James Setouchi

 

読書会『平家物語』R6.10.26土

 

 いくつかのポイントを記す。・・・読書会では、何となく表面をなでるだけにするのではなく、本文に即して深くツッコミを入れた方が面白い。だが、そうすると全部はやれないだろう。1トピックスについて45分くらいかけるといいかも?

 

1        冒頭「祇園精舎」

祇園精舎・沙羅双樹とは? 仏教の基本知識のある人が執筆。

諸行無常とは? マハーパリニッバーナ経(大般涅槃経)では? 釈尊最後の言葉「諸行は滅びゆく。怠ることなく努めよ。」

・中国大陸の王朝から述べるのはなぜ? 視野が日本にとどまっていない。

・平清盛の先祖を縷々と述べるのはなぜ?(貴種だから) 氏族とは一体何? 実際には婚姻で血は入り混じっているのに。・・父系家族、母系家族、養子など世界にはある。

・父親の平忠盛が昇殿を許された。

・滅び行くものの美を言うのは日本の特徴。だが、滅びは美なのか? 危険思想?

 

2        義仲軍VS義経軍 宇治川の合戦と義仲の最後 巻9

・宇治川の戦い・・小林秀雄の書いている筋肉の躍動、哄笑、で解釈してしまっていいのか?

・義仲は六条高倉の「女房」の所にいた・・延慶本では「松殿の姫君」・・道元の母? 真偽不明

・義仲最期の装束 馬(サラブレッドではない)も華やか・・実戦では不利では? いや、様式美を重視。

・たちまち雲散霧消・・逃亡OKの現実! (武士の忠義はもっと後世)

・巴をなぜ逃がしたのか? 山吹は?(『盛衰記』では葵。虚構か。巴も虚構か。)伝承は各地にある。 『盛衰記』では巴は生き延びて和田義盛の妻に。琵琶湖の南の大津の義仲寺は巴の隠棲した草庵がもとだということになっている。芭蕉もそこに葬られる。

・逃げなかった今井(乳兄弟) 

・義仲は今井と心中死したかった 武士は心中死をする

・今井は義仲に公的な自決をしてもらいたかった

・カッコイイと読ませないためには? 今井は自決すべきではなかった? 少年ジャンプの世界ではラスボスはなぜカッコヨク自決するのか? ラスボスでなくても、ヒーローたちが「後世の誰かのために」「命を賭けて」決死の行動をする(鉄腕アトム、ジャイアントロボの最終回がそう。宇宙戦艦ヤマトもほぼ決死の? 行動、ドラゴンボールの悟空も)のは、特攻隊や自爆テロの思想(メンタリティ)を再生産しているのでは? 「プロジェクトX」とモーレツサラリーマンはどうかな。「大義に殉ずる」思想とは?

 

3        屋島の戦い 那須与一 巻11 義経軍は大坂から阿波に上陸、陸路を讃岐へ。平家は海に逃げる。[平家の政権が海上帝国、源氏政権は内陸帝国とわかる。]

兵馬の道:まずは馬と弓。(戦闘には槍も組み打ちも銃も使うが、江戸期は剣術をよしとした。)

・弓術とは何か? 古代中国の孔子の学園でも「射」を教えた。戦闘技法または祭礼の技法? 与一の場合実戦技術としての弓術と神への祈りが明確にある。射で神意を占うのではなく、人間の欲望のために神の加護を要請する、とは?(あまり触れてもわからないかも。)→近年の弓道における精神的な内容については、例えばヘリゲル『弓と禅』を参照。

・平家で老人が踊ったのはなぜ? 合戦とは様式美重視で一種の祝祭?(それでも人が死ぬ。) それを「御諚であるぞ、射よ」と耳打ちした伊勢三郎は、山賊ゆえ武士の戦い方の様式から逸脱している? 義経軍にはそういうところがある?

 

4        壇の浦の戦い 巻11

・義経の卑怯な戦術(水夫=非戦闘員を射殺す)

・平宗盛(大臣殿)は往生際が悪いのか? 父子で助かるなら助かりたいとあがく。

・能登殿(平教経)はカッコいいか? 

・九郎義経の動き 大将らしく姿を見せつつ巧みに戦闘を避けるのは賢いか汚いか?

・知盛の「見るべき程の事をば見つ。」とあるが、何を見たのか? 人間は全てを「見る」ことなどできはしないはずだが? 覚悟+あきらめ 諦念(resignation)とは? 消極性と積極性 森鴎外では? 仏教の「諦」とは? 心理学でも扱うらしい。

・平家の心中死。「一所に死ぬ」が武士。この集団自決は説経節『愛護の若』にも継承。太平洋の玉砕や沖縄の集団自決にも。→美化せずそれを打ち破る論理を構築するには?

三種の神器(皇位継承を象徴)はどこへ? 鏡は伊勢神宮、刀は熱田神社、玉は皇居にあるのが本物。皇位継承時に用いるのは言わばレプリカ。→レプリカの刀が海中へ。レプリカの玉と鏡は回収し4月25日に宮城に帰った、とある。

 

5        ラスト 灌頂の巻 大原御幸

行幸(ぎょうこう)、御幸(ごこう)の意味・・もとは行幸で天皇、上皇のお出まし。後に分化。天皇は行幸、上皇・女院は御幸。皇后や皇太子などは行啓。

・本文を読んでから、大原の寂光院に行ってみよう。

・死後の菩提を弔うとは? 親鸞は追善供養はしない、と述べた(『歎異抄』)。見方によっては、先祖の追善供養で武士団が結集する事への批判かも。

・自然科学の言葉で言えば、死後の世界については、存在するかしないかは、検証できない。(「信じるも信じないも、あなた次第です」となる。)→矢作(やはぎ)直樹『人は死なない』、キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』

 

6        発展的議論

全滅戦争の恐怖 平家はほぼ皆殺し、源氏も結局絶えることに

・なぜそうなるのか?(貴種だから?) そもそもなぜ源平戦争をしたのか? 話し合いで解決するには?

・足利時代(混乱)、徳川時代(200年間平和)明治以降78年(絶えず戦争)戦後これまで約80年(平和)・・・平安末から昭和20年まで軍事政権だった、とも言えるが、相対的に文治が強かったのが江戸期。

戦後世代の「戦争責任」とは? (戦争をする責任ではなく)過去の戦争を知り、現在の戦争を知り(どう止めるか?)、未来の戦争を防止する責任。

・武士道、武道論・・日本は「武士道」の国か? 「武士道」とはそもそも何?

矢内原忠雄『武士道』山本定朝『葉隠』、そして『平家物語』は必須テキスト。

 

   「武道」と統一したのは大正期の大日本武徳会

 

   井原西鶴にも『武道伝来記』『武家義理物語』『男色大鏡』があるが・・

 

(参考)R6.10.31(木)朝日新聞に、武道はスポーツか? の記事があり、内田樹「武道の目的とは「天下無敵」という無限消失点をめざす行いです。他人と競うものでもないし、誰かに査定されるものでもない。」「『瞑想世界一』と『我執を去るコンテストで金メダル』とかいう文字列が無意味だということは誰でもわかるはずです。」と言っている。→武道の精神性を追求(追究?)すれば、当然そうなるはずだ。大会で勝った負けたと騒いでいるのでは、まだまだだ、ということだ。

 

10月26日はできなかったので、11月23日(土)に延期。