James Setouchi
2024.9.19
医療・看護系
大野更紗『困ってるひと』 ポプラ文庫 2012年6月
1 著者 大野更紗(さらさ)
1984年福島生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒。大学院休学中。ビルマ(ミャンマー)の民主運動や民主化に関心を持ち研究、NGO活動にも熱中。が、2008年、
自己免疫疾患系の難病を発病。1年間の検査機関、9か月間の入院治療を経て退院するまでを本書でつづる。(本のカバーから。)
2 内容
はじめに 絶望は、しない わたし、難病女子
第1章 わたし、何の難病? 難民研究女子、医療難民となる
第2章 わたし、ビルマ女子 ムーミン少女、激戦地のムーミン谷へ
第3章 わたし、入院する 医療難民、オアシスへ辿り着く
第4章 わたし、壊れる 難病女子、生き検査地獄へ落ちる
第5章 わたし、絶叫する 難病女子、この世の、最果てへ
第6章 わたし、瀕死です うら若き女子、ご危篤となる
第7章 わたし、シバかれる 難病ビギナー、大難病リーグ養成ギブス学校入学
第8章 わたし、死にたい 「難」の「当事者」となる
第9章 わたし、流出する おしり大虐事件
第10章 わたし、溺れる 「制度」のマリアナ海溝へ
第11章 わたし、マジ難民 難民研究女子、「援助」のワナにはまる
第12章 わたし、生きたい(かも) 難病のソナタ
第13章 わたし、引っ越す 難病史上最大の作戦
第14章 わたし、書類です 難病難民女子、ペーパー移住する
第15章 わたし、家出する 難民、シャバに出る
第16章 わたし、はじまる 難病女子の、バースデイ
あとがき
3 コメント
上記目次の通り、彼女は大変な状況に陥っている。が、なぜかユーモアがある。そう、かの正岡子規と同様だ。自分が重い病気で大変な状況であるにもかかわらず、それを余裕を持って見つめ、笑い飛ばす。
まれな難病に対して日本の医療・福祉制度に不十分な面もあるとわかった。他方、真剣に治療してくれようとする医師たちも存在する。
ディープな、そして偉大なる世界がここにはある。
それにしても痛い。読んでいて痛さが伝わってくるような描写だ。「ぎゃああああああああいた―い―いたい―――――――」と彼女は絶叫する。ぜひご一読を。 H25.1
(医学・薬学・看護)中村哲・澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』、蛯名賢造『石館守三伝』、北篤『正伝 野口英世』、岩村昇『ネパールの碧い空』、フランクル『夜と霧』『それでも人生にイエスと言う』、河原理子『フランクル『夜と霧』への旅』、神谷美恵子『生きがいについて』、永井隆『長崎の鐘』、加藤周一『羊の歌』、森鴎外『ヰタ・セクスアリス』『渋江抽斎』、北杜夫『どくとるマンボウ航海記』『楡家の人びと』、吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘』、渡辺淳一『花埋み』、シュバイツアー『水と原生林のはざまで』、クローニン『人生の途上にて』、大野更紗『困ってる人』、鎌田實『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』『病院なんか嫌いだ』、養老孟司『解剖学教室へようこそ』、山本保博『救急医、世界の災害現場へ』、増田れい子『看護 ベッドサイドの光景』、髙谷清『重い障害を生きるということ』、加賀乙彦『不幸の国の幸福論』『加賀乙彦自伝』、井口民樹『愚徹の人 丸山千里』、岡田尊司『パーソナリティ障害』、磯部潮『発達障害かもしれない』、堤未果『沈みゆく大国アメリカ』、馬場錬成『大村智 2億人を病魔から守った化学者』、河合蘭『出生前診断』、坂井律子『いのちを選ぶ社会 出生前診断のいま』『<いのち>とがん』、大塚敦子『犬が来る病院』、NHK取材班 望月健『ユマニチュード 認知症ケア棹前線』、小原信『ホスピス』、山崎章郎『続病院で死ぬということ』、日野原重明『生きていくあなたへ』、森昭『歯はみがいてはいけない』