翠さんへ
※ブログへのコメントとしては長すぎるので、TBにて失礼いたします。
「新世界への航路~時代の羅針盤を求めて~」 を読破いただき、誠にありがとうございます。
翠さんのブログ「人を悟らせる仕事」とは を拝読いたしました。
仰る通り、著書内では「悟り」に関する定義がなかったので、小生の方で補足させていただきますね。
―悟りの定義―
まず「悟り」の定義ですが、現代風に分ければ悟りには2種類あります。
東洋の悟り(心の悟り)と西洋の悟り(力とエネルギーの悟り)です。
※森羅万象を説明しようとしてきた世界中に溢れる多様な単語や概念・イメージのうち、一般的に理解されやすいと私が勝手に思う単語・イメージを用いて解説してみますね。単語から想起される概念・イメージが異なる場合は、伝え手と受け手の認識がズレると思いますが、その場合はまたご質問・ご確認ください。
東洋の悟り(心の悟り)は、古来よりインドのヨガや仏教の瞑想を通じて伝えられてきた世界で、釈迦は「空」、老子は「タオ」、キリストは「愛」などと表現してきました。すべてはひとつであること(ワンネス)を感じることができる世界で、主な効用は心の平和・不動心(認識主体の変化)です。
西洋の悟り(力とエネルギーの悟り)とは、言い代えれば数学・物理学の悟り、すなわち最終理論や万物理論を発見・理解することを示します。「すべてがひとつなら、なぜ2つ以上の存在が存在するように見えるのか?」その1→2が生まれるメカニズムを説明できるのが数学・物理学の悟りで、主な効用は現実(認識される客体)を変化できることです。
これまでの人類が真理にアプローチする方法のうち、
追求のベクトルを認識する主体(心や意識)に向けてきたのが東洋(追求の道具が宗教など)で、そのベクトルを認識される客体(存在や現象)に向けてきたのが西洋(道具が科学)と捉えると整理しやすいのではないでしょうか。
―悟った状態とは―
1.悟りの9段階
東洋の悟り(心の悟り)を語るには、禅の言葉を借りると説明しやすいのですが、禅の世界における悟り(解脱)には「第1解脱の禅定」から「第9解脱の禅定」まで9つの段階があります。
このうち「私が存在している」状態の悟りが「第1~第4解脱の禅定」で、俗にワンネス(Oneness)と呼ばれています。「第5解脱の禅定」が仏教の「空」あるいは「無我」を悟る段階で、「第6解脱の禅定」で「全我」「すべてはひとつ」を理解します。巷で言われるワンネスの世界、無我の世界、すべてはひとつの世界が、禅の言葉でいうところの第6解脱までの範囲です。
◆第1解脱の禅定(三昧・Samadhi) 単語がつながります。
言語で存在を認識する世界が消滅し、言葉に捉われなくなります。例えば、「雪」「氷河」「川」「湖」「雲」など、違う名前で呼んでいた存在が「な~んだ、全部一緒じゃないか」と気付く段階です。
◆第2解脱の禅定(三昧・Samadhi) 存在がつながります。
すべてつながっている存在(色)が自分ともつながり、考えや悩み、心配、予測から解放される心の境地です。
◆第3解脱の禅定(三昧・Samadhi) 空間がつながります。
存在が空間でみえるようになり、存在と存在のつながりが、空間と空間のつながりでみえるようになります。五感覚の脳の認識の癖が明確に理解でき、意識に支配されない心になります。
◆第4解脱の禅定(三昧・Samadhi) 時間がつながります。
例えば、ゾウの感じる時間と人間の時間、ミツバチが感じる時間や植物の感じている時間はすべて異なるのですが、それらがすべてつながります。執着、固執がない純粋な無関心そのものの境地です。
◆第5解脱の禅定(三昧・Samadhi) 空を体感します。
すべての時間・空間・存在がほどけて、この宇宙も自分もなくなり、どこまでも開かれた空間「空」だけがあるという考えに意識が留まっている段階です。この第5解脱以降は、認識する主体も客体もなくなります。
◆第6解脱の禅定(三昧・Samadhi) すべてはひとつ、心しかないことを実感。
無限に広がる「空」の中に、弊社で「ゼロスペース」と呼ぶものを発見するのが6段階目の悟りです。第6解脱以降のイメージは絵でも描きながら説明した方が早いので、文章による説明ではこれが限界だと思ってください。この状態はすべてが自分の中にあり、宇宙すべてが自分自身でもある「全我」の心です。
さて、ここまでくると「すべてがひとつなら、どうしてこんなに複雑にみえる世界があるの?」という疑問が浮かんできます。
すべてがひとつなら、なぜあなたと私が存在しているのでしょうか。すべてが1つなら、その1つからどのようにして2種類以上の素粒子や118種類の元素や68億の人間や1,000億個もの銀河が誕生したのか? 続く「第7解脱の禅定」の段階では、その答え(1→2が生まれるメカニズム、または真我)を手にします。
