ハラウォン家の主、マッドは自宅から歩いて5分程の古い納屋の整理をしていた。
最近は母屋を離れてカズが一人で住む為に手入れをしており、決して満足のいく物ではないが姉とまだ幼い弟妹の3人が暮らすのに申し分は無かった…。
『親父ビックリマーク戻ったぞビックリマーク
声に応え作業を中断して振り返ったマッドは優しい笑顔を見せた。
『カズビックリマークその可愛らしい同行者達を早く紹介してくれんのか?』
慌ててレイラ達を紹介しようとするが、フッと思い出した。
『俺が街に居た頃に会っているだろ?歳で忘れっぽくなったか親父?』
満足そうな笑い声を上げたマッドは改めて自己紹介をする。
『ハッハッハッ音符そうだったな音符だが名乗った事は無かったな…レイラ、今まで通り【おじさん】でも構わんが一応…マッドだ音符よろしくな音符
チビ達と荷物を降ろすとマッドが言う。
『こっちはチビ達と片付けておくから、お前達は長様への挨拶がてらトラックを返しに行ってこい音符それから…フェイトに早く戻って晩飯にしてくれるように云っといてくれ。』
歩けば15分ぐらいの距離をトラックで移動するとピローの生家…ガーランド家に到着した。
レイラを玄関前で降ろすと車庫へトラックを入れ、揃って家の中へと入って行った。
『だから…婦人部としては避難だけでも…』
『長様、カズですビックリマーク今、戻りました。』
『ん…?フェイト少し待ってくれ…カズビックリマーク戻ったのか音符奥へ来てくれんか音符
『エドガービックリマークちゃんと聴いて…』
『ちょっと待ってくれフェイトビックリマーク
カズの母にしてマッドの愛妻フェイトは村の婦人部代表として長たるエドガーに嘆願に来ていた。
『長様、戻りました…この娘がレイラです。』
『は、初めましてレイラ…です…カズさんとピローさんには大変親切にして頂き…』
『あぁ…堅苦しい挨拶は良いよ音符うむ…流石に倅とカズが夢中になる訳だな音符
『お、長様ビックリマーク
レイラは頬を染めて俯き、カズは素っ頓狂な声を挙げた。
『エドガー…』
『あぁ…フェイト…その件は…』
泳いだ目でカズに視線を送る。
『お袋、親父が腹減ったって言ってたぞ?それと…飯でも食いながら親父に言っとけば後で親父が話しに来てくれるよ…一応は相談役だろ?』
『…後でマッドに来て貰うから…ちゃんと話しておいてよ…良いわね?エドガー?』
フェイトはカズとレイラを連れ渋々と帰路に就いた。
民衆達のざわめく声の中で2人の男は討論以下で口喧嘩以上の言い争いを展開させる…端っから勝負は見えていたが…。
『な、何だとビックリマークペテン師だと!?この俺を愚弄するつもりか!!
『違うというのか?ならば何故ここに居る?仲間がオデッサで戦っている今、お前達は何をやっている?連邦軍軍人であるお前達が!?
『な…我々は軍人なぞでは…』
『なら何故ジオンの数を知っている?しかも何故嘘を吐く?』
カズは一呼吸置くと民衆達を見渡して続けた。
『この街のみんなは知ってるだろ?俺はオデッサに最も近い村から来た、ジオンの降下部隊はMSが裕に5~6機は入る大気圏突入カプセルが見えただけで20~30は落ちて来てたんだぞビックリマークそれが少数だと思うのか!?その大軍を少数だと云うお前達はドコの誰なんだ?この辺りの者なら街の誰かが知っている筈だろ?誰か知っているのか?』
カズの言葉に民衆達は動揺を隠せなくなっていた。
『だ、黙れビックリマークき…貴様…な、何を言うか…み、民衆を動揺させて暴動でも起こすつもりか!!だ、誰か早くこの反逆者を逮捕しろ!!
