James Setouchi

2024.12.9

 堤 未果『沈みゆく大国アメリカ』集英社新書0763A 2014年11月

 

1 著者 堤 未果 ジャーナリスト。東京生まれ。アメリカ留学ののち、ライターに。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』『ルポ貧困大国アメリカ』『ルポ貧困大国アメリカⅡ』『(株)貧困大国アメリカ』『政府は必ず嘘をつく』など。

 

2 紹介 『ルポ貧困大国アメリカ』シリーズの第4弾。今回は、オバマケアに焦点を当て、弱者救済の理想を求めてオバマケアを作ったつもりが、実態はとんでもないものになっていた! ということを明らかにする。これを読んだら、あなたもぞっとするに違いない!

 

3 目次 はじめに 父の遺言/序章 「一パーセントの超・富裕層」たちの新たなゲーム/第一章 ついに無保険車が保険に入れた!/第二章 アメリカから医師が消える/第三章 リーマンショックからオバマケアへ/第四章 次のターゲットは日本

 

4 大体の内容(会話体で)

A 「はじめに 父の遺言」では、著者の父親が「この国の国民皆保険制度を、なんとしても守ってくれ」と遺言して亡くなったことを明らかにしているよね。

B 親父さんもジャーナリストだったんだけど、娘に社会正義を託せるなんて、親孝行な娘と言えるかもしれないね。

A 著者はアメリカが好きで日本を飛び出したんだけど、行ってみて、ウォール街がすべてを支配するアメリカの現実に愕然としたんだよね。

B オバマケアでもだめなの?

A オバマケアは画期的な制度だと期待されたけど、ふたをあけて見るとウォール街資本・医薬業界によってとんでもないものに変えられていたんだよ。

B そもそもオバマケア以前はどうだったの?

A それはひどい。日本やカナダの国民皆保険制度と違って、アメリカの保険制度は、営利事業だから。貧しい人に保険がゆきわたらない。アメリカの医療費は高く、病気やけがをするとたちまち中流が下流に没落する。

B オバマケアでどうなったの? 弱者のための新しいシステムになるんじゃなかったの?

A そう。オバマケアをはじめから否定した共和党支持者は論外として、民主党支持者たちはそう期待した。でも、みんな知らなかったんだ。

B どういうこと?

A ジョージア州でそれまで中流だった人が、オバマケアの用件を満たさないからと保険会社から契約を打ち切られ、新しい契約では倍近く高額の保険を買わされることになった例が紹介されている。

B みんなが安く医療を受けられるようになったんじゃないの?

A HIVのある人は一粒1000ドル(10万円)の薬を自己負担で買わされると書いてある。保険会社が株主の利益を守るために慢性疾患の薬の多くを処方薬リストから外したんだ。

B じゃあ、薬が買えなくなるってこと?

A 会社も、フルタイム従業員に保険を提供する義務から逃れるために、従業員をパートタイムに降格するという選択をした。フルタイム労働者で構成された労働組合は組合員が減少して経済基盤と発言力を失うことになる。

B 労組をつぶすためにやったの!?

A 今や民主党のスポンサーは、労組ではなく、グローバル大企業群なんだって。

B でも、最も貧しい人びとには、朗報だったんじゃないの?

A 最も貧しい人びとのためには、メディケイドという保険があるが、これがまた問題なんだよ。

B どういうこと?

A メディケイドは国からの治療費支払い率が他の保険と違って低いので、メディケイド患者を診れば診るほど医師や病院は赤字になる。だからメディケイド患者は診てもらえず、重病化した挙句にER(救急病院)で研修医に診てもらうことになる。かかりつけ医の不足が根っこにはある。

B 高齢者などはどうなの?

A 1993年の資産回収法のせいで、高齢のメディケア(メディケイドとは別)の患者は、死亡した時点で自宅などを没収され医療費を回収される。国民にはなぜかあまり知らせていないけどね。

B 何でそんなことになるの?

A 結局、この法案の背後にはウォール街と医薬の巨大資本がいて、政府を牛耳っているということなんだね。

B どこかで聞いた話だよね。

A そう。フードスタンプの時も同じ構図だった。そして、この連中が次は日本を狙っているというんだ。

B ・・・・・!!                         

 (あなたは、どう考えますか?)                             

                    2014(H26).12.15