James Setouchi

2024.11.6

 

村上春樹①

 

1 年譜

1949(昭和24)年京都市に生まれる。直後に兵庫県西宮市・芦屋市に転居。

1968(昭和43)年、神戸高校を経て早稲田大学第一文学部演劇科入学。目白の和敬塾に入寮。半年で出る。

1971(昭和46)年学生結婚。

1974(昭和49)年ジャズ喫茶「ピーター・キャット」を開店。

1975(昭和50)年早稲田大卒業。

1979(昭和54)年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞。

1985(昭和60)年『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』

1987(昭和62)年『ノルウェーの森』

1988(昭和63)年『ダンス・ダンス・ダンス』

1994~95年(平成6~7年)『ねじまき鳥クロニクル』

1995年 阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件

1997年『アンダーグラウンド』

1998年『約束された場所で』

2002年『海辺のカフカ』

2006年 フランツ・カフカ賞

2009年 エルサレム賞受賞

2009~2010年『1Q84』

2011年 東日本大震災、カタルーニヤ賞受賞

2013年『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

2015年『職業としての小説家』

2016年 アンデルセン文学賞受賞

2017(平成29)年『騎士団長殺し』

 

2 作品『騎士団長殺し』(2017年)について

 村上は現代日本文学のエースだ。村上は魂の問題を扱い現代人のニーズにこたえる作家である。今後の展望として、村上が新しい共同体の在り方を模索する作品を書く可能性もある。(重里徹也氏のコメントなどから)

 

3 アンデルセン文学賞スピーチ(2016年)について

 人間には影の部分がある。それを見つめないといけない。さもないと影が主人を殺しに来る。このように村上は言う。

 

 

 

村上春樹②

 

4 カタルーニャ賞スピーチ(2011年)について

 東日本大震災について。日本人は無常観を持っている。しかし福島原発事故は、効率重視のため危険な原発を作り続けた欺瞞を明らかにした。倫理や道徳の再建が必要だ。このように村上は言う。

 東日本大震災と福島原発事故の直後のスピーチ。

 

5 エルサレム賞スピーチ(2009年)について

 壁と卵があるとすれば、自分は常に卵の側に立つ。システムを作ったのは我々自身だ。それに対抗する物語を作り出さないといけない。このように村上は言う。

 イスラエルはガザ地区のパレスチナ難民などを攻撃しているが、その首都エルサレムに乗り込んでのスピーチ。

 

 

 

村上春樹③

6 『アンダーグラウンド』(1997年)から

 1995年に地下鉄サリン事件があった。その被害者から聞き取りをして書いたインタビュー集がこの『アンダーグラウンド』。なお、オウム真理教の(サリン実行犯ではない)信者から聞き取りをして書いたインタビュー集が『約束された場所で』。ユング派心理学の河合隼雄の影響も受けている。

 村上は孤独な自分の問題を追求することが多く、世界の都市住民の心に訴えたが、1995年以降社会と人間の関わりを問題化するようになっている、としばしば言われる。

 冒頭に紹介されている和泉きよかさん(26歳)は、千代田線霞ヶ関駅で被害に遭った。彼女はJR勤務の経験があり、危機対応の訓練ができていた。自らも被害に遭いながらも、周囲の倒れている人を看病し、病院に送ろうとする。地下鉄の駅員も被害者となり全く動けない。彼女に言われて初めて動くTV局の人、道路の向こう側でただ見ているだけの人もある中で、彼女が動けたのはなぜか。「もし仮にそのとき、あなたが道路の向こう側を歩いている通勤者の一人だっとしたら、あなたはこっち側に移って倒れていた人たちの看病をしたと思いますか?」と村上春樹が問う。彼女は「はい、そうしたと思います。」と即答する。