安倍内閣閣僚の学歴(H26.12とH27.10)

 

*公表されているご本人のHPや新聞報道などからまとめた。

 

 人間の値打ちが学歴や学校歴にないのは当たり前だ。(神仏の前には人間は一列平等だ。)だが、日本は学歴社会と言われるので、どれくらいそうなのか? を、閣僚(日本を大きく左右します)の学歴を通して、定点観測している。

 その結果、学歴社会ではあるが、それ以上に階層の固定化が進んでいる(2世3世の大臣が多い、首相の子や孫が首相など)ことがわかった。他にもいくつかのことがわかった。

 

H26.12(2014.12)

第3次安倍内閣 閣僚の学歴(9月の第2次改造内閣とほぼ同じだが、少し違う。*印が9月とはちがう人。なお、下線は女性。)

 

安倍総理:成蹊・法(岸首相の孫、安倍外相の子

麻生副総理:学習院・政経(吉田首相の孫

高市総務:神戸・経営→松下政経塾→米国連邦議会勤務

上川法務:東京・教養(国際関係論)→三菱総研→ハーバード院(政治行政学)→上院議員政策スタッフ

岸田外務:早稲田・法

下村文科:早稲田・教育

塩崎厚労:東大・教養(アメリカ科)→ハーバード院(行政学)

西川農水:東京農工院

*宮沢経済産業:東京・法→大蔵省→ハーバード院(行政学)宮沢首相のおい

太田国土交通:京都(工)院

望月環境:中央・法

*中谷防衛:防衛大(理工)→陸上自衛隊→国会議員秘書

菅官房長官:法政・法

竹下復興:慶応・経済(竹下首相の弟

山谷国家公安:聖心女子・文→出版社勤務→サンケイ新聞

山口沖縄・北方:青学・文→パリ第4大中退

有村女性活躍:東郷平八郎の子孫。ICU→米SIT院→日本マクドナルド勤務→青学院中退

甘利経済再生:慶応・法

石破地方創生:慶応・法

 

[1]以上を集計すると前19人のうち

(1)大学別なら

東大3(教養2、法1)、慶応3(法2、経1)、早稲田2(法1、教育1)

青学1、成蹊1、学習院1、神戸1、東京農工1、京都1、中央1、防衛1、法政1、聖心女子1、ICU1

 

(2)学部別なら

法7、教養3(ICU含む)、文2、経済1、政経1、経営1、教育1、工1、農1(西川氏は書いてなかったが恐らく農)、理工1(防衛大をこれにカウント)

(3)文系か理系かなら

文系16、理系3

(4)国立か私立かなら

国立4(東京3、東京農工1、京都1、神戸1)、私立大14、防衛大学校1

(5)東京エリアか地方かなら

東京エリア15、地方(神戸・京都のみ)2

 

(6)大卒か院かなら

大卒13、院6(しかも外国4・・・留学先はアメリカが多い。これは何を意味するのか

 

*日本はアメリカなどに比べ「低学歴社会」と言われた。閣僚もそうだが大蔵省官僚などの文系エリートがほとんど大卒で、院に行っていないからだ。(アメリカの閣僚は修士号以上が普通。)90年代だったか、文部科学省は無理矢理に近いやり方で(予算で脅して)日本の高学歴化(修士修了者を文系でも増やす)を推進、現場の大学は混乱した。

ハーバード大は国立ではない。私立だ。アメリカのエリート養成大は、歴史上のいきさつもあり、私立がほとんど。(プリンストンもエールもそうだ。調べてみるといい。)当然資本家の意向が働く。資本主義の問題点を指摘するマルクス主義・社会主義の研究などは浮上しにくい、という構造がある。日本からアメリカに留学しても構わないが、アメリカ一辺倒なのはどうか。ヨーロッパにもすぐれた叡智がある。他の国はどうか。

*リーダーたちがアメリカ一辺倒で、もし、「安保法制」もあって、安保のせいで日本がアメリカの戦争に巻き込まれて人が大勢死に焼け野原になることがあったら、そもそも吉田茂大先生が始めた安保が間違っていた、小泉さんと安倍さんが歪めた、あの辺ですっかりおかしくなった、と言う日が来るのだろうか・・・? 恐ろしいことだ。(2024.9)

 

(7)二世・三世かどうか

国会議員の子・孫・弟など8人(特にもと首相の子・孫・弟・甥が4人)、県会議員の子1人、その他10人。(見落としがあるかもしれない。)

