James Setouchi
2024.11.6
中高生に薦める読書案内 H30.1.13
1 瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡』子供の頃から将棋のプロを目指し努力するが挫折。しかし、彼はアマとして将棋の楽しさに目覚める。
2 宮本延春『オール1のおちこぼれ、教師になる』(角川文庫)自伝。中学でオール1だったが…
3 園池靖『灘高校生の受験日記』(秋元文庫。売っていないかも。)文字通り灘高校生の受験日記。主人公は中1から灘ではなく高1から編入。灘のような中高一貫校の進学校は、早めに中学の内容を終わり高校の内容を扱う。高2の終わりには高校の内容も全部終了し高3は全部受験勉強に投入。(最近はもっと早めに済ませるケースも。)但し①実は主人公は高1からの編入だから灘中を知らない。灘中の国語の名物教師は中勘助(なかかんすけ)『銀の匙(さじ)』をテキストに総合学習・探求学習型の勉強をしていた。②ついて行けない子がいたらどうするのか、という問いは残る。
4 佐藤優『私のマルクス』佐藤は浦和高校→同志社大神学部。1979年頃。高校時代生徒会や新聞部には新左翼の雰囲気が残っていた。しかし趨勢は、左翼運動はほぼ壊滅しており運動部で「まじめに」先生の言うことを聞いて体制順応型の高校生活を送る人が多い時代になっていた、等と書いてある。5と比べると、69年から79年への高校生活の変遷がはっきりわかる。
5 庄司薫『赤ずきんちゃん気をつけて』(中公文庫)作者の本名は福田章二(1937年生)で、日比谷高校(昔のスーパーエリート校の日比谷)→東大法学部だが、金と権力の道を選ばず、作家になった。エジプト学に沈潜していたことも。主人公カオル君は1969年頃の、つまり東大闘争時代の日比谷高校生。自分の進路に迷い大学受験を一度は拒否するが、丸山真男らしき人物に出会い、改めて東大に行くことを選ぶ。
6 村上龍『69(シックスティナイン)』自伝的小説。佐世保での高校生活。1969年ころ、学生運動の時期。庄司薫は東京のエリート、村上龍は地方出身だ。村上はのち東京の私立美大に進んだ。
7 畑正憲(1935生)『ムツゴロウの青春期』自伝エッセイ。畑正憲氏は大分の日田の出身で東大理学部に進み動物学を学んだ。。受験勉強についても書いてある。数学は「電話帳」と呼ばれた旺文社の入試問題正解をまる一冊解く。
8 渡辺淳一(1933生)『阿寒に果つ』渡辺淳一らしき人物が主人公。謎の美少女に恋をするが…:美少女は美術部で大人びている。これは悲劇的な恋の話。結構寒い。戦後の共学高校の話ではある。
9 安岡章太郎(1920生)『宿題』『サアカスの馬』『悪い仲間』自伝的小説。東北からいきなり都心の小学校に転校し、受験モードの中で不適応を起こす。九段中学でも軍国主義教育の勤労奉仕に不適応を起こす。
10 加藤周一(1919生)『羊の歌』(岩波新書)自伝。加藤は日比谷中学→一高→東大医学部。受験期のことも書いてある。
11 井上靖(1907生)『夏草冬濤(ふゆなみ)』『北の海』『あすなろ物語』自伝的小説。旧制中学・旧制高校時代は柔道と文学に打ち込んだ。
12 坂口安吾(1906生)『風と光と二十の私と』自伝エッセイ。旧制新潟中学(県内トップのエリート学校)でドロップアウトして東京の豊山中学へ。文学や宗教にも打ち込むが陸上(ハイジャンプ)の選手でもあった。
13 内村鑑三『余は如何にしてキリスト信徒となりしか』自伝。札幌農学校に学びキリスト教に入信しアメリカに行きそして…
14 森鴎外『ヰタ・セクスアリス』自伝・回想的小説。鴎外の少年時代(思春期)。
15 福沢諭吉『福翁自伝』自伝。幕末に蘭学・英学を学び開明的思想を身につけた。適塾時代が面白い。
16 シュリーマン『古代への情熱』自伝。商店の見習いをしながら独学で勉強、財をなしトロヤを発掘。
17 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』自伝的小説。厳しい規律と勉強システムに押しつぶされる少年を描く。
18 リンカーンの伝記:リンカーンは貧しく、学校教育も不十分にしか受けられず、しかし子供の頃から努力して周囲の信頼を勝ち得、大成して大統領となった。
19 内村鑑三『代表的日本人』の二宮尊徳の項。二宮尊徳は幼少時貧しく、叔父の家に寄宿し、猛烈に働きながら『大学』を読み、やがて大成し、農村を改革していった。彼の根本は信仰と道徳だった、と内村は考える。