James Setouchi
2024.9.16
帯津良一『ホリスティック医学入門 がん治療に残された無限の可能性』2009年
角川ONEテーマ新書
1 著者:帯津良一 1936年生まれ。帯津三敬病院名誉院長、帯津三敬塾クリニック院長。日本ホリスティック医学協会会長。日本ホメオパシー医学会理事長。東大医学部卒。東洋医学を取り入れたホリスティック医学の確立を目指し、ガンの治療等を行っている。(新書の著者紹介から)
2 目次:第1章 マニュアルが存在しないガン治療/第2章 西洋医学を否定しない代替療法を/医師と患者さんの徹底した〝戦略会議〟を/第4章 もしガンを告知されたとしても/第5章 生老病死を統合する生き方を/あとがき
3 内容からいくつか:
第1章:ロンドンの王立ホメオパシー病院のクローバー先生は、「ガンほどミステリアスなものはない」と言った。だから、どんな治療法をしてもいい。治療現場は迷走しているが、病院で見放されて「ガン難民」になった人にも、「可能性のあることは試しましょう。私も応援しますから」と言いたい。81歳のAさんは胃ガンが進行していたが、丸山ワクチン、漢方薬、サプリを用いて、いい状態が続いている。65歳のBさんは,乳ガンが再発していたが、抗ガン剤をいやがり、気功を一生懸命行っている。74歳のCさんは、抗ガン剤ではなく、ホメオパシー、漢方薬、サプリで治療し、元気で会社を経営している。54歳のDさんは、悪性リンパ腫で深刻な状態だったが、骨髄移植のあと、職場復帰し、ホメオパシー、太極拳、ウォーキングを続けている。
第2章:西洋医学のガン治療は、ガンの病巣だけを相手にしている。しかし、ガンは感染症と違って、原因が特定できない。攻撃するターゲットがはっきりしない。気功(調身、調息、調心)によって自然治癒力を高めることは有効だと感じる。人間の体は生命場からできており、そこにさまざまな臓器が浮かんでいる、というイメージでどうか。白隠禅師の言葉もよい。
第3章:中国には辛育令先生がおり肺外科の権威でありかつ鍼(はり)麻酔の推進者でもある。余命告知はしてはいけない。人間が生きていくうえで希望ほど大切なものはない。ガンはミステリアスであり医師の知識や統計で語れるものではない。70歳代の女性は早期胃ガンだったが、手術を嫌がり、丸山ワクチンと漢方薬で免疫力を上げながらたまに検査をして様子を見るだけにした。するとガンがなくなってしまった。好きな踊りの稽古を一生懸命にしたお蔭だろうか。人はいい場(いい家庭、いい職場、いい医療)に身を置くのがよい。
第4章:ガンを宣告されたら、自分の中の恐怖心や不安を認める。そのあとでこれからどうするかじっくり考えるとよい。小さな事であっても、希望や生きがい、心がときめくことは必ずある。「生命場」のエネルギーを高めるには、
①食事を見直す
②呼吸は吐く息を意識する
③適度な運動をする
④なにかひとつ気功的なものをする
⑤日常の小さなことにも喜びを感じ感動する
⑥エネルギーの高い人と会う
⑦場のいいところに身を置く
⑧ふるさとのエネルギーを感じる
⑨守りの養生から攻めの養生へ
⑩死を想う
第5章:太極拳の楊名時先生は理想的とも言える生き方、死に方をした。間瀬健一さんは、ガンと闘い、代替療法を行ううち、死後の世界・臨死体験に関心を持ち、体調が見る見るうちによくなっていった。39歳の女性は肺ガンだったが子どもを育てハワイに行くといくという生きがいの柱により元気で退院できた。
4 コメント:西洋医学か、東洋医学(ないしいわゆる代替療法)か、の二者択一ではなく、両方を併用している。人間の体を生命の場ととらえ、自然治癒力を高める、というのは、経験的にはまちがっていないような気がする。臓器しか見えない医者は不十分だ。患者の全体像(家族や職場、社会環境なども含め)を見るべきだ。だが、ネット検索すると、帯津氏に対する批判もある。皆さんはどう考えますか? なお、近藤誠の『医者の大罪』とも併読したい。 R1.12.1
(医学・薬学・看護)中村哲・澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』、蛯名賢造『石館守三伝』、北篤『正伝 野口英世』、岩村昇『ネパールの碧い空』、フランクル『夜と霧』『それでも人生にイエスと言う』、河原理子『フランクル『夜と霧』への旅』、神谷美恵子『生きがいについて』、永井隆『長崎の鐘』、加藤周一『羊の歌』、森鴎外『ヰタ・セクスアリス』『渋江抽斎』、北杜夫『どくとるマンボウ航海記』『楡家の人びと』、吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘』、渡辺淳一『花埋み』、シュバイツアー『水と原生林のはざまで』、クローニン『人生の途上にて』、大野更紗『困ってる人』、鎌田實『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』『病院なんか嫌いだ』、養老孟司『解剖学教室へようこそ』、山本保博『救急医、世界の災害現場へ』、増田れい子『看護 ベッドサイドの光景』、髙谷清『重い障害を生きるということ』、加賀乙彦『不幸の国の幸福論』、井口民樹『愚徹の人 丸山千里』、岡田尊司『パーソナリティ障害』、磯部潮『発達障害かもしれない』、堤未果『沈みゆく大国アメリカ』、馬場錬成『大村智 2億人を病魔から守った化学者』、河合蘭『出生前診断』、坂井律子『いのちを選ぶ社会 出生前診断のいま』『<いのち>とがん』、大塚敦子『犬が来る病院』、NHK取材班 望月健『ユマニチュード 認知症ケア棹前線』、小原信『ホスピス』、山崎章郎『続病院で死ぬということ』、日野原重明『生きていくあなたへ』、森昭『歯はみがいてはいけない』、近藤誠『医者の大罪』、帯津良一『ホリスティック医学入門』