『心の旅路』(アメリカ・1942年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

こんばんは


今宵 ご紹介する映画は


『心の旅路』(Random  Harvest)





    ・゜゚・*:.。..。.:*・'あらすじ*:.。. .。.:*・゜゚・*


第一次世界大戦末期の1917年

英国の、とある精神病院に
入院中の軍人が(ドナルド・コールマン)一人、



彼はフランス戦線で砲撃を浴び
記憶を失い、自分の名すら分からず
また会話も覚束なかった

もしや息子では?と
訪ねてきた老夫婦も結局空振りで
すっかり落ち込んでいた11月の冷えた夜のこと

彼は外套を羽織り、散歩に出掛ける


しかしこの夜、突如終戦が報じられ
浮かれた病院職員が開け放った門扉を
誰にも咎められず潜り抜け、彼は街へと下っていく


街は終戦を祝う人でごった返し、
それを避け煙草屋に入った彼は
挙動不審から煙草屋の婆さんに怪しまれ
通報される間一髪のところを
助けてくれたヒトがいた


ポーラと名乗るその人(グリア・ガーソン)は
街から街へと渡り歩く、芸能一座のショーガール


彼の境遇にいたく同情し
行くところがないなら自分たちと一緒にいようと
そう提案してくれたのだが

しかし精神病院から脱走した患者が
彼と知った座長が難色を示し、同行は叶わなくなり
意気消沈する男を見兼ねたポーラは
踊り子をやめて、彼の面倒を見ることに。

二人はリバプールへ行き
彼にはジョン・スミスという仮の名を与えられる

ポーラとは婚約者同士として借家で暮らし始め
彼女に支えられながらスミスは徐々に健康を取り戻す

書き物が好きなスミスは
新聞社へ寄稿文を送り
そんな彼を、
スミシーと愛しそうに呼ぶポーラ

寄稿文に初めて値がついたスミスは
ポーラにプロポーズ

ポーラも
『あの店で貴方に会った時から好きだったのよ』
と告白し、相思相愛が判明した二人は街の小さな教会で
結婚式を挙げる

新居は門扉の蝶番が軋んだ音を立てる
借家だったがそれでも二人には十分な構えだった

暮らしはあっという間に3年が過ぎ
二人の間に男の子が誕生したのだが
産後の肥立ちが良くないポーラに看護師をつけ
労りの限りを尽くすスミシー

そこへリバプールの新聞社からスミシーに
社員採用通知が届く

これで少しは楽な生活が出来る
そう安堵したスミシーは苦労をかけたポーラに
明日には帰るからと言い残し、手続きのため
リバプールへと旅立って行った

しかしスミシーは新聞社へ向かう際
車に撥ねられ、頭を強く打ってしまう

薬局の主に介抱されたスミシーは
何故自分がリバプールにいるのか分からずにいたが
家に帰ったら思い出すかもしれない、、、

そう思い、検分にきた警察官に名を聞かれ

チャールズ・レーニエ』と答えた

そう、、、

チャールズことスミシーは
記憶を取り戻していたのだ

その代わり
ポーラと暮らした3年間の記憶をなくしていた

だから彼は、躊躇なく
彼の本当の家へと帰ってしまう

そこは、
ポーラと暮らした杣屋とは大違いの大邸宅で
チャールズは大富豪の実業家の息子だった

帰宅する前日に
父が亡くなったと知らされたチャールズ

父の事業を継いだチャールズには
多忙な日々が待っていたが
あの空白の3年間が頭を離れることはなかった
 
リバプールで着ていた
上着のポケットに入っていた見知らぬ鍵

その鍵が

チャールズの記憶の扉を開ける日は

もっとずっと先のお話、、、


*・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


今作をどう表現すれば良いかと言えば

わたしは立派な映画だとします

どこか立派なのかと言えば
もう80年近く前の映画ですのに
女性心理がちゃーーんと描かれているからなんですね

例えばヒロインのポーラ、、、

彼女は偶然知り合ったスミスのため
職を投げ打って助けるのですが、そのシーン
普通なら『いきなりそんなことする?』って
こんな顔に→ (¬_¬) なっちゃうシチュエーション
じゃないかと思うんです

だけれども、一見朗らかに見える

このポーラという女性の孤独が
背景が語られていないにも関わらず垣間見え
だからこそ、行く当てのない一人きりのスミスを
捨て置けなかったんだって、

と、斟酌することが出来たのは
演者グリア・ガーソンの力量でしょう


映画の後半、蒸発したスミシーが
実業家チャールズと気づき、彼の個人秘書
マーガレットとして再登場するシーンの
カメラワークには『おおうっ』ってなること
請け合います 笑笑

本当に目を奪う女優さんですわ

チャールズ(スミシー)に思い出してもらえず
でも、あともう少し、もう少し待とうと
揺れ動く彼女の気持ちはね

同じ女として
分からないとは言えませぬ

そしてもう一人、
準ヒロインと申しましょうか

チャールズに戻ったスミシーに
フォーリンラブしちゃったキティちゃん
スーザン・ピータース


この娘はチャールズに恋い焦がれ
告白しては玉砕しを繰り返し、
そして漸くチャールズに振り向かせ
結婚までこぎつけるんです

でも
チャールズの心に別の人が住んでいることに
気づいてました

だってチャールズだけを見てきたんだもの

だからこそ
『貴方は私を見ていない
 プロポーズされても不安だった』
そう言って結婚を解消するんです

我らがポーラからすれば
彼女はにっくき恋敵だけれど
いくら好きでも別の女性を想ってる人とは
一緒になれない、、、

若い彼女の決断は誠に天晴れ!

ポーラもキティも
愛は惜しみなく奪う女性ではなく
かといって
愛は惜しみなく与えるだけでもなく

お互いにとって
何が最善かを考える

そういった女性に仕上がっているんですね

だから今作のエッセンスは
今でも生きているわけです

この二人の女性に愛される
チャールズ(スミシー)もまた
誠実な男性に描かれていて、その他の人物も

あ、チャールズの義姉だけは
『遺産が欲しくて帰ってきたんじゃないの?』と
ちょい意地悪を言いますが、ほぼ良い人ばかり。

一座の座長も悪い人ではないし
ポーラとスミシーの子を取り上げてくれた
医師なんて優しすぎて天使みたい


と思ったらB級天使の
クラレンスさんやないかい!

善意の人ばかり登場する映画だから
嘘臭くなるところを、反対にリアリティを持って
撮影したのはマーヴィン・ルロイ監督

あの超絶メロドラマ
『哀愁』の監督さんですな

原作は『チップス先生さようなら』や
『失われた地平線』のジェームズ・ヒルトン

どおりでクオリティが高いわけだ

映画のラストは
皆さん多分予想はおつきでしょう

何度観ても
『あ、良かったな』って
優しい気持ちになれます

それからこれは
今回再見して残ったことなんですが
映画の冒頭で、スミシーが熱を出すんです

医者は『インフルエンザ』と診察しますが

インフルエンザって第一次世界大戦で戦った
兵士が故郷へ帰り、感染を拡大させたんですね


、、、


人間って

ちぃーとも変わらんね