ヘーメラーを背にピローのセイバーフィッシュを迎え受けるシャアの赤いザクはマシンガンを斉射するも、対するピローは単機のみで強敵を前にヘーメラーのダメージが気になりバルカンすら使えない…。
『くっ…ヘーメラーを盾に…』
賺さずピローは位置を変えるがシャアはその動きに呼応し、再びヘーメラーを背に位置取る。
『このパイロット…プレッシャーの様なモノを感じる…気のせい…なのか?』
常に一枚上手を往き有利な形で戦いながらもシャアはピローに不安感を抱いた。
敵機が単独になった事で弾切れを待たずに迎え撃ったシャアだったが当のピローが墜とせないばかりか先程とは逆にピローの神業とも思える精密操縦にシャアは焦りすら禁じ得ない…。
『えぇい…小癪なビックリマーク
焦りから生じる僅かな隙を見逃す程ピローは甘くなくザクへの反撃すら行う。
『今だ!!
バルカンの斉射に因る反撃ではあるが赤い彗星には通用せず容易に回避されるが、心理的には多少のダメージを与えた。
『いつの間にかマゼランから離された…だと!?えぇい忌々しい…ならば…』
シャアはマゼランを背に戦う事を諦めた。
これによりピローは赤いザクと1対1の正面勝負を余儀無くされた。
バルカンに因る威嚇から回避ルートを想定し更にバルカン…の予定がマシンガンを掃射される、回避するのに敢えて接近するとヒートホークを手に待ち構えるザクにミサイルを撃つ…これを避けショルダーチャージを繰り出され間一髪の所で回避…すると元の状態に戻っており、今度は攻守を入れ替えて同じ様な攻防が繰り返される。
『ジリ貧だな…』
互いに激戦をこなしており燃料、弾薬共に心細く次なる一手を決めかねていたが、シャアは先程からヒートホークしか使っていなかった。
『奴は弾切れなのか…?』
戸惑いはピローの腕を鈍らせる…がヘマはしない。
敢えて距離を取るがザクはヒートホークを手に後を追うだけだった…ピローの決意が固まる…距離を取り直すべく動いたがそれ自体が罠であり気付いた時にはヘーメラーを背にしていたのはピローだった。
『勝てたな…』
ザクはマシンガンを掃射マゼランを背に自由に回避できないピローは左翼に受けてしまった。
『詰みだよ…連邦のエースパイロット君音符
ザクはどこから出したのかバズーカを構える。
『君はよくやった…がザクにはこんな兵装もあるのだよ…』
シャアはピローに対し哀悼の意を抱きつつ狙いを定めずマゼランごと撃ち墜とす事を考えていた。
3対1の変則マッチは4人の思惑とは別に全く互角の攻防戦となっていた。
これまで複数のザクを墜としてきたピロー達はたった1機のザクにこれほど苦戦するとは思っておらず、シャアにしても如何に新型機とはいえたかだか戦闘機3機に苦戦を強いられるとは思いもしていなかった…。
繰り返される攻防はピローがザクを狙うとシャアはそれをかわしつつ反撃トーマが邪魔をし、アッシュは更にザクを狙う…常に3機のどれかがザクを狙うがシャアは回避と同時に反撃を試み、3機のどれかが友機のカバーをする。
『えぇい…連邦の新型…これだけのパイロットが揃えば十分に脅威となり得るか…』
如何に新型機とはいえMSに比べ余りにも非力な筈の戦闘機で多くの友軍を葬ってきた敵に対しシャア・アズナブルはライバルとして認め、敬意すら抱き始めていた。
(彼等を確実に仕留める…否、撃退する…)そんな手段を…シャアは不意に思い付いた。
『そうか…要は当たらなければ良いのか…』
途端に赤いザクは背を見せて敵艦を目掛けて離脱するフリをしだした。
『隊長ビックリマーク奴が逃げていきます!!
『手強い奴だったぜ音符
『違うぞトーマ、アッシュビックリマーク奴は先にヘーメラーを襲うつもりだ…追うぞ!!
ピローの指示にトーマとアッシュも急いでザクを追う…3機がそれぞれにザクを狙いバルカンを斉射するがシャアは神業とも思える精密な操縦で全ての攻撃を回避してみせる。
『よし、付いて来い…私は弾切れとなってからゆっくりと相手をさせて貰う…』
ザクの速さは常軌を逸しており、多くのザクを翻弄したセイバーフィッシュが全速力でもなかなか追い付けない…痺れを切らしたアッシュが中距離用ミサイルを撃った時にはマゼラン級宇宙戦艦ヘーメラーの近くまで来ており、難無く回避したザクを通り越したミサイルはヘーメラーの着艦口へと直撃した。
『礼を云う…』
シャアが静かにほくそ笑んだ時にはアッシュはパニックを起こしていた。
『お、俺は…味方…味方を撃っちまった…み、味方なのに…俺は…俺は…』
『アッシュビックリマーク気を確かに持てビックリマーク大した被害は出ていないビックリマークお前のせいじゃあない!!
パニック状態のアッシュにピローの声は届いおらず、パニックと極度の緊張状態からアッシュは戦線を逃げ出した。
『トーマ!!アッシュを追えビックリマーク
『しかし…隊長が!?
『構わんビックリマーク追うんだ…アッシュを頼んだぞ?』
アッシュを追いトーマも離脱しピローだけがザクと残った。
紅いのザクを蹴散らしている間にも随時サユリから送られてくる情報に気になったモノがあった。『サユリ、さっきの情報にあった速いヤツの現在地は?』
『はい…少尉達の位置からだと…二時半の方向、上下角+20…距離凡そ7.2の辺りでマゼランを襲撃中です!!
『判った…トーマ、アッシュ聞いてたか?アッシュ直ぐに追うから先に行ってくれ、トーマUターンするぞビックリマーク
【了解ビックリマーク
機体の向きが逆になっていたピローとトーマを残してアッシュはそのまま直進し先行する。
友軍を遥か後方に単独で進んだアッシュは前方でヒートホークを手にマゼランを襲う赤いザクを発見、即座にバルカンの掃射でザクをマゼランから引き剥がす。
『ん…?新型だと!?
余裕を持って回避したザクはアッシュが気付いた時にはマシンガンに持ち替えており返礼とばかりに撃ってきた!!
『うおビックリマークな…なんて正確な射撃だ!!
或いは他の者であれば、その射撃の餌食になっていたかも知れない…が、アッシュはそれをかわし敵機を視認すると…ザクは眼前でヒートホークを振り上げている!!
『ヤバイ!!このタイミングは!!
アッシュは抵抗する術を見いだせず単にスロットルを全開し高速離脱を試みるが、無駄な足掻きなのは明白であり覚悟を固める…突然、ザクは後方へバックステップ?命拾いしたアッシュの耳に聞き慣れた声が聞こえる。
『ヒュー音符危機一髪だったな?エースパイロット音符
『トーマ!?
『そうだ、今のはトーマが撃ったんだが…トーマビックリマーク奴に当たってたらアッシュまで爆発に巻き込まれてたぞビックリマーク
赤いザクがとどめの一撃を加えようした瞬間、トーマは中距離用ミサイルを発射し赤いザクのパイロット【シャア・アズナブル】中尉はこれを察知し難無く避けたのであった。
『え~い…連邦の新型め…3機に増えたのか…』
ジオンのエースパイロットでありこのルウム戦の後に【赤い彗星】として恐れられるシャア・アズナブルとの烈しい戦いの火蓋が切って落とされた…。