James Setouchi
2024.9.19
丸谷才一の本の紹介
私は十代~二十代で丸谷さんの本を読み面白かった。
1 丸谷才一1925(大正14)~2012(平成24)
山形県鶴岡の生まれ。旧制高校在学中に兵隊にとられたことも。東京大学英文科に学ぶ。英語教師・大学教師をしながら小説を書き、また翻訳をする。1960年『エホバの顔を避けて』を刊行。1964年ジョイスの『ユリシーズ』を翻訳(共訳)。1966年『笹まくら』を刊行。1968年『年の残り』で芥川賞。1974年『横しぐれ』、1982年『裏声で歌へ君が代』、1993年『女ざかり』。批評として『後鳥羽院』『忠臣蔵とは何か』など。エッセイ『男のポケット』など。『文章読本』『桜もさよならも日本語』もある。彼はあるときから歴史的仮名遣いで文章を書いている。2011年秋文化勲章。
私小説風ではなく、「通常の市民の精神風俗・生活風俗の重視という、近代小説の本質への行きとどいた理解と、新しい理論・方法の実践に支えられた長編小説」に特徴がある。ユーモアもあり、おしゃれであるが、人間や社会への洞察もきちんとある。(明治書院の『日本現代文学大事典』などを参考にした。)
上野の美術館に行ったとき、雨の日の平日の午前ですいていたのだが、丸谷才一その人がいて、私は大変嬉しかった。
2 作品をいくつか
『エホバの顔を避けて』
旧約聖書のヨナ書に材を取る。ヨナは預言者。大いなる都ニネベに行って悔い改めを迫るよう神から召命を受ける。ヨナは恐れ逃亡するが大魚に飲まれ結局はニネベの町へ。大いなる都ニネベは果たして悔い改めるのか? ヨナはどうなるのか? これは面白かった。
大いなる都ニネベは現代の巨大都市・東京に重なる。
『笹まくら』
平凡な大学職員。しかし彼は戦時中に徴兵忌避者として逃亡生活を行っていた過去があった。5年間の逃避行。砂絵屋に身をやつし、名を変え、愛人とともに全国を流浪した。その過去が現在に交錯する。なお、丸谷才一は兵隊にとられたことがある。「徴兵忌避者としての夏目漱石」という論文もある。
『横しぐれ』
酒飲みの乞食坊主は種田山頭火だったのか?
『男のポケット』
エッセイ。おしゃれでユーモアに満ちている。もっとも、最近のフェミニズムから見ると突っ込みどころが満載かも知れない。
『裏声で歌へ君が代』
『文章読本』『桜もさよならも日本語』
文章読本。