James Setouchi
2024.11.10
出口保行『犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉』
SB新書 2022年8月
1 出口保行:犯罪心理学者。東京学芸大学(院)発達心理学講座を修了し法務省入省。少年鑑別所、刑務所、拘置所で犯罪者を心理的に分析する資質鑑別に従事。法務省矯正局、法務大臣官房秘書課などを経て法務省法務総合研究所に、東京未来大学子ども心理学部教授など。
2 『犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉』
(1)「はじめに」から
犯罪や非行、問題行動の背景には、家庭環境の問題が大きく関わっている。親がよかれと思って投げかけた言葉が「呪いの言葉」となって子どもの未来を壊してしまう場合が多い。親の子育ての、ほんおちょっとした不注意こそが問題なのだ。これは、筆者が1万人以上の犯罪者・非行少年の心理分析を行った経験から確信したことだ。(3頁)
(2)目次
はじめに/序章 「よかれと思って」は親の自己満足/第1章 「みんなと仲良く」が個性を破壊する/第2章 「早くしなさい」が先を読む力を破壊する/第3章 「頑張りなさい」が意欲を破壊する/第4章 「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する/第5章 「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する/第6章 「気をつけて!」が共感性を破壊する/終章 子どもを伸ばす親の愛情
(3)終章から(簡単なまとめ)
筆者・出口保行は、小学校の教師の子。「教師の子」というだけで社会的期待値が高く、背伸びをしてしまう。無理がたたって問題行動に発展する。自分もグレる危険性もあった。(211頁)が、父は子どもをよく観察する子だった。「子どもは思っていることの1%も口に出せない。保護者や教師は常に子どもを観察して、何か異変が起きていないか確認することが大切」が口癖だった。筆者は中学1~2年頃まで父親と一緒にお風呂に入り、いろいろな話をするのが日課だった。(212頁)父は常に「話を聞くよ」という姿勢でいてくれた。自分は父親になり、妻と娘を連れて転勤したが、常に話し合って合意を取ることを大事にしてきた。子どもが悩んでいるときは徹底的に話を聞いた。アドバイスではなく、子どもの話を整理する役となる。テーブルに模造紙を広げてキーワードを書いていく。毎晩のように飽きるまで続けた。(214頁)子どもの問題行動について親が相談に来ることもよくある。「母親失格」と自信をなくする親もあるが、これもまたチャンスと考えて前に進んで貰いたい。どんな立派な親でも、子育てに悩まない親はいない。(219頁)愛情を持って真剣に向き合っていれば何とかなる。修正を恐れずにいこう。(220~221頁)生育環境を変えることは出来ないが、その現実をどう受け止めて、これからどうしたいか。考えるしかない。自分自身が幸せに生きていくためだ。聞いてくれる人がいたら話し、誰もいないと思ったら紙に書き出すとよい。これから自分自身が幸せに生きていくためにどうするか考えるとよい。人生さまざまなことがあるが、腐らず、あきらめずに生きていれば、必ずいいことがある。未来はいつも明るいと信じている。きっと。(221~222頁)
3 コメント
大事な内容なので、本文を自分でお読み頂くとよい。若い人よりも教師や保護者が読んだ方がいい本かも知れない。若い人は、犯罪心理学という学問があり、鑑別所で心理分析をする仕事がある、などを知って、進路選択の参考にすることもできる。心理学はデータを用いて分析するので、科学だ。科学法則は例外もあり人間には例外(個性)こそが大事だという視点もあるが、法則により大多数の傾向を説明して応用につなげる、というやりかたもある。この本には応用できる内容も多いと感じた。
(R5.4.23)