James Setouchi
2025.5.22改
小説の読書会のレポートの作り方の案 加えて、読書会のやり方 2025.5.9
・外国文学(世界文学)の場合原文で読むのが一番いいが、私たちはそうはいかないので、翻訳でやる。
(1)レポートの作り方と読書会の進め方
1案 読みながら前から順番にまたは場面ごとに気になったところ(疑問に思ったところ、強く印象に残ったところなど)を、書き出し(ページ数も)、なぜ気になったかも書いておく。それらを話し合いポイントにする。言葉の注釈が有効な場合もある。(『こころ』なら「愛」「学歴」「仕事」「乃木将軍」、『舞姫』ならビスマルク、ウィルヘルム2世、ヘイネ、ビヨルネ、山縣有朋など)(作業としては、読みながらふせんをつける、ノートに書き出す(ページも書いておく)と生産的。)
2案 登場人物ごとにキャラクターをまとめる。太田豊太郎はこう、相沢謙吉はこう、エリスはこう、エリスの母はこう、など。主要人物は必須、マイナーに見える人物についても少し触れると良い。シャウムベウヒとが馬車の馭者とか。それぞれに感想(主観的評価、好き嫌いでよい。理由も)を書いておき、話し合いのポイントにする。(これも読む過程で付箋やノートを活用すると生産的。)
3案 作品全体としてイイタイコトはこうだろう、自分の持った感想や疑問はこうだ、を絞り込み、書いておく。それが話し合いのポイントになる。
4案 作家の年譜を参照し、同時代に何があったかを表にする。その中で作品の位置づけを確認し、作家はなぜそれを書いたか、同時代や後世の評価はどうか、を(調べて)示す。
5案 現代を生きる我々にとってのその作品の意義を記しておく。私見で良い。高名な学者の書いていることを参照してもよいが、自分が作品と格闘して感じたことを示すのが、サークル活動としての読書会としては、よいのではないか。
別案 『罪と罰』『風とともに去りぬ』など非常に有名な作品には、新潮選書から「謎とき」シリーズが出ている。これを丁寧に紹介するだけでも、参加者のためには勉強になる。「謎とき」で示されたいくつかのポイントについて、話し合うのだ。
・上に記した1案→2案→3案を順番に作業するのが本筋。読書会で与えられた時間は少ないので、1・2案は読書会では時間を取らず、4案→3案→5案の順に示し3案・4案だけやるといいかもしれない。準備作業がおいつかなければ、1案だけ示す、2案だけ示す、3案だけ示す、あるいは別案だけ示す、などでも十分。
・国語の読解テストのような形にせず、各自が好きなことを言い合えるようにするのがよいと思う。
・もっと全然違うやり方もあるかも知れない。
・どの本(訳者は誰、何文庫など)を使ったかは明示。
・研究者の論文などを参照した場合、出典(研究者名、論文名、掲載雑誌・書籍名、いつのものかなど)を明記。
・匿名のわけのわからないブログを鵜呑みにして引用しない。(例えば「ジェームズだれとかの文学散歩」とか。)大学の博士論文以上のものならまずまず信頼できるのでは? わかりやすいものとしては、自治体の出しているもの(例えば新宿区の漱石記念館、文京区の鴎外記念館など)のしかも子供向けサイトなどなら、信頼できるし、使いやすい。それも出典明記。さらに高度なところに入りたければ大学の研究者や高名な批評家のものを使うことになる。
・出典については、「東京は日本の首都」は中学生でも知っていることなので出典を明記しなくてもいいが、「東京が日本の首都になったいきさつは、次のように言われている」という研究者の学説については、出典を明記するべき。大学の研究論文ほど厳しい。小林秀雄のエッセイは一々そんなことは示していないが。
・話し合いのルールとしては、相手の言うことを頭ごなしに否定しない。参加者なりに感じたことを考えたことを懸命に言っているので、「なるほどね・・」と受け止める態度で臨む。実際、感想は自由なのだ。松尾芭蕉のセミの句を聞いて「私はセミが嫌いだ」と言ったって、立派な感想ではあるのだ。
