宴の終焉を迎える頃に連邦軍が現れた知らせを受けたエドガーはマッドを伴い3つある村の入り口の1つ、東ゲートへとやって来た。
『私はこの村の長をさせて貰っているエドガー・ガーランドです…部隊長さんにお目通り願います。』
一台の装甲車から顔を出した一人の男が言う。
『カール・クロエッツェル大尉だ…俺がこの隊を指揮している…』
『隊長殿はマッド・ハラウォンをご存知か?』
『マッド・ハラウォン…連邦兵ならば誰もが知る英雄であろう…それがどうかしたのか?』
『お待ちを…マッドビックリマーク
『お初に…私はマッド・ハラウォン…今はこの村で相談役のような事をさせて貰っている…』
『あ、あのマッド・ハラウォン…』
ざわめく連邦兵を制しクロエッツェル大尉は尋ねる。
『して…用向きは?』
『連邦法に則り連邦市民たるこの村の民を保護して貰いたい。』
『何…保護…?』
『そうだ…あなた方がここに現れたのはオデッサが陥落したのだろう?皆が無理なら子供と年寄りたげでも保護して連れて行ってやって貰えないか?』
『駄目だビックリマーク我々はパリのヨーロッパ師団と合流せねばならん…民間人は足手まといになる』
『バカなビックリマーク市民を守るべく軍が市民を捨てると言うのかビックリマーク
『そうではない…ジオンもこんな小さな村など皆殺しになどせんだろ?後で我々が助けてやるのだ…同じ事だろうが…』
『違うビックリマークそれは間違っているぞビックリマーク体の良い言い訳だビックリマーク要は早く逃げたいのだろうビックリマーク
『な、何を言うかビックリマーク誰かあの男を撃てビックリマーク
『な?何故俺が?俺が何をした?』
『反逆罪だビックリマークお前は連邦軍の貴重な戦力たる我々を不当に陥れようとした…これは利敵行為に当たるビックリマーク早く撃てビックリマーク
『よせ…やめろビックリマーク
ダァーンビックリマーク
凶弾はマッドの胸を貫通し、マッドは口から血を流して力無く崩れ落ちる…
『アナタ…アナタ~ビックリマーク
フェイトは崩れ落ちる亭主を抱きかかえて泣き崩れる…
『何故です?何故主人が?主人が何をしたと言うのです?』
クロエッツェル大尉の冷淡な視線がフェイトを捉える。
『女…その男の女房か?』
『隊長…夫婦で共謀していたのではありませんか音符
『そうだな…夫婦を引き離すのも殺生な話しだな…撃て音符
『よせビックリマークやめろビックリマーク
エドガーが叫ぶが命令権を持たぬ者の声は無視され持つ者の命令が行使された。
ダァーンビックリマーク
『母さんビックリマーク母さ~んビックリマーク
駆けつけたカズは母が凶弾に倒れる姿をその目に焼き付けた…
エドガーの妻エヴァンゼリンとマッドの妻フェイトの2人だけは村に残り男衆の為に肴の用意をしていた…。
『みんな音符エヴァ特製のクッキーが焼けたわよ音符
『フェイト音符こっちにもくれんか音符
結婚前には周囲の村や町にまでファンがいた程に美しくまるで太陽のような笑顔を持つエヴァンゼリンはエドガーとの結婚直前に【一緒に逃げようビックリマーク】と云った主旨の手紙が数十通も届いた逸話まであり、更にその全てに両親を連れて断りに行ったのは既に伝説であった。
エヴァ特製のクッキーは宴の終焉を告げる最後のメニューであり村の男衆はこの後は交代で見張りに立ち、見張り番以外の者は自宅で眠る…筈だった。
『お、長様~ビックリマークひ、東のゲートに連邦軍がビックリマーク
『すぐに向かう…マッド一緒に来てくれビックリマーク
その頃カズは村の西側の河原でレイラから意外な話しを聞いていた。
『カズさんのお父様ってあのマッド・ハラウォンだったんですねビックリマーク
