James Setouchi
2025.9.15
お城について
私には、ラッキーなことに、優秀な友人が沢山いて、知的刺激を大いに与えてくれる。賢い人と話せば自分も賢くなったような気がするので嬉しい限りだ。
今回は、近世(江戸時代)の石垣のあるお城と、中世(室町時代)の石垣のない(代わりに土塁のある)お城と、が、たまたま隣接していて、それをその友人と見に行くことができた。
大変ラッキーだった。
石垣のあるお城は、戦国・安土桃山以降に出現したらしい。今回訪れた城は江戸時代のもの。これだけの石垣を作るには相当の技術と人数とお金が要るだろうなとは思う。実践に即し、かつ偉容を見せつける。すごいものだ。(二人で話しながら歩いていると、知らないおじさんがやってきて、むやみに詳しく、早口であれこれと説明してくれた。パンフレットに書いてないことも説明してくれた。このおじさんもすごかった。)
石垣のない方の、土塁のあるお城は、ぐるっと回ってみると、巨大な岩が累々と積み重なっているところがあって、これは自然のものなのか、人工のものなのか、厳密には分からなかったが、私の受けた感じでは、自然のなかいはじめからあったものだろう。つまり、自然の丘を利用して、濠と土塁を作り、城(砦兼住居)にしたものかと想像した。そこの中世室町期の土豪というか武家がいた。ここでも、地元の係の人が親切にビデオを見せてくれたりした。ありがたかった。
友人がしきりに言うのは、西日本はとにかく石が立派だ、関東にはない、江戸城のあの立派な石も西日本から持ってきたものだ、と。なるほど。
今までよく知らなかったが、ナマで二つを、しかもすぐれた解説付きで見ることができたのは、よかった。
ところが、家に帰ってみると、奇しくも、2025.9.14(日)午後9時からNスペ「戦国サムライの城」第1集で、織田信長の作った城について番組をやっていた。普段なら「戦国時代は殺しあいだから」と敬遠するところだが、今回は刺激を受けていたので、見てみた。
やはり中世は石垣がなく土塁だった、戦国の織田信長から石垣を作った、ということだった。
信長が(最新の研究では・・推測もあるが)
1 小牧山城で初めて石垣を積んで高さを見せつけた。
2 岐阜城で金箔(きんぱく)の瓦(かわら)豊かさを、長良川を行く商人たち見せつけた。信長は豊かな国を目指すとこれで宣言したのだ。
3 旧二条城(現存しない)で足利義昭(室町幕府最後の将軍)のために天守を作って天下に見せつけたと考えられる。敵に包囲されてピンチの時だった。
4 安土城で赤い屋根瓦を見せつけた。宣教師を通して西洋にも絵図を届けようとした。(安土城は秀吉が破壊した。)
このように、石垣、瓦ぶき、天守という、江戸時代の城の原型を、信長が作った、信長は見せることを強く意識していた、ということだった。
なるほど。
最近はお城ブームらしい。NHKの番組はきちんとつくってある。関心のある方は御覧下さい。
奇しくも(本当に奇しくも)自分が行って見てきたものと、NHKでやってくれた番組とが、いいタイミングで出会ってくれた。私も知的刺激を受けた。
だが、手放しでお城を讃えることは、やはりできない。
番組でも言っていたが、石垣を築くときの事故で大勢が亡くなったと言う。その大勢の人とは誰か? 番組では言っていなかったが、戦国時代の戦乱で家郷を離れ食い詰めて、日当いくらの仕事を求めてそこに集まった人びとであろうか? と私は想像した。工事で夫がなくなったとして、遺族への手当を信長はきちんと出しただろうか? あれだけの巨大な城を築くためには、大坂城でも江戸城でも、相当の犠牲があったとしてもおかしくないはずだ。働く人へのケアは十分してあったのだろうか? それとも築城は、貧しい人たちに公共事業として賃金を配るために行ったのだろうか? いや、そうではあるまい。だったら、もっとみんなのためになる、ダムや堤防、道路やため池の整備などにコストを投入すべきだ。わざわざでっかいお城をつくるのは、戦闘のためと、自分のすごさをアピールするためだろう。つまらんことですな。もしかしたら戦争で滅ぼした相手のメンバーを捕虜にして強制労働させた? いやな響きだ・・私はこれが気になり始めた。
そもそも古代中国の聖帝・堯は、小さな居宅に住んだという。階段が3段しかなかったと。(司馬遷の『史記』に書いてある。)始皇帝は巨大な宮殿に住んだ。どちらがいいリーダーかというと、帝堯の方が聖人で、始皇帝は暴虐な独裁者だ、ということになっている。その通りだろう。
リーダーが豪勢な城や宮殿を建ててぜいたくをしているうちはダメだ。もっと民のことを考えないと。民から奪った労働力や富で、自分だけドデカイお城に住むのは、いいリーダーとは、言えない。ほら、あの国の独裁者、その国の独裁者、みんなそうでしょ? そうして築いた高層のバベルの塔は、やがて神によって破壊されることに・・・
巨大な教会や寺院も同様かも知れない。
おや、これは現代の巨大タワー(世界中にあるが・・)のことだったかしら?
くわばらくわばら・・