James Setouchi

2024.9.16

 

  森 昭『歯はみがいてはいけない』2016年 講談社+α新書

                                       

1 著者:森 昭(もりあきら)1964~ 歯科医。1964年京都府生まれ。竹屋町森歯科クリニック院長。歯科医師臨床研修指導歯科医。メディカル&デンタルエステ(MDE)協会設立者。著書阿『体の不調は「唾液」を増やして解消する』ほか。

 

2 目次:はじめに/第1章 健康長寿は「口内フローラ」で決まる/第2章 「歯みがき」の間違いが全身病をつくる/第3章 ある歯科医の告白/第4章 寝たきりにならないための歯科医からの大胆な提案/おわりに

 

3 コメント:ある人がこの本を紹介してくれたので読んだ。深く納得するところが私にはあったので紹介する。

 

 虫歯や歯周病は怖い。全身の病を引き起こす可能性があるとは従来言われている通りだろう。では、どうすればいいのか? 予防が大事だ。では、歯磨きを熱心にすればいいのか? 日本では長年そう信じられてきた。ところが、これは日本(と韓国)だけの言わばガラパゴス的な発想であって、世界の先進国ではそうではない。歯磨きの仕方が間違っていたのだ。「食後にすぐ歯磨き粉をたっぷりつけて歯磨きをする」というのは誤りで、食後は唾液(唾)をたっぷり出して、傷んだ歯を修復するのがよい(人類史上600万年の修復機能が人体には備わっている)、寝る前と朝口内をきれいにすればよい、歯磨き粉はつけない、歯ブラシではなくデンタルフロス(糸ようじなど)でプラーク(歯垢)を取るのがよい、3カ月に1回歯科衛生士に口内の検査をしてもらうとよい、などと書いてある。 

 

 みなさんはどう考えますか? 以下に、気になったコメントをいくつか紹介する。 

 

怖いのはデンタルプラーク(歯垢)。細菌がうようよいる。これが体内に入ると全身病を引き起こす。歯周病を治せば動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、脂肪肝、アルツハイマー、認知症なども改善する。(22~35頁)

 

・歯のない赤ちゃんは四足歩行、歯が生えると三足、大人は二足歩行。歯が抜けると杖を突き足、最後は寝たきりの四足歩行となる。歯と足で人間は体のバランスを取っている。(35~39頁)

 

歯周内科療法というものがある。だが当面プラークコントロールを自分でして免疫力で歯周病を治すのがよい。(40~41頁)

 

・歯周病は母と子、ペットと主人の間でも感染する。流産や死産とも関係がありそうだ。受動喫煙も歯周病を引き起こす。日本人の口臭は世界一強烈と言われる。その原因は食後の歯磨きだろう。口臭を予防するのは唾液であって、食後の歯磨きはその唾

液を口外に吐き出してしまう。(43~51頁)

 

従来日本人が行ってきた食後の歯磨きは、食べかすをとるものでしかない。そうではなく、プラークコントロールこそが大事だ。唾液はプラークをコントロールしてくれる。夜中にプラークはできる。ゆえに寝る寸前と起床してすぐにプラークコントロ

ールをするべきだ。食後は歯間ブラシまたはデンタルフロスと舌回しがよい。(54~68頁)

 

口呼吸は唾液を乾燥させ雑菌を体内に導入し、また扁桃をいたませ免疫反応を狂わせる。早食い、控えめで猫背の姿勢なども口呼吸の原因。「あいうべ体操」をしよう。口を閉じると上下の歯が閉じていないか?閉じる人はTCHといって緊張しすぎていて体に悪い。(69~78頁)

 

・一部の歯磨き粉に含まれる人口界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)は百害あって一利なし。歯の表面は白いが、磨くとそこが薄くなり、その下の象牙質が出てきて、歯は黄色くなる。粒粒入り歯磨き剤はプラークの巣になる。歯磨き剤を使うなら、虫歯予防、歯周病予防、口臭予防、歯を白くしたいなど、目的によって使うものを変えないといけない。(84~92頁)

 

キシリトール製品がすべていいわけではない。(120~123頁)スポーツ飲料は糖質が高すぎ、薄めると電解質濃度も薄まってしまう。(123~129頁)

 

・歯科は虫歯を治療する場所ではなく、健康寿命を延ばす場所にチェンジすべきだ。アメリカでは歯科医や歯科衛生士が人気の職業だ。(132~133頁)

 

・日本は口内の歯周病、ひいては成人病を放置し、寝たきり大国となっている。対して、スウェーデンでは「口腔はすべての健康の原点である」との考え方が浸透しており、国民皆保険制度における予防給付もある。死生観も相まって、寝たきりにならな

い。高齢者を国全体で見守り、家族の負担がほとんどない。(142~151頁)

 

歯科衛生士を口腔のエキスパートにしよう。(152頁)

 

・歯科医院は、歯が悪くなってから治療に行くところだったが、免疫力を上げに行くところ、へと脱皮したい。(165頁)

 

健康寿命を延ばすための7カ条は、①歯磨きは寝る前と起きた直後②デンタルフロスが主、歯ブラシは副③食後は舌回し④口は閉じる⑤歯は閉じない⑥薬は飲まない⑦かかりつけ歯科医師を持つ                 R1.6.30

 

2024。9の付言

 最近は上記の内容も知られてきて、歯の磨き方や口腔ケアについての知識も普及してきた。

 ところで、私は前から疑問なのだが、どうして医学部と歯学部は別の組織なのか。医学部の中に内科と外科、あるいは耳鼻科は同じ学部内の専門としてあるのに、歯科は医学部でなく歯学部にある。なぜか?

 また、知り合いが言うには、アメリカの歯科医と日本の歯科医はありかたが全く違うとか。ここでは省略する。

 

(医学・薬学・看護)中村哲・澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』、蛯名賢造『石館守三伝』、北篤『正伝 野口英世』、岩村昇『ネパールの碧い空』、フランクル『夜と霧』『それでも人生にイエスと言う』、河原理子『フランクル『夜と霧』への旅』、神谷美恵子『生きがいについて』、永井隆『長崎の鐘』、加藤周一『羊の歌』、森鴎外『ヰタ・セクスアリス』『渋江抽斎』、北杜夫『どくとるマンボウ航海記』『楡家の人びと』、吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘』、渡辺淳一『花埋み』、シュバイツアー『水と原生林のはざまで』、クローニン『人生の途上にて』、大野更紗『困ってる人』、鎌田實『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』『病院なんか嫌いだ』、養老孟司『解剖学教室へようこそ』、山本保博『救急医、世界の災害現場へ』、増田れい子『看護 ベッドサイドの光景』、髙谷清『重い障害を生きるということ』、加賀乙彦『不幸の国の幸福論』、井口民樹『愚徹の人 丸山千里』、岡田尊司『パーソナリティ障害』、磯部潮『発達障害かもしれない』、堤未果『沈みゆく大国アメリカ』、馬場錬成『大村智 2億人を病魔から守った化学者』、河合蘭『出生前診断』、坂井律子『いのちを選ぶ社会 出生前診断のいま』、大塚敦子『犬が来る病院』、NHK取材班 望月健『ユマニチュード 認知症ケア棹前線』、小原信『ホスピス』、山崎章郎『続病院で死ぬということ』、日野原重明『生きていくあなたへ』、森昭『歯はみがいてはいけない』