『バベットの晩餐会』午前十時の映画祭(デンマーク・1989年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

こんにちは


今日ご紹介する映画は


『バベットの晩餐会』




  *・゜゚・*:.。..。.:*・'あらすじ・*:.。. .。.:*・゜゚・*


19世紀後半のデンマーク、


ユトランドという名の漁村に住む

マーチーネ(ビルギッテ・フェダースピール)と

フィリパ(ボディル・キュア)の老姉妹


二人はルター派一派の開祖として

尊敬を受けていた亡父の遺志を次ぎ、

毎日信者に善行を施しながら生きてきた。


いまだ未婚のままの二人だが、

若き日の姉妹はそれはそれは美しく

マーチーネは士官のローレンス

グドマール・ヴィーヴェンソン)と


フィリパは休暇で村を訪れていた、高名なオペラ歌手

パパン(ジャン・フィリップ・ラフォン)と


それぞれ恋の予感はあったものの

しかし布教活動に自身の両腕として

娘たちを必要とする父はそれを認めず


今に至る

 

或る嵐の夜のこと

姉妹の元にずぶ濡れの女性が訪ねて来る



バベットと名乗った

フランス人女性(ステファニー・オードラン)は

件のオペラ歌手、パパンからの紹介状を携えていた


バベットはパリで起きた暴動の際

活動家の夫と息子を亡くしていた


紹介状には

デンマークへの亡命を希望したバベットを

無給で構わないから働かせてやってもらえないかと

認められており、彼女を家政婦として住み込ませる

こととした姉妹


働き者で倹約上手なバベットのおかげで

時間にも金銭的にも、少しばかりのゆとりが出来た姉妹


バベットとフランスとの繋がりは

彼女の友人が彼女のために買い続ける宝くじだけとなり

気づけば14年の歳月が流れていた



その間に亡父の信者たちも歳をとり

各々に現れ出した偏屈、過去の遺恨、妄執等々

結果、安寧であるはずの集会は諍いの場と成り果てて

しまった。


心を痛めた姉妹は

信者たちに慈愛の心を思い出してほしいと

父の生誕百周年の晩餐会を計画する


いつも通りの

クッキーとコーヒーの晩餐会を、、、


そんな折もおり

バベットに届いた宝くじ当選の一報


一万フランを手にしたバベットは

きっとフランスへ帰ってしまう、、、と

不安気な姉妹に


訳ありの自分を受け入れてくれた二人に

恩返しを込めて、当選金で晩餐会にフランス料理を

振る舞わせてほしいと願い出たバベット


届いた食材の数々に


一体何を食べさせられるのか?と戦々恐々の信者たち


彼らの不穏を置き去りに、バベットの晩餐会の幕が上がる



今作の舞台である

デンマークについての知識が

恥ずかしながら、ほとんどなくて

(かろうじてLEGOロイヤル・コペンハーゲンくらい)


ですからデンマーク人気質も

ましてや彼らの宗教観など想像すらつかないわけです


けれどもその宗教観こそが

『バベットの晩餐会』では重要なファクターなんです


老姉妹の父は

清貧、禁欲を美徳とするガチなプロテスタント


しかし父は娘二人をもうけているわけで(母の姿はなし)

それですのに、娘が結婚することは良しとしないとは

どういう了見ざましょ?とそこが先ず気になりました


そして娘たちもまた、

父の言いつけに反発することなく

人生で唯一だった淡い恋心を消し去っていく、、、


今の日本であれば、

そりゃ宗教2世の受難だ、洗脳だ何だ!

などと糾弾の対称となりうる事象でしょうが


けれどこの姉妹には

そういった悲哀が全く感じられず

ただただ父の教えを守り、慎ましやかに生きている


そういった風情を感じるんですよね


つまり人間の三大欲求がない分、

彼女たちの精神はとても凪いでいるということ、


それが良いか悪いかは別として

わたしは少し彼女たちが羨ましく思いました


まぁ足るを知らない、煩悩塗れだからこそ

羨ましく思ったってことなんですけど(●´ω`●)


姉妹とは逆に

ヒロインバベットはフランスはパリにて

一線で活躍をしていた職業婦人です

(職種については伏せときますね)


但し当時のパリは

ブルジョワジーとプロテスタントが対立の真っ只中で

ブルジョワジー側を満たす職業についていたバベットが

亡命せざるをえなかった理由がそこにありました


愛する夫、息子、仕事を

同時に失い祖国を捨てたバベット


彼女は手にした宝くじの当選金で

デンマーク人にフランス料理を食して

もらうことにします


老姉妹を初め、漁村に住む信者たちにとって

食べることとは生きること


タンパク質は干した魚

炭水化物も干したパンを水で戻すだけという

いわゆる『粗食』です


そんな彼らに、食べることは喜びである

『美食』の都から来たバベットによる本場の

おフランス料理など、しかもこーんな食材を使った

コース料理など


アーメンソーメン冷やラーメンなわけで

けれども、バベットを憎からず思っている信者たちは

彼女の好意を無碍にしない事こそが、神のお導きであると

悲壮な覚悟で晩餐会に臨むのです


それまでの諍いが嘘のように一致団結して。


果たして晩餐会の料理のお味は、、、



今作に登場するのはバベットに扮した

ステファニー・オードラン以外は日本では

ほぼ無名の役者さんばかりです


イングール・ベイルマン組の

ビビ・アンデショーンが出てるには出てますが

デンマークの上流社会を表すカメオ的な出演に

止まっておりますし、



よって地味さは否めませぬが


作品の言わんとするところ、


どれだけの富を得ようと

それをあの世へは持ってはいけない

人は、人に与えたものしか

彼方へは持っていけないのだ、とする心根には

こちらにも優しい気持ちが芽生えます


そして

当選金の全てを食材に使ってしまったバベットに

『そんなことをして貴女は貧しいままだわ』と

嘆く老姉妹に、バベットはこう返します


『芸術家は貧しくありません』と。


それは何もかも失ってしまったはずの

バベットが、手放さなかった、いや手放せなかった

矜持でした。


こちらの作品には

みなぎる高揚感ですとか

迸る感動はありません。


しかし見終わった後には

心の中にほんのりと灯が灯りますし

もしかしたら、一段階ほど人としてUP

したのではとの、錯覚を起こさせてくれます


まぁあくまでも錯覚ですけれどもね、、、


1989年の今日2月19日は

『バベットの晩餐会』の公開初日でした


その記念の日に

記事を投稿に間に合って良かったな、わたし。