・初対面の自己紹介の仕方としては、「こう見えて私は・・」で始めるとよいかも知れない。「こう見えて私は子供の時キック・ボクサーになりたかったのです」など。これは主催者・年長者からやってみせるとよい。最近読んだ本、読もうと思っている本の紹介から入ると読書会らしくなる。(読書好きが集まっている会なので、時間が結構かかる。それだけで読書会になる。)
・読書会は二部制とし、第一部では読解を丁寧にやり、第二部では自由に脱線し好きなようにモノを言っていいとする、第一部で帰る人は帰り、第二部は延長戦をしたい少数の人だけやる、というやり方にすると、第二部が非常に盛り上がるかも。
(2)全く違う読書会のやり方の案
上記の案が良いと私は思うが、他にもやり方はある。
A案 黙ってその時間読むだけ。これも読書会ではある。
B案 短篇をその場で音読・朗読し、感想を言い合う。感想を書いて回覧するのでもよい。『セメント樽の中の手紙』などは長さも調度よい、インパクトもすごい。『注文の多い料理店』は中学生にも読めるので話し合いやすい。
C案 聖書や論語の一節を取り上げ、学者の解釈や牧師の説教を複数提示し、徹底討論する。解釈および自分の生き方で。毎週やったらかなり勉強になる。すぐれた教師(内村鑑三とか)が付いていれば非常に勉強になる。内村鑑三のロマ書の解説を参照しながら進めていく、といった方法もあるだろう。
D案 各自の紹介したい本・読んだ本を持ち寄りブック・トークする。質疑応答あり。これは案外いいかも。著者・書名・書かれた年、著者の紹介、内容の紹介、お勧めの理由などを示すとよい。読んでなければ「これから読みたい本」でもよい。
E案 テーマごと(出産、関税、沖縄、老後の生活設計、漱石、ゲーテ、キリスト教などなど)にテーマを決めブック・トークする。専門家が助言者でいるとありがたい。非常に勉強になる。
F案 詩のトーナメント。各自が紹介したい詩を持ち寄り、紹介し、内容を話し合い、トーナメント形式で勝ち上がる。ま、文学に勝ち負けを持ち込むのは好きではない(いや、間違っている)が、ゲームとして遊ぶことはできる。紹介や話し合いの過程で勉強になる。詩のボクシングは、創作詩で対戦している。創作俳句でこれをやっているのが俳句甲子園だ。有名な俳句や短歌でも出来る。人前でパフォーマンスする要素が入るので、得手不得手があるかもしれない。中味もないのにパフォーマンスだけ派手なのは、私は好きではない。
(3)その他の注意
・座り方注意。机を囲んで車座が一番いい(フルーツバスケットのような)。全員が対面できる。全員が横一線でもいいかも?(やったことはないが。)学校の教室のように先生が前、生徒は後ろ、とやると、どうしてもレクチャー形式になってしまい、対等・平等の世界がつくりにくい。
・人数は。4人までだ、という意見を聞いたことがある。安心して自己開示できるのは4人まで、と。自己開示できる、受容して貰える雰囲気の中で、話し合い、読みが深化し変容すると、勉強になったな、参加してよかったな、となるのでは? 大学のゼミで8人くらいでも勉強になり楽しかった記憶がある。
・人数が多いものを小班に分けてあとで報告し合うやり方も何回か試みたが、あまりいいとは思えなかった。本人のリアルな感想・意見が、まとめの報告ではうまく伝わらない。
・参加者は大学教授から中学生までレベル差が大きい場合がある。互いに配慮して分かるような言い方をしないといけない。どの参加者も満足できるためには? 知識量では大学教授が圧倒的なのは当たり前だ。中学生は中学生なりの真剣なひっかかりがある。そこをくみ上げる配慮は、大人がするとよい。
・急に指名するとドギマギする人もいるので、言う順番を決めておけばいいかも。「パス」あり。シゴキの道場ではないし勝つためにやっているわけではないので、楽しく参加できればいいのさ。