James Setouchi
2024.10.1
武士道・武道を考えるための基礎知識 2019.12
*とりあえずこれらから入ることができる。
(1)『今昔物語集』平安期の源頼信(河内源氏。頼朝の祖先)なども出てくる。
(2)『平家物語』作者未詳。平家の全盛から全滅まで。→読書会のページへ。
(3)『甲陽軍艦』武田信玄に仕えた高坂弾正らの記録を、江戸時代の小幡景憲が書き改めたとされる。「武士の道」という言葉が出てくる。個別の合戦などの歴史の叙述のほかに、武将のあり方などについて考察している。鈍過ぎる大将の例として今川家の側近たち、利根の過ぎた大将の例は武田太郎義信(信玄の子)、弱すぎる大将の例は上杉憲政(関東管領家)、強すぎる大将の例は武田勝頼(信玄の後継者)を挙げている。
(4)『三河物語』家康に仕えた大久保彦左衛門の家訓。合戦の連続で食傷するが、当時はこんなことをしていたとよくわかる。→二人は衆道(男色)だったのか? 織田信長と森蘭丸も? →井原西鶴『男色大鑑』のページへ。
(5)『葉隠』は「死ぬことと見つけたり」「忍ぶ恋」を言う。打算なく遮二無二突入する美学だ。(危険思想だが、昭和の軍国主義時代にしきりに読まれた。)三島由紀夫は『葉隠入門』を書いて自らは市ヶ谷に突入した。
(6)『五輪書』の宮本武蔵は剣聖のように扱われているが、実際には自分より強い相手とは戦わず卑怯な手も使って勝っては有名になろうとした。『五輪書』のあらかたは勝負の勝ち方だ。→坂口安吾『青春論』
(7)『忠臣蔵』の赤穂浪士は結果を出すために計画を立てた(和辻哲郎)。
(8)山鹿素行は儒教化した君子としての士道で、統治者としてまた人間として立派であることを要求する。『山鹿語類』
(9)キリシタンの宣教師の神に忠誠を尽くす生き方が、武士の忠義に影響を与えた(古川愛哲)。→古川愛哲のページへ。
(10)勝小吉『夢酔独言(むすいどくげん)』は幕末の快男児の生き方。
(11)明治武士道のうち、政府御用達の軍人勅諭。
(12)新渡戸稲造『Bushido』は江戸の士道を継承し「義」を重視する、精神性の高い倫理。ラストに「武士道は滅ぶ、香気はただようが」「人間は、闘争本能よりも深いところに愛の本能がある」とある。
(13)内村鑑三『The Representative Men of Japan』の第1章は西郷隆盛で、「最後のサムライ」と書いてある。→『代表的日本人』のページへ
(14)乃木殉死を巡り、漱石は『こころ』、鴎外は『興津弥五右衛門の遺書』『阿部一族』、芥川は『殉死』を書いた。→漱石のページへ。
(15)カミカゼと自爆テロはどう同じでどう違うか? フランス語では自爆テロのことを「kamikazé」と呼ぶ!
(16)グローバル資本主義の波に対抗して藤原正彦(数学者)は『国家の品格』の中で新渡戸的な武士道を提唱し、一時ブームになった。だが、果たしてどうか?→藤原正彦のページへ
(17)学校教育において武道必修化したが、内田樹(たつる)=合気道の達人でフランス現代思想の研究者=は怒っている。明治以降の「武道」は明治以前の武術は断絶があり、武術の神髄とも言える魂の修行の部分をそぎ落としている、と。
(18)大日本武徳会は、日清戦争のころ組織され、大正時代に「武術」を「武道」と改称し、大日本帝国の軍国主義の推進母体となった。(つまり「武道は日本の伝統」と言うのは厳密には誤りで、明治以降の帝国主義日本の産物だ。そこで身体を鍛え国家のために忠誠を尽くして死ねる国民を育てようとしたのだ。)(軍人が植芝盛平に合気道を教えてくれと依頼しに来たとき、植芝盛平は「それは日本人みなを鬼にするということじゃ」と怒って拒否した(内田樹)。)だから大日本武徳会・武道をGHQが禁止した。(少林寺拳法は踊る宗教として認可された。戦後国家神道を解体し信教の自由を推進していたから。)武道は戦後しばらくして復活し、平成に学校教育で必修化したが?
(19)アメリカンスポーツであるベースボールも、気が付くと心身を練磨し敢闘精神を養いお国のために役立てる武士道野球道に変容した。戦中はそれも禁止したが、戦後早くアメリカンスポーツとして復活したのはなぜか。戦後しばらくするとまた武士道野球道に戻るのはなぜか。野球部は丸刈だったのはなぜか。現状はどうか。「サムライジャパン」などと言いたがるのはどういうわけか。そもそもサムライとは何か?
(20)山岡鉄舟(剣禅一如)に学んだ小倉鉄樹(小倉遊亀の夫。小倉遊亀は日本画家)の開いた神道禊(みそぎ)教と呼吸法と禅宗と武術とを足したような道場で学んだ一人の学生(東大工学部、いや工部大学校か)が東大ボート部にその思想を持ち込んだ。エリート(帝大、旧制高校、旧制中学)のスポーツとしてボート競技が広がり、「これこの漕艇は生死脱得の修行にして…喪身失命を避けず…いたづらに右顧左眄せず…一漕一漕吐血の思いをして漕破すべし」といった文言と思想が全国に広がった。これはまことにすばらしいと考えるか、危険思想と考えるか? →『スポーツとは何か』『近代スポーツの誕生』なども参照。
読んでみよう→菅野覚明『武士道の逆襲』、本郷和人『なぜ武士は生まれたのか』、新渡戸稲造『武士道』、内村鑑三『代表的日本人』、小池嘉明『葉隠』、相良亨『武士道』『武士の思想』、『今昔物語集』『平家物語』『五輪書』『葉隠』『甲陽軍鑑』『三河物語』『軍人勅諭』『国体の本義』『終戦の詔勅』、坂口安吾『堕落論』、高橋英樹・植芝盛平『武産合気(たけむすあいき)』、内田樹『修行論』