(8)女性は4人。

すべて大変なキャリアの持ち主である…普通の女性が報われる日がくるべきだが・・・

 

[2]このことから感じること:

 階層は固定化している。国会議員の子孫が国会議員になり大臣になる。東京の私大を卒業している。田舎の下流化する普通クラスの家庭で、子どもを東京の私大にやれる家庭がどれほどあろうか? 安倍総理は選挙区は山口にあっても東京育ち。麻生副総理も選挙区は福岡だが福岡にいたのは幼い時だけ。石破氏も鳥取にいたのは中3までで高校から慶応高校へ。これで貧しい人の(特に地方の貧しい人の)生活感覚が分かるのであろうか? では、どうすればいいのか?

 

 

 

 

 

H27.10(2015.10)

安倍内閣(平成27年10月7日認証)閣僚の学歴 昨年12月の改造内閣から9閣僚留任

*印が12月と同じ人(交代していない人)。なお、下線は女性。)

 

 日本の高度な意思決定に重要な役割を占める閣僚について、学歴との相関があるかないかを調べる。データは公表されている本人のプロフィール等から。

 

*安倍総理:成蹊・法(岸首相の孫、安倍外相の子

*麻生副総理財務金融:学習院・政経(吉田首相の孫

*高市総務:神戸・経営→松下政経塾→米国連邦議会勤務

岩城法務:上智・法 いわき市議・県議・いわき市長

*岸田外務:早稲田・法(祖父も父も国会議員

馳文科教育再生:専修・文(国文) 国語教師・プロレスラー

*塩崎厚労:東大・教養(アメリカ科)→ハーバード院(行政学)→日銀(父は大臣

森山農水: (苦学して高校夜間部に)市議

林経済産業産業競争力:日本・芸術(文芸) (父は大臣

石井国土交通:東大・工 公明党 建設官僚

丸川環境原子力防災:東大・経済 テレビ朝日アナウンサー (夫も議員

*中谷防衛:防衛大(理工)→陸上自衛隊→国会議員秘書

*菅官房長官:法政・法

高木復興原発事故再生:青学・法 (父は県議・市長)

河野国家公安行政改革防災:慶応・経済に一時居たがジョージタウン大(比較政治学)(祖父・父は大臣・議長

島尻沖縄・北方科学技術宇宙:上智・文(新聞) 那覇市議

*甘利経済再生経済財政:慶応・法

加藤1億総活躍女性活躍拉致:東大・経済 大蔵官僚(義父が大臣

*石破地方創生:慶応・法

*遠藤五輪:中央・法 県議

 

[1]以上を集計すると全20人のうち大卒は19人で非大卒が1人。

 

(1)大学別なら:東大4(教養1、経済2、工1)、慶応2(法2)、上智2(法1、文1)、早稲田1(法1)、青学1(法1)、成蹊1(法1)、学習院1(政経1)、専修1(文1)、日本1(芸術1)、神戸1(経営1)、中央1(法1)、防衛1(理工1)、法政1(法1)、ジョージタウン1(比較政治)、非大卒1

 

(2)学部別なら:法8、文2、経済2、政経2(ジョージタウンもこれにカウント)、経営1、教養1、芸術1、工1、理工1(防衛大をこれにカウント)

(3)文系か理系かなら:文系17、理系2

(4)国立か私立かなら:国立5(東京4、神戸1)、私立大13、防衛大学校1)

(5)東京エリアの大学かどうか(塩崎氏を2にカウント):東京エリア17、地方(神戸のみ)1、海外2

(6)大卒か院修了かなら:大卒18、院1(外国1)

(7)二世・三世かどうか:国会議員の子・孫・娘婿・妻など8人 ( 特に、もと首相の孫が2人。首相と副首相がそうだ)、地方議員の子1人、その他11人。(見落としがあるかもしれない。)

(8)女性は3人。

 

[2]このことから感じること:

(1)ほとんど大卒。昔は田中角栄はじめ大物政治家で非大卒の人がもっといた。世代が若くなって大学進学率が高くなったのもあるが。ただしまだ院が少ない。アメリカなどは大臣クラスは院を出ている人がほとんど。→のち院が増えた。(2024.9記)

(2)ほとんどが東京の私大。昔は東大がもっと多く(宮沢喜一氏を見よ)、地方大も少しはいた。今は首相もここ20年細川首相以来少数の例外(鳩山東大、菅東工大)を除き東京の私大。村山富市氏は明大専門部(政経)と書いてあった。社会党だと労組票で高卒でも非大卒でも議員になれた。

(3)階層は固定化している。国会議員の子孫が国会議員になり大臣になる。

(4)法・経系統の人が圧倒的に多い。理系は少ない。農林大臣だから農学部、建設大臣だから工学部、というわけにいかないのは、国全体を背負うので、技術しかわからない人では不可、ということだろう。では、スポーツ選手やタレント出身は、もっと不可なのでは?