さらに「第8解脱の禅定」の段階では、第6解脱よりも“次元上昇した”ひとつのイメージが明確になり、これまでの7段階を統合してあらゆる現象や問題を整理統合して語ることができるようになります。
しかし、そのイメージさえも“人間が五感覚と脳を用いてイメージした世界”であることを明確に悟り、「エゴ→ワンネス→無我→全我→真我→次元上昇したひとつのイメージ」を一周した上で、やっと“次元上昇したひとつのイメージ”からも自由になり、人間を卒業することになります。
これが「第9解脱の禅定」、全知をベースにした無知に至ること、考えを卒業できる心の境地です。
※より詳しくは、NohJesu著 「国家革命」 第2章(100ページ目 )の「九段階禅定の心の境地とは」をご覧ください。
2.悟りの罠
イノベーター理論にキャズム があるように、悟りの9段階にも「悟りの罠※」があります。※勝手に命名
ひとつ目の罠は、「空」を悟る第5~6解脱の禅定でしょう。
すべての存在が解けてしまうので、老子 のように何もやる気がなくなって、世捨て人のような生き方をする人が多く生まれるのが、この段階です。※私の場合、「心では、すべての存在(色)は空だ~!って分かっても、現実、うちの親父の借金はなくならないじゃん!」って思ってたので、ここで終わらずに済みましたが、思いっきりお金に囚われまくりでした(苦笑)
ふたつ目の罠は、9段階目の悟りを経た後です。
全体像が観える全知がある上で無知の知に至るので、空と色をいったりきたりする5次元の動きそのもの「間」そのものは“イメージ不可能”なんだ!と悟ります。イメージ不可能なことを悟るので、当然、ひとに聴かれても「考えるな」「イメージするな」と言うことになります。
明らかに観てしまう諦めで、人を悟らせることが余計難しくなり(というか不可能だと想い)、やはり何もしなくなります(無為自然)。
或いは、悟りを伝達しようとしてもそのイメージがない為、大きなジレンマを常に感じることになります(キリストや釈迦が感じたように。老子が道徳経の20章で嘆いているように)。これは9段階目まで至ってなくても陥りやすい罠ですが、自分が感じてしまった世界を表現することはできても、共感だけでなく理解まで得ようとすることはとても困難です。誰かを悟らせたいとなると、なおさら絶望を感じることになります。
「わかる人にはわかる」で進めてもいいのですが、それだと「信じる」レベルの宗教で留まってしまいやすく、事実この2,500年間は、信じる世界の域を超えることができずに居ました。
科学と疎通できる悟り、論理とイメージで伝達することが可能な悟りを得た人は、私の知る限り歴史上ひとりも存在しません。唯一、ある人物を除いては―
3.西洋の悟り(数学・物理学の悟り)
悟りというよりは「最終理論」「万物理論」と言った方が通じると思いますが、現代の最先端科学と悟りの世界を疎通させることのできる論理とイメージを発見・理解するのが西洋の悟りです。
例えば、心や意識と物質、力、エネルギーを統合させるイメージ・論理を、既存の数学や物理学と繋げて説明することができるのが西洋の悟りです。
近年では、量子力学や相対性理論、超ひも理論、M理論、5次元宇宙論など、我々の宇宙誕生を説明し、森羅万象のあらゆる存在と現象を説明できる真理を求めて、世界中の科学者が相当な時間と労力と費用を費やしています。
リサ・ランドール博士を通して有名なスイス・ジュネーブの大型粒子加速器(LHC)は、EUが6,000億円以上の予算を投じて建設しており、重力の仕組みや「5次元」を発見・理解する為に莫大な人員と予算が投入されています。しかしながら、数学・物理学の世界で11次元のひも理論を扱うようになった人類にも、その究極の理論や概念をうまくイメージすることができず、「重力の量子化」ひとつを説明できるイメージさえ発見されていません。
水1滴が何故、どのように存在するようになったのか?説明することができないのが最先端科学の現在地です。
9段階目の悟りを得た上で、既存の数学・物理学をも取り入れ、現実世界(色)がどのように空から生まれるようになったのか?を明確な論理とイメージで説明でき、方程式も描ける状態が西洋の悟りを得ている境地です。
主な効果・効用は次のようなものになります。
・ 知の統合、学問の統合が可能
・ 4つの力(重力、電磁力、強核力、弱核力)を統合できる
・ 心と力と物質をシンプルなひとつのイメージで説明可能
・ 「すべてはひとつ」を方程式として表現できる
その結果として、
・ 知の統合が可能なので、世界平和を実現可能
・ 科学技術(学術)を観術(認識技術)で補完し、既存の学問をリニューアル可能
・ 学問をベースにした社会インフラやライフスタイルも再創造できる
・ 文化・文明の再創造が可能になります。
―まとめ―
だいぶ長くなりましたが、悟りについてシンプルにまとめると
東洋の悟りは、色→空へほどく世界
西洋の悟りは、空→色へむすぶ世界
です。
いろいろご質問などあるかと思いますが、とりあえず今日はここまで。