里山生態系の頂点に立つコウノトリ、国内の生息数増加…
福井県が「野生復帰」会議を終了
福井県が2011年から取り組んできたコウノトリ(国特別天然記念物)の野生復帰に向けた取り組みが今月、事業の中核を担っていた会議を終了し、節目を迎えた。
12年間にわたり放鳥や餌場となる里山の自然環境の保全活動を行った結果、飛来や巣立ちの数が年々増加したことから、県は「目的は一定程度、達成された」と総括している。
(佐藤祐介)
県は8日、環境省や市民団体、学識経験者らとつくる「コウノトリ定着推進会議」を開き、2023年に飛来したコウノトリが計87羽、巣立った幼鳥は3市で計13羽にのぼったことを報告。
県は会議を今回で最後とし、24年度以降は、専門家などを交えた情報交換の場を設けるとした。
県内では1964年5月、小浜市国富地区で野生ペアから国内最後となるヒナが誕生するなど、かつては主要な営巣地の一つとなっていた。
しかしその後、狩猟や農薬のために71年に国内の野生のコウノトリは絶滅。
兵庫県で人工繁殖と放鳥が進められてきた。
県内でも野生のコウノトリを復活させようと2011年に設置されたのが推進会議だった。
会議はこれまで、コウノトリの飼育や繁殖、放鳥事業のほか、コウノトリがすみやすい自然環境の整備を目指し、大学教授などの有識者から助言を受けてきた。
県は15~18年に計9羽を放鳥。
県内に飛来したコウノトリは11年の5羽から徐々に増加。
19年には30羽、22年には77羽、23年には87羽にのぼった。
産卵は23年は越前、鯖江、小浜3市に加え、初めて若狭町でも確認された。
巣立った幼鳥は、19、20両年は各4羽、21年は7羽、22年は12羽、23年は13羽となるなど、着実に数を増やしてきた。
コウノトリはドジョウなどの魚やオタマジャクシ、カエル、昆虫などを食べる。
里山周辺の生態系の頂点に位置し、自然再生のシンボルとされる。
コウノトリが飛来・営巣するような自然環境を整備しようと、市町は農薬や化学肥料を抑えた安心、安全な農産物栽培を進めてきた。
越前市では、餌となる生物が生息しやすい環境にするため、農家の有志が農薬や化学肥料を使わない農法を採用。
栽培した米を「コウノトリ呼び戻す農法米」としてブランド化し、県内外で売り出している。
県によると、全国でもコウノトリの生息数は増加しており、県は今後も県内への飛来数が増えると予測。
コウノトリは大量に食べる習性があるため、今後は餌となる地域の生物の生息状況を把握し、コウノトリとの関係性を注視する必要があるとみている。
県担当者は「真の野生復帰に向け、引き続き課題を整理していく」としている。
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