(5)アメリカにいた人が複数いる。このことは何を意味するのか?

(6)まだまだ男社会。

 

東京一極集中で階層は固定化。安倍総理は選挙区は山口にあっても東京育ち。麻生副総理も選挙区は福岡だが福岡にいたのは幼い時だけ。石破氏も鳥取にいたのは中3までで高校から慶応高校へ。田舎の下流化する普通クラスの家庭で、子どもを東京の私大にやれる家庭がどれほどあろうか?地方から東京の私大へ行ける家庭の資産とは? これで貧しい人の(特に地方の貧しい人の)生活感覚が分かるのであろうか? では、どうすればいいのか?

 

 

付言

 『「憲法改正」の真実』(樋口陽一、小林節)(集英社新書、2016)によれば、2006年に憲法審査会の調査特別委員会で高市早苗議員(上の表では2015年ころには安倍内閣の総務大臣だ)は小林節氏(法学博士、慶応の名誉教授)に対し自信満々で間違いだらけの主張をした、彼女(高市早苗議員)は「憲法学の知識が欠落している」、「自民党の憲法観の間違いが、ここににじみ出ている」(p.25~p.27)とある。そういう人が得々と「憲法改正」を言い靖国参拝を言うとは。非常に困った事態だ。彼女は神戸大経営学部と松下政経塾とアメリカ連邦議会の仕事で一体何を勉強してきたのだろうか? アメリカ流の回転ドア人事(堤未果の本をお読み下さい)で民から搾取する方法を学んで帰ったのだろうか? その後勉強して考えを改めてくれただろうか? 有権者はなぜそんな人を選ぶのだろうか? 有権者もエゴイストなのだろうか? 有権者も勉強不足で、知らないのだろうか? ヒトラーは憲法を無効化して暴走した。日本はそうなってはいけない。

 

  靖国神社は日本古来の伝統でも何でもなく、明治以降に作った(もとは長州の大村益次郎が作った東京招魂社)、国民を兵士として戦場に連れ出すための装置でしかない。近代国家主義の産物だ。御所に大砲を撃ち込んだ久坂玄瑞(くさかげんずい)をまつり、勤王の志あつく命を賭けた会津の人はまつってもらえない。恣意的(しいてき)で、国民を分断する装置だ、との批判もある(右翼の大先生が言っている)。

 どうして靖国参拝をするのか? もう一度国民を戦場につれていこうとしているのだろう? 誰の利益のために? 

 鎮魂慰霊は別の形で、敵味方の区別なくやるといい。戦争というシステムがいけないのであって、死んでいった兵士は敵味方なくみな犠牲者なのだ。

 

 また、自分が選挙で通るために、統一教会の力を借りる。統一教会は、信者からカネを巻き上げ韓国に宮殿のような本部を作った。陰陽説によって、韓国が陽、日本が陰、日本は韓国に尽くすべき、日本人は韓国の教会にどんどん寄付すべき、という奇妙な宗教だ。末端の信者は純粋ないい人が多いのだろうと思うが、その純粋ないい人から金を巻き上げ、あるいは彼や彼女を集金マシーンに変えてしまう。信教の自由は当然あるべきだが、人をロボットにして反社会的行為に駆り立てる(毒ガスを撒かせるとか、集金マシーンに仕立てるとか)宗教団体は、お薦めできない。でもそういうところと、安倍さんたちはくっついていた。岸信介安倍さんの祖父)の家の隣に統一教会本部があった、と報道でやっていた。R6.9.17,18の朝日新聞には安倍さんほかと統一教会のエライ人が並んだ写真が載っている。騙されてはならない。

 

 今こういう人たちのもとで「憲法改正」をしてはいけない。どこへ連れていかれるかワカラナイ。誰の利益になるのだろうか? 武器産業で稼ぐ資本家の正体は、どこの国の人? 

