もちゃもちゃ触らんでくれるかな?
休日の楊胡さんはちょっとアンニュイ。
昼食後のちょっと眠くも、また気怠くもある昼下がり。
柔らかい光が差し込むリビングで、テーブルに座り肘を付いてボーっと考え事。
夏本番一歩手前の日差しが心地よく、瞼がゆっくりと上下している。
ここは「絵になるわー」と言っておきましょう。
異論は認めませんよ。
それにしても、こんなプロローグを前にも書いたような気がする。
たしか自分の世界に浸っている僕を誰かが邪魔してくれたような…
ドライブマンの素振り練習
扉絵までデジャ・ブ感が拭えませんね。
その上、画像の端っこには見たことがある寝ぐせが飛び出しているし。
ということは、きっと僕の背後には…
ほら。暇を持て余した母さんが。
ここは気が付かない振りが一番。
相手にしたら大ヤケドするに違いないのでね。
そんなことを考えている間に、母はすでに僕の背後に忍び寄っていた。
なんだかよくわからないことになってしまった。
母さんは僕の頭を這いずり回るようにベタベタと触ってくる。
僕は頭の形がよくないので、昔から母には頭をおむすびに見立ててよく握られたもの。
頭をイジられるのはいい気がしないが、小さい頃からの伝統だと思って諦めることにしている。
その上、母さんは僕の髪をイジりながらボソボソと何かつぶやいている。
「母ちゃんはもっとスッキリとした髪型が好きなんだけどねぇ」
言いたいことはあるが、反応しては負け。
ここはノーリアクションで乗り切るしかない。
僕が母さんの攻撃(?)に耐えていたところ、姉がやってきてこう言った。
「またもちゃもちゃやってる。よくやるねぇ」
姉が“また”と言った通り、この妙な状態はよくあること。
過去にこんな状態になった時、それを見た姉が「もちゃもちゃ触る」という表現を使った。
それからというもの、母が僕の頭をイジる事をウチでは「もちゃもちゃ」と呼ぶようになった。
さて、前の卓球の素振りでは殴られて終わるという明確なオチがあったが、もちゃもちゃでは終わりが見えない。
3分も頭をイジられ続けると、さすがに何か言いたくもなってくる。
耐え切れなくなった僕は一言だけ言う事にした。
「母さん、もちゃもちゃ触らんでくれるかな?」
やっと僕が相手をしたことで、母の顔がパッと明るくなった。
そして、地道な努力が実を結んだ母さんは、嬉しさを隠しながらもこう返してきた。
「母ちゃんを無視するとは良い度胸なのだ!
親を大事にしない子どもなんてチョッチョコピーなのだ」
リアクションしようがしまいが、僕が負けるのはハナから決まっている。
じゃあ、なんで無視したのかって?
負けが決まっている事へのささやかな抵抗ですよ。
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