ルウム…サイド5が浮かぶこの宙域は地球と宇宙要塞ア・バオア・クーを結ぶ重要な航路であり、この戦争で最も激しい戦闘が行われた…そんなルウムでピロー達は既に1時間以上の戦闘をこなし2度目の補給を受けていた。
戦況は主力艦隊がジオンに押されていた処にコーウェン艦隊が側面から強襲、僅かに挽回はしたがMSの前に再び押されだしていた。
『トーマ、アッシュ次は総旗艦アナンケ周辺のザクを叩くぞ音符
『えっ…遠過ぎますよ!?
『大丈夫だ…なぁサユリ音符
『はい音符サラミスのヘンケン少尉と連絡が取れましたから、向こうでは母艦の代わりをしてくれます音符
『曹長音符あっちの状況ってどうなってんスか?』
『はい…酷いです…たった一機の赤いザクにマゼランが1隻とサラミスが2隻も墜とされたみたいです…』
『よし音符ソイツは俺達がやるぞ音符
『そんな…危険です少尉!?
『大丈夫だサユリ音符隊長がいるからな音符
『そ~ッスよ音符俺達は隊長を完璧にサポートしますよ音符
『でも…』
『フッ…頼もしい限りだな音符が、油断はするなよビックリマーク…サユリ、次の出撃で最後までこの艦には戻らん…が、少佐を含めて5人で祝杯を挙げるぞ!!用意しといてくれよ音符
不安な気持ちを拭いきれないサユリに見送られピロー達は出撃していく…。
サラミスでの補給を受け最後の出撃をしたピローが通算で10機目のザクを墜とすとアッシュから通信が入る。
『隊長ビックリマークレーダーに分かり難い反応が出てるんですが…』
サユリが割って入る。
『確認しましたビックリマーク3機のザクが高速で接近しています…』
『例のザクなのかサユリ?』
『判りません…もうすぐ見える筈ですビックリマーク
『見えましたビックリマーク隊長ビックリマーク赤い奴です!!
『よし…俺が赤い奴を惹き付ける…お前達は残りの奴を頼むビックリマーク
『了解ビックリマークアッシュ例の策でサッサと隊長の援護に回るぞビックリマーク
『あいよ音符
トーマとアッシュの機体が左右に広がった。
一方…
『隊長ビックリマークアレですよビックリマーク
『シュナイダーのオッサンを出玉に取ったってゆ~連邦の新型部隊か!?
『どうします?』
『当然やるぞ音符紅い稲妻の名を両軍に響かせるチャンスだぜ音符
3機のザクと3機のセイバーフィッシュの戦いは簡単にカタが着いた。
『な、何だ!?
『コイツら…ヤベェッスよ隊長!!
『何てスピードだビックリマーク相手してられねぇ…撤退だビックリマーク
逃げるザクをピロー達はそのまま放置しサユリの連絡にあった別のザクを目指していた。
コロニー落下から7時間が過ぎた頃、自室にて失意に沈むピローにも集合がかかった…。
艦隊旗艦タラッサのダイニングルームには艦隊内の尉官以上の仕官達が揃った。
『静粛にビックリマーク今後の作戦について閣下から御話があります。』
アキの前置きに次いでコーウェンが話し出す。
『諸君、先の戦闘は御苦労だった…お陰でジャブローは無事救われた…が被害は甚大であり、我が艦隊も単独でのグラナダ攻略は不可能であろう…因って我が艦隊はグラナダ攻略作戦を中止し、サイド5、ルウムへ向かうビックリマークコレは別ルートを航行中の主力艦隊と合流し戦力を統一する為と共に、先のジャブロー壊滅作戦に失敗したジオンは再びジャブローに落とすべくコロニーを求めサイド5を襲撃する可能性を考慮しコロニーの強奪自体を阻止する為である!!
