James Setouchi
2024.12.9
『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う 200兆円市場のラストフロンティアで儲ける』
ムウェテ・ムルアカ 講談社+α新書2015年12月
1 著者 ムウェテ・ムルアカ:ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)生まれ。国際政治評論家。千葉科学大学教授。神奈川工科大学特任教授。総務省、経済産業省、文部科学省の任期付き参与。東京電機大学電子工学科卒業。工学博士。ザイール共和国国営放送日本代表、在日コンゴ民主共和国通商代表機関理事、コンゴ民主共和国キンシャサ大学客員教授も務めた。日本における外国人タレントプロダクション事業共同組合専務理事でもあった。(この本の著者紹介から。)
2 目次 はじめに/第一章 爆発する消費マーケット、世界が狙う天然資源/第二章 中国に踏み荒らされるアフリカ大陸/第三章 反日に固執する中韓は「奴隷の恨み」を棚上げしたアフリカを見習え/第四章 日本はこうしてラストフロンティアを手に入れる/おわりに
3 コメント アフリカについてはあまりにも無知だと自覚している。これはたまたま書店で手に取ったもの。
著者は、ムルアカ氏と言って、現在アフリカ(特にコンゴ民主共和国)と日本を行き来して活躍している人のようだ。かつて鈴木宗男代議士の秘書としてTVに出ていた長身の黒人がいて、「あれはだれかな」と思ったことがある。それがムルアカ氏だった。ムルアカ氏はコンゴ民主共和国の首都キンシャサで生まれ育った。空手を始め、高性能の自動車や冷蔵庫をつくる日本に興味を持ち、ザイールの国立大学で学んだあと国営放送に就職。1985年に来日(p.8~p.11および本人のHPから)。日本語学校に通い、東京電機大学工学部の夜間部に進んだ。ガソリンスタンドで働きながら夜間大学で学び、テレビ局の番組制作に携わったことも(p.131)。東京医科歯科大学で生体工学の研究を続け科学技術庁の放射線医学総合研究所の研究員をしたことも(本人のHPから)。鈴木宗男代議士の私設秘書をし、アフリカ開発会議(TICAD)立ち上げに加わった。第1回は1993年(東京)。2016年が第6回(ケニアで開催)。
著者の主張がすべて正しいかどうかは知らない。著者はおおむね次のように主張する。
(1)アフリカ大陸は急成長を続ける、最後のフロンティアだ。アフリカの地下資源(レアメタルなど)と日本の技術力が結べば大きな成果が出る。
(2)最近中国が進出してきているが、人気がない。インフラ整備の工事などは積極的に行うが、技術が未熟で現地に対する調査も不十分なまま行うので、道路が雨季にはすぐ水没したり、交通渋滞が起こったりする。また労働者は中国から連れてくるので、現地に技術移転ができない。見返りに地下資源開発の利権を奪う。中国のやり方はかつての白人の植民地支配のやり方に似ている。アフリカでは中国人は人気がない。
(3)対して日本は、技術が優れ、現地に対する調査が丁寧なので、道路もすばらしい。労働者は現地の人を育成してくれるので、技術移転ができる。アフリカでは日本人は人気がある。
(4)ただし、日本人はあまりにもアフリカについて知らなさすぎる。日本のマスコミも、野生動物・貧困・未開などマイナスのステレオタイプ化したアフリカ像を再生産している。また白人を通じて交渉したりすると交渉を誤る。白人はかつてアフリカを植民地にして収奪したので、アフリカでは白人への不信感がある。アフリカと言っても54か国あり、人口も10億人以上ある。国によって多様であり、日本人はアフリカに詳しくなることがまずは必要だ。日本人はもっとアフリカと関係を持ってほしい。
中国をたたき日本を持ち上げる構図が明確なので、最近はやりの「ためにする」時局便乗本ではないかと疑ってみるべきだろうか。だが、コンゴ北部では、日本のH製作所が1970年代に鉄道を作っていた時代の名残で「日本人か! またきてほしい」と歓迎される。かつて鉄道と同時に診療所や学校も建設した(p.128)。こうした記述が随所に出てくる。日本の技術者たちの奮闘が評価され日本人が尊敬されているとの記述にはすなおに感動した。
(国際)ムルアカ『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う』(アフリカと中国と日本)、勝俣誠『新・現代アフリカ入門 人々が変える大陸』(2013年現在の政治経済)、中村安希『インパラの朝』、中村哲『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束』、パワー『コーランには本当は何が書かれていたか』、マコーミック『マララ』、サラミ『イラン人は面白すぎる!』、中牧弘允『カレンダーから世界を見る』、杉本昭男『インドで「暮らす、働く、結婚する」』、アキ・ロバーツ『アメリカの大学の裏側』、佐藤信行『ドナルド・トランプ』、堤未夏『(株)貧困大国アメリカ』、トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』、池上俊一『パスタでたどるイタリア史』、田村耕太郎『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!』、伊勢崎賢治『日本人は人を殺しに行くのか』、高橋哲哉『沖縄の米軍基地』、岩下明裕『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』、東野真『緒方貞子 難民支援の現場から』、野村進『コリアン世界の旅』、明石康『国際連合』、石田雄『平和の政治学』(2017,5)