりいい迷惑でした。

そんなある台風接近の日の出来事………。
午前7時までに暴風雨警報は出されなかった為、僕の勤務する学校は休校とはせず平常通りの時間割で授業は進められました。
(実は近隣の公立校や女子校は台風の通過が昼前後であることを見越し休校にするところが結構あったようです)。

そんな周囲の状況を知ってか知らぬか幾らかの生徒は、「なんでうちだけ台風来てんのに授業あるんや!」って騒いでましたが、そこはそこ!さすが大阪でも屈指のワルガキ共が集っている学校だけあって生活指導を中心に猛者揃いの先生方が「なんやてぇーー!!」と一喝するとたちまちシィ~~~ン………

…そしてガンガン雨が降り、ゴーゴー風が吹き荒れる中、授業は滞りなく進められ3・4限目の僕の担当授業:美術が開始された時には校舎が震えるほどの猛烈な雨と風が外の景色に映し出されていました。
生徒達はみな一様に不安げな様相で美術の課題に取り組んでいたようでしたが、その時1人の生徒がベランダと教室を仕切る全面ガラスのアルミ性引き戸越しに新幹線が停車しているのに気付きました。

「先生っ!、新幹線が止まってます!!」……その新幹線はまるで作業用ベランダが駅のプラットホームに見えるかのように都合良く納まり停車していたのです………それはもう見事なまでの納まりの良さで…。

やがて教室中の生徒達が気付き、新幹線に目をやるようになりました。すると新幹線の中で退屈そうにしていた乗客達も大量に注がれる目線に気付き、窓側の席だけでなく反対側の席の乗客までもが3階・美術教室めがけて視線を送りはじめたのです。
…しばらくして生徒の一人が乗客に向かって手を振ると乗客もそれに応えるように手を振り返してきました。

‘手を振る‘…この単純にして心が和む行為は生徒達に伝染していき、僕も「まっ!たまにはいいかぁ~!!」みたいな感じで、生徒と一緒になって手を振りました。
すると新幹線の乗客達も一斉に手を振り始め、不思議な閉鎖空間同士での連帯感、得も知れぬ高揚、変なテンションがそこに生まれたのです!!。

そんな変なテンションの中、落ち着き始めた雨・風に対し新幹線が静かに動きだしました。すると高揚を伴うこの変なテンションに最も毒された生徒の1人が敬礼をしたのです。
すると、どうでしょう!?老乗客が背筋をピンと伸ばし、生徒の敬礼に返礼の敬礼で応えているではないですか!。
手を振り、敬礼を交わす!……そこには間違いなく{閉鎖空間に漂う変なテンション}が存在していたのです。

……新幹線は去り、その後の僕たちは何かとても大事な使命を全うしたかのような満足感に浸っていました。
(完全に授業そっちのけ…………はははっ
(^▽^;)/