集まった村人達の前に立つマッドが少し大きめな声で話し出した。
『忙しい中をわざわざすまんな…今日はオデッサに現れたジオン軍の件で集まって貰った。』
『マッドこれから村はどうなるんだ?』
『アタシらは殺されるのかい?』
口々に不安を声に出す皆を制してマッドは続けた。
『まぁ…先ずは聞いてくれ…長様は取り敢えずジオンが勝つと予測なされたビックリマークその上で何の戦略的価値の無いこの村は単にジオン領となり我々の暮らしはこれまでと変わらないだろうビックリマーク
【おぉ~ビックリマーク
という安堵の声が上がる。
『ただ…万が一にも連邦軍が勝てば宇宙に帰る手立ての無いジオン兵達は野盗となりこの村はもちろん周辺の村々は次々に襲撃されるだろう…』
ざわめく村人達の中からカズが父に問う。
『親父ビックリマーク街は…街はどうなる?』
『あそこはこの辺りで一番大きな街だ…連邦軍の詰め所もある、勝てば一番安全だろうが…負ければ周辺への見せしめの為にも間違い無く攻撃対象となるだろう。』
『親父!!
マッドは息子の視線に無言で頷いてソレを認めた。
『長様ビックリマーク街へ行きたいんですビックリマークトラックをお貸し願いませんか?』
エドガーはマッドに視線を送りマッドが頷くのを見て返事をした。
『街まではお前ならば2時間弱で行けるな?6時間以内に戻るのだぞ?』
『有り難う御座いますビックリマーク
カズはトラックに乗り込み街へと向かった。
直線距離で100kmの街でカズとピローがハイスクール時代を過ごした街だが森や山を迂回する為に実際にはその倍以上は走る…加えて迂回路であり曲がりくねった山道はスピードが出せずに馴れない者ならば3時間以上は要する…カズは週に一度村で必要な物資を買い付けに行く役目を担っており2時間弱で街まで行ける…。
街に着いたカズは直ぐにレイラの家のドアを叩いた。
『レイラビックリマーク俺だカズだビックリマーク
カズの呼びかけに応えたのはまだ幼い兄妹だった。
『カズ兄ちゃんビックリマーク
『姉ちゃんいないの…』『どこへ行ったんだ?』
『わかんない…』
『兄ちゃん…戦争になるの?』
カズは2人を抱き締めて宥める。
『大丈夫だ…お前たちは何も心配すんな…』
その時…
『誰だい!?子供だけの家で何してんだい?』
玄関口に視線を送ると…普段から子供だけの家を気に掛けてくれる隣家の婦人がフライパンを片手に立っていた。
宇宙歴0079、3、4…
ルウムの激戦から一ヶ月半が過ぎた…
地球連邦軍資源採掘基地オデッサの西60km小さな村…
暖かい家族…
気心知れた隣人達…
辛くも愉しい畑仕事…
決して楽ではなかったが村全体が一つファミリーだった……


『なぁカズ兄…本当にそのレイラって娘は可愛いのかよ?』
村から出た事の無いアベルがカズに訊ねると興味なさ気にカインが答える。
『カズだけじゃなくピロー様もおっしゃるんだから可愛いに決まってんだろバカアベルビックリマーク
カインはピローとカズの2つ年下でピローの子分気取りな若者である、故にピローと対等に話すカズを快く思っていない節がありちょくちょく喰いかかかる…。
アベルは更に1つ下で生真面目なピローよりもカズを兄の様に慕う…。
ともあれ若者の少ない村では貴重な同世代で行動を共にしていた。
『カイン、バカは言い過ぎだ…それからそうだな…レイラは確かに可愛い…ん?何だ…?あ、あれを見ろ!?
無数の光が遥か東…オデッサへと落ちて行くのが見えたビックリマーク
『何なんだ?隕石…かぁ?』
『カズ兄…あれは…?』
『ジ、ジオンだ…ジオンがオデッサに攻めて来たんだ!!カイン、アベル…村のみんなに知らせるんだビックリマーク
『お前はどうすんだよカズ?』
『俺は長様にお知らせする…』
カインとアベルは了承し大声でジオン襲来を村中に振れて回りカズは村長【エドガー・ガーランド】の家を目指して走り出した。
『長様ビックリマークジオンが…ジオンが現れました!!
『カズか…カインとアベルの声はここまで聞こえていたよ…』
エドガーは静かに落ち着いた口調で続ける。
『大変な事になったな…悪いがマッドを呼んで来てくれんか…あぁ…それと村の者達にも広場に集まるように触れ回ってくれ…。』
『分かりましたビックリマーク
急ぎ駆け出すカズの後ろ姿を見つつエドガーは思った(立派な若者になったな…)と…。
凡そ1時間程経って広場には村の者達が集まり、正面にはエドガーが立ちその横にはマッドが並び村の緊急集会が始まろうとしていた。
ジオン公国軍中尉シャア・アズナブルがトドメの一撃を加えようとした瞬間だった。
『うおぉぉぉ~隊長~!!
ピローとの対戦に夢中になっていた…否、なり過ぎていたシャアには痛恨の失敗だった…接近してくる敵機に気付いていなかったのだ。
『な、何だと…!?
『よせ!?止めろ!!止めるんだ!!アッ~~シュ!!
逃げ出した筈のアッシュは戦場を駆け抜けトーマを振り切った後に戻ってみればピローが危機に陥っており無我夢中でだった。
赤いザクがバズーカを2発撃つと同時に右肩に固定されたシールドに青いラインの入ったセイバーフィッシュが激突する…2発の弾丸は赤いラインのセイバーフィッシュを素通りしマゼランを大破させ、猛スピードで突っ込んだセイバーフィッシュはザクの半身を押し潰すと共に火球と化す…。
『アッシュビックリマークアッシュ~!!
動けないピローは部下の最後を見守る他無かった…。
咄嗟に身をかわそうとしたが避けきれなかったシャアは…。
『ふ、不覚だった…だが…み、右側からで助かった…シールドの無い左側ならば…今頃私は…』
自力で動けなくなっていたシャアがアポリー、ロベルト両少尉に救難信号を送るとほぼ同時に停戦信号が両軍に発せられた…ジオン公国軍特殊小隊の黒い三連星が連邦軍総旗艦アナンケを撃沈、脱出したレビルを捕獲したのだった。
トーマがピローを回収に来た時には赤いザクは既に回収されていた…こうしてピロー達、第13特殊部隊のルウム戦役は終結を迎えた…大き過ぎる犠牲と共に………。

ルウムから3日後…
ジャブローにて待機中だった第13特殊部隊の面々が敗戦ムードの中でアッシュの仇討ちの為に軍を抜ける相談をしていた処に朗報が入った。
【レビル将軍生還す!!
【ジオンに兵無しビックリマーク
レビルの生還に連邦は一気に息を吹き返した。
【徹底交戦!!】連邦はジオンとの間に幾つかの条約を締結し戦争は更なる激戦へと進化してゆく…。
第13特殊部隊は新たに増員され連邦でも開発される事が決定したMSの実戦テスト部隊とし何処にも属しない独立小隊【フェンリル隊】となった。
MSの搬入はまだまだ先の事なるが…。