ざわめく室内でピローは冷静に挙手しアキの指名を受け質問をした。
『ルウムへの到着予定時間と開戦予定時間を確認したいのですが?』
『ルウムまでは凡そ10時間程ですが戦闘開始時間は…ジオンの動き方次第になります。』
その場に居た全ての士官達は先の戦闘で犠牲となった仲間達の無念を晴らすべく決戦の決意を固めていった。
主力艦隊との合流予定時間まで二時間を切り、ミーティングルームにてヤザン隊、ライラ隊と最終調整をしていると警報が鳴り、アキの声が全艦隊に響いた。
『全艦に告ぐ!!主力艦隊がジオン軍との交戦に入りました!!我が艦隊は移動速度を維持したまま第一次戦闘態勢で戦場へ突入しますビックリマークもう一度繰り返…』
慌ただしく各員が自分の持ち場へ向かう中でピローは室内端末から情報を確認する。
『ピロービックリマーク何してやがる?俺達は自機で待機だぞ?』
『解っている…先に行ってくれヤザン…俺はブリッジに寄って行くビックリマーク
同じく慌ただしいブリッジにピローが現れた。
『アンタ何してんの?自機で待機でしょ!!
『提案があるんですビックリマーク
『それは参謀部の仕事ビックリマーク
『構わん…少尉何だね?』
『戦場は丁度、合流予定ポイントです…主力艦隊には戦闘状態を維持しつつ後方へ退いて貰い…我が艦隊がこのまま直進すれば…』
『挟撃か!?アキ少佐ビックリマーク直ぐにレビル艦隊へビックリマーク
ピローの提案は主力艦隊でも採用される事となりいよいよ第13特殊部隊はこの戦争で最初の激戦…ルウム戦役へと突入して行く…。
『閣下…駄目です…コロニーの大気圏突入に因る磁場の乱れから地上とは一切の通信が途絶えてしまっていて…』
コーウェンがアキから状況報告を受けている時だった。
『どけビックリマーク邪魔だビックリマーク道を開けろビックリマーク
突如ピローがブリッジに現れ、通信装置へと直行する。
『どけビックリマーク
装置前の通信士を押し退け装置を弄りだした。
『シドニー聞こえるか?シドニー?こちらはコーウェン艦隊第13特殊部隊所属ピロー・ガーランド少尉ビックリマークシドニービックリマークユリアンビックリマークカリンビックリマークアッテンボロー少佐ビックリマークポプラン中尉ビックリマークフレデリカ大尉ビックリマークシェーンコップ大尉ビックリマークみんな…頼む…逃げて…頼む…』
最後には懇願に近く力無く繰り返す…。
『ピロー…止めなさい…』
『先輩…』
『磁場が乱れて地球へは届かないのよ…』
『地上では…シドニーでは解っていますよね?』
『えぇ…解っている筈よ…』
コーウェンが告げる…。
『だが…避難勧告はなされないだろう…』
『な、何故です?』
『考えたまえ少尉…今から数百万人もの市民を安全且つ円滑に避難させらるか?パニックしか起きないのだ…仕方が無いんだよ…』
ピローは刺すような視線で睨むが、コーウェンは続けた。
『例え知らされたとしてもオーストラリア上空を通過し別のエリアに落ちる…と云う偽の情報だろう…』
『何だと!!
ピローはコーウェンに歩み寄り胸ぐらを掴んだ。
『止めなさいピロービックリマーク
『いや…構わん…少佐、構わんよ…少尉…君の気持ちは分かる…だが仕方が無いのだ…民衆が知らばパニックは必ず興る…そうなれば、誰も助からない上に力の弱い子供、女、年寄り達が押し倒され…踏み潰されてしまう…そのような悲劇だけでも…仕方が無いのだ…堪えてくれ少尉ビックリマーク
『仕方が無い…たからと云ってコレが連邦のやり方なのかビックリマーク
ピローの右拳が振り上がる。
『少尉ビックリマークそれ以上は反逆罪を問います!!
『でも…先輩…』
『シドニーには将軍の御子息もいるのよ…』
ピローはコーウェンを見据えた。
『事実だ…君とは入れ違いでシドニー勤務となった…だが私の倅だという理由で避難はしていない筈だ、またそんな事があってはいかんのだ…故に私もジオンが許せんのだよ少尉…』

この後…人々の想いと葛藤とは別にコロニーはシドニーに直撃…
累計三百万もの市民と二十万の将兵達が一瞬の内に犠牲者となった…。