James Setouchi

2024.12.9

 

勝俣 誠『新・現代アフリカ入門 人々が変える大陸』岩波新書 2013年4月

 

1 著者 勝俣 誠 1946年東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。パリ第一大学博士課程修了。パリ第三大学、貿易研修センター、アフリカのダカール大学、フランスの社会科学高等学院、カナダのモントリオール大学などで勤務。現在、明治学院大学国際平和研究所所長、同大学国際学部教授。専攻は国際政治経済学、南北問題。著書『現代アフリカ入門』『アフリカは本当に貧しいのか』『グローバル化と人間の安全保障』『脱成長の道』など。(岩波新書の著者紹介より)

 

2 目次

まえがき

第一章 所変われば品変わる

 1 実に多様な地理世界、2 地球温暖化とアフリカ、3 人々は待つことができない

第二章 民主化の二十年

 1 経済の自由化から政治の自由化へ、2 ジンバブエの政治経済危機、3 コートジボワールー「奇跡」から内戦へ、4 ケニアの民主化と暴力の系譜

第三章 独立は誰のために

 1 早すぎたのか、遅すぎたのか、2 欧米を信じたモブツ大統領、3 国の富の国際管理

第四章 ポスト・アパルトヘイトの今

 1 一つの国の二つの世界、2 アパルトヘイトをどうなくしたのか、3 ポスト・アパルトヘイトの課題

第五章 冷戦後の戦争と平和

 1 武力紛争のトポス、2 ビジネス化する戦争、3 「国際社会」とアフリカ、4 9.11以後のアフリカの平和

第六章 飢えの構造

 1 飢えの複雑系、2 持ち込まれる「革命」、3 考える農民たち

第七章 ワシントン・コンセンサスから「北京コンセンサス」へ

 1 世界史の中のアフリカ経済、2 すべては対外債務危機から始まった、3 「北京コンセンサス」の登場―アフリカと中国

終章  人々が変えるアフリカ

 1 冷戦後の開発援助レジーム、2 国家が弱ると社会が活性化する、3 アフリカ知識人論、4 二つのアフリカ、二つの道

あとがき

 

3 コメント

 植民地時代から今日まで、「北」の諸国はある形でアフリカに手と口を出してきた。対して、アフリカは植民地として資源を収奪された時代を経て、独立したものの欧州とつながる一部の者が資源と富を独占する、東西冷戦およびアメリカの覇権という世界情勢の中で内戦や複合地域紛争が多発する、対外債務危機に対し改めて世界銀行や欧米の企業体が介入し消費社会化しつつも結局は資源の収奪が正当化される、軍隊と警察が私兵化して民から収奪する、などなどの事態もあり、現在は問題を抱えつつも何とか自分たちのアフリカを作っていこうとする動きもある、優れた先覚者も多数いる、という印象をこの本から得た。

 筆者は言う。

 「人は市民としては生まれない。尊厳への戦いを通して市民になるのだ。」(p.246)

 「南の人々と北の人々を結ぶ共通の絆は何かと聞かれたら、目先の国益を相対化できる地球市民となることと答える以外にない。」(p.249)

 読んでいて、アフリカの話で終わらない、と感じた。現代の日本も外国から多くの資源を持ってきている。win-winの関係とは限らない。逆に最近は外国の資本に資源を収奪されようとしてはいないか。では、収奪したりされたりではなく、お互いが幸せで良好な関係を築くには、どうすればいいのか。

 アフリカは平成の日本に生きる私たちにとって遠い存在、ではない。アフリカの現在を知り国際関係を学びたい人にはもちろん必読だろうが、日本のありかた、つまりは自分自身の生き方を考えさせられる本でもあった。                                   

                                                                  H26.6

 

付言。アフリカは劇的に変化しつつある。この本が出てから既に10年以上経った。アフリカを志す方は最新の情報にアップデートされたい。                                     

                                                                   2024(令和6).12.9