レイラによれば父マッドは若い頃に連邦軍に在籍し、当時中佐だったレビル将軍の直属の部下でエースパイロットだった…現在では見掛けなくなったがコロニー公社を悩ませていた宇宙海賊を相手に幾つもの戦功を立てレビルが僅か半年で中佐から少将に出世したその原動力だった…本人も佐官に昇進する直前に突然自主退役した伝説の英雄…らしい…。
『…士官学校で習ったんです音符カズさん?どうしたんですか?』
『いや…ただ…聞いた事も無かった…』
事実、カズは父をただの農夫…それ以外の何者でもないと思っていた…。『レイラ…そろそろ戻ろう…』
2人が立ち上がり広場へ向かおうとした時に村の男が声を掛けた。
『カズビックリマークこんな所に居たのか…東門に連邦軍が現れて長様とマッドが…お前も早く向かってくれ…』
レイラを連れて東門へ向かうカズの胸中にはなぜか不安めいたモノが浮き上がった…。
【急げ…何故?急ぐ?】
続く疑問に困惑すら感じた時…
ダァーンビックリマーク
銃声が響くビックリマーク
カズとレイラは脚を速めゲートに到着すると同時に…
ダァーンビックリマーク
2回目の銃声が響き…カズはその瞬間を目撃した。
ハラウォン家での夕飯の後、マッドはエドガーを訪ねた…カズはマッドに同行し村の行く末を共に語った。
『長様、お袋が言ってた件ですが…裏山の洞窟はどうでしょうか?』
『裏山か…エドガー確かにあそこならば丁度良いな音符
裏山へは村の中を通らねば入れず、洞窟の奥は危険な場所もあるものの、入り口付近ならば普段から子供達ですら遊ぶ…。
『ふむ…そうだな音符良しカズ音符遅くなったが村の者達を広場に集めてくれ…急いでな音符
『はいビックリマーク
夜の広場には村の者達が集められ、マッドが統制を執る。
『皆の衆、遅くに集まって貰ってすまんが…長様から提案がある…聞いてくれビックリマーク
エドガーが一歩前に進みマッドと代わる。
『急な話しになるがオデッサの話しは皆も知っているな?婦人部から不安感を訴える声もある…そこでだ…今夜は女、子供と年寄り衆には洞窟に避難して貰おうと思うのだが…どうだろうか?』
マッドから詳しい説明があり、すぐに避難が始まり残った男衆には酒が振る舞われた。
『皆、聞いてくれよ?今日は女衆が居ない…その分ゆっくりと呑めるが物取りには注意してくれビックリマーク交代で見張りを立ててくれよ音符
カズが見張りを買って出て村の中を見回りに出た頃……裏山の洞窟への道中では…先頭をカインが殿をアベルが務めていた…大人達と共に村に残るつもりだった2人だがカズに【年寄りは村の財産、子供は村の未来だぞ?お前達以外の誰に託せるんだ?】と煽てられカインは渋々にアベルは揚々と承諾したのだった。
アベルの近くを歩いていたレイラが歩みを止めた…。
『レイラ?どうしたんだ?街の子にはキツイかい?』
『ごめんアベル…レイラはやっぱりカズさんと村に残る…弟達をお願いねビックリマーク
『えっ?レ、レイラビックリマークちょっと…危ないって…』
慌ててレイラを連れ戻そうとするアベルに女衆が口々に云う。
『行かせておやり…』
『あの娘はカズが連れて来たんだ…一緒が一番だよ…』
『アベル…野暮は無しだよ…』
アベルは黙って見送るしかなかった。
見回るカズの前方に人影が見えた。
『誰だビックリマーク何をしている?』
『カズさんビックリマークレイラです…』
『レイラ?何故ここに?』
『ごめんなさい…やっぱり一緒に居たくて…邪魔なら洞窟に…』
『レイラビックリマーク
立ち去ろうとしたレイラの手をカズは掴んだ。
『レイラ行くな…一緒に居よう…』
見回りは2人で続ける事となった。