 

 ああ、アメリカには、キノコ雲を校章や町章にしている町がある。核兵器産業で潤っているのだ。ロビイストをワシントンに送り込みもっと核兵器を作ろう、と政策立案させる。技術者・労働者は核兵器工場で高給を貰う。核兵器のお蔭で平和が来たと思い込んでいる。アメリカだけではあるまい。軍産複合体ができるとそうなるのだ。その犠牲になるのは、ウクライナであり、あるいは、・・・?

 

 私は一方では尊敬できるアメリカ人の良識を信頼している面があるのだが、武器産業が主導してアジア人に戦争をさせようとしているとしたら、これは困る。

 

 その下請けを日本の自民党のリーダーたちがしようとしているとすれば? 税金を高くして防衛費と称してアメリカから武器を言い値で(高額で)買うとすれば? 憲法を変えて国民から搾り取ってどんどん戦争をして武器産業に儲けさせようとしているとすれば? 武器があれば安全だと言うのなら、自民党リーダー(今の候補者たち。麻生さんも)のご自宅にトマホークの発射基地を置いたらどうですか? だが、そうするとそこが狙われて危険だと知っているから、彼らは自宅にトマホークの発射基地を置くことはしない。

 

 (自衛隊でなく軍隊、装備品でなく兵器、護衛艦でなく軍艦、と言い出したら、歯止めが効かなくなる。軍隊・兵器・軍艦でなく自衛隊・装備品・護衛艦と言うことで、辛うじて歯止めがかかる。名前(概念)は大事なのだ。)

 

 もしイザ戦争だとなったら、高市さんはじめ今の(R6年9月の)総裁選候補者のみなさんは(麻生さんも含めてもいいですよ)、一兵卒となって最前線に立って何年も何ヶ月も苦労する覚悟があるのだろうか? 自分が行く気がなく人に行かせるつもりの人ほどたやすく戦争だ戦争だと言うのではないか? 野中先生後藤田先生が聞いたら激怒するでしょうな。吉田茂大先生なら・・・当然「バカヤロー!」の一喝でしょう。

 

 昔、漢委奴国王なる者(地方政権だと言われているが)が後漢王朝に何を贈ったのか知らないが金印を授かり、その50年後には倭国王帥升等なる者が後漢王朝に生口(奴婢か?)160人を贈った(諸説あり)という。超大国の権威を借りて威張り自分の権益のために国民・国富を売り飛ばす。そういうリーダーはリーダーとは言えない。

 孟子が聞いたら激怒するだろう。吉田松陰はじめ尊皇攘夷派が聞いたら、何が起こるかわからない。くわばらくわばら。

 

                

 孔子は、高弟の子貢に政治について問われたとき、「食糧(経済力)よりも兵力(軍事力)よりも大切なものは、民の信(民の、為政者への信頼。あるいは、民相互の信頼)である」と言った。(『論語』第12、顔淵編、7)

 今日、民の為政者への信頼(盲信・狂信ではない)、あるいは、民相互の信頼は、どれほどあるのであろうか? それを回復するには、どうすればいいのであろうか?

 

                              2024.9.18

 

適菜 収『自民党の大罪』祥伝社新書、2024

堤 未果『ルポ 貧困大国アメリカ』シリーズ 岩波新書

樋口陽一、小林節『「憲法改正」の真実』集英社新書、2016

宮沢喜一『21世紀への委任状』小学館

西部邁(すすむ)『保守の遺言』平凡社新書

 

レマルク『西部戦線異状なし』・・第1次大戦、仏独国境

ノーマン・メイラー『裸者と死者』・・第2次大戦、太平洋の島

M・ミッチェル『風とともに去りぬ』・・南北戦争

サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』・・サリンジャーは戦争(第2次大戦)のトラウマを抱えている。

大岡昇平『野火(のび)』・・第2次大戦、フィリピン戦線

曽野綾子『生贄(いけにえ)の島』・・第2次大戦、オキナワ

安岡章太郎『遁走(とんそう)』・・第2次大戦、中国大陸

 

東京新聞社会部『武器を買わされる日本』文春新書

鴻上尚史『不死身の特攻兵』講談社現代新書

松竹伸行『憲法九条の軍事戦略』平凡社新書

 

髙橋哲哉『靖国問題』ちくま新書

村上重良『国家神道』岩波新書

井上寛司『「神道」の虚像と実像』講談社現代新書、2011

稲垣久和・編『神の国と世界の回復』教文館、2018

島薗進他『徹底討論! 問われる宗教とカルト』NHK出版新書、2023

 

水野広徳『打開か破滅か 興亡の此の一戦』・・水野は海軍軍人。日米戦を予言し警告。