『まだ続けたいのかビックリマークこのペテン師が!!自由の国で自由意志を口にして何故逮捕されるんだ?民衆を煽動し戦場へ連れて行ってどうするつもりなんだ?仲間達が戦っている今、連邦軍人たるお前達は民衆を戦場へ送ろうとしている…何がしたいんだビックリマーク
再び民衆を見渡す…。
『みんなもよく聞けビックリマークこの戦争は無意味だビックリマーク独裁政権を狙うザビ家と権力を手放したくない連邦政府の単なる権力争いなんだ!!しかもそんな連邦の軍人が連邦市民を戦場へ連れて行こうとしている…職業軍人ではない市民には戦わない勇気も必要だろ?みんなもよく考えてみろビックリマーク大事な家族を守る為に何が必要なのかをビックリマークだからレイラビックリマークお前を村へ連れて帰るんだよ!!
そう言い終えるとカズはレイラを抱き締め、レイラは大人しく頷いてカズに従った。
壇上の男は狼狽しつつもカズを捕らえる指示を出すが民衆達がそれぞれに帰路に就きカズ達を見失ってしまった。
『じゃあね…元気で頑張りなよ…』
『オバさん…』
『戦争が終わって帰りたくなったら…いつでも帰っておいで…』
『はい…いろいろと有り難う御座いました…』
レイラ達を連れて村へ向かいトラックを走らせた。
振り返ったカズの顔に安堵の息を漏らし口を開く。
『カズさん…びっくりしたよ…』
『すまない…そんな事よりレイラを探してるんだ…見なかったか?』
レイラ達を一時的に村へ疎開させるつもりだと聞き優しき隣人は…。
『そうだね…その方が良いよビックリマークレイラちゃんなら広場に居る筈だよ…行っといで、アタシはチビ達と荷造りしてるよ…
『有り難う…すまんなオバさん…』
感謝しつつ広場へ向けて駆け出す事とした。
広場では多くの人々が集まっており箱を積んだ壇上から一人の男が声高に話しをしていた。
『…であるからして我々、連邦市民はジオンに屈してはいかんのだビックリマーク諸君ビックリマーク今現在オデッサはジオン軍の襲撃を受けているが、私はこの目でオデッサにジオン軍が降下してくるのを見た…大した数ではなく我が軍は間違い無く勝利するだろう…が我々が自警団を結成し、街に駐留している軍の部隊と警察隊に協力すれば万が一にオデッサが陥落した場合でも十分にこの街で援軍が到着するまで…』
男の話しを聞く聴衆の中にレイラの姿を発見したカズは不意に声を出した。
『レイラビックリマーク
カズの声に男の話しは遮断され聴衆の視線は声の主と呼ばれた少女に向けられた。
『カズさん…!?
民衆達の中を掻き分け歩み寄ったカズはレイラの手を握りしめた。
『さぁ行くぞレイラ音符
少し慌てた感じのレイラが口を開く。
『ど…どうしてここに…?今日は買い出しの日じゃあ…?い、行くって…ドコに?』
『疎開だ…戦争が終わるまで村に疎開するんだよ音符
『そ、疎開?嫌ビックリマークレイラは行かないビックリマーク弟と妹だけ連れて行って下さいビックリマークレイラはここで街の人達と…』
『ダメだビックリマークバカな事を云うな!!
カズの手を振り払おうとレイラは抵抗し暴れ出した。
『レイラビックリマーク云うことを聞いてくれビックリマーク手荒な真似をして無理矢理連れて行きたくないんだ…』
『嫌ビックリマーク離してビックリマークレイラは街の人達と一緒に戦うビックリマーク
壇上の男が2人の遣り取りに割って入った。
『君、止めたまえビックリマーク彼女は嫌がっているじゃあないかビックリマーク彼女の自由意志を尊重すべきだろう…臆病風に吹かれて逃げたいのならば独りで逃げれば良いビックリマーク彼女は我々と共に戦い勇気を示すのだからな!!
『自由意志だと!?黙れビックリマークこのペテン師がぁ!!
カズは眼光鋭く壇上の男を睨み付けた。