James Setouchi

 

東大京大生なら1,2年のうちにこれくらい読んでおこうよ、という読書案内

 

4 政経をあまりやっていない人のための読書案内 

  

志賀 櫻『タックス・ヘイブン』『タックス・イーター』・・志賀さんは大蔵から国

 税トップに行った人。民を思い気骨のある、いい官僚だと私は思う。

斎藤貴男『消費税のカラクリ』

富岡幸雄『税金を払わない巨大企業』『消費税が国を滅ぼす』

大塚信一『宇沢弘文のメッセージ』

宇沢弘文『社会的共通資本』・・宇沢さんは東大経済学部の教授だった。その前はア

 メリカで教えた。その門下からアカロフ、スティグリッツら複数のノーベル賞受賞

 者が出た。すごく尊敬されている先生だ。東大理学部数学科のご出身! ミルト 

 ン・フリードマンを批判、「社会的共通資本」の概念を提唱。

和田秀樹『富裕層が日本をダメにした!』・・和田さんは東大医学部。

榊原英資(えいすけ)『中流崩壊』・・榊原さんは日比谷高校→東大経済学部→大蔵 

 省。「ミスター円」と呼ばれた。

森永卓郎『庶民は知らないデフレの真実』『庶民は知らないアベノリスクの真』・・ 

 森永さんは東大経済学部。

中野剛志『TPP亡国論』

施光恒『英語化は愚民化』・・施さんは九大で政治学。有益

堀内都喜子『フィンランド 豊かさのメソッド』  

内橋克彦『共生の大地』

金子勝『資本主義の克服』・・金子さんは東大経済学部。

アマルティア・セン『貧困の克服』『人間の安全保障』

湯浅誠・茂木健一郎『貧困についてとことん考えてみた』

湯浅誠『反貧困』・・湯浅さんも東大法学部OBですよ。尊敬できる

保坂 渉『子どもの貧困連鎖』    

青砥(あおと)恭『ドキュメント高校中退』・・その後高校の授業料が全員無償化さ

 れた(民主党)。でも所得の高い人からは徴収することになった(自民党)。お蔭

 で学校事務の人が忙殺されることになった、と聞いている。

本田由紀編著『「東大卒」の研究』ちくま新書2025年4月に出た本。東大生必読。

暉峻淑子(てるおかいつこ)『豊かさとは何か』『豊かさの条件』

堤 未夏『ルポ貧困大国アメリカ』『ルポ貧困大国アメリカⅡ』『(株)貧困大国ア 

 メリカ』『政府は必ず嘘をつく』『政府はもう嘘はつけない』『日本が売られ 

 る』:貧困を作り出している者は誰か?

矢作(やはぎ)弘『「都市縮小」の時代』『縮小都市の挑戦』

増田寛也『地方消滅』・・人口問題の出発点になるテクスト。

飯田泰之他『地域再生の失敗学』・・なるほど、と思った。

藻谷浩介他『観光立国の正体』

藻谷浩介他『里山資本主義』   

井上恭介他『里海資本論』

斎藤幸平『人新世の「資本論」』・・マルクスのイメージが変わる。サン・シモンや

 フーリエも。「コモン」の再生を唱えている。

大塚久雄『社会科学における人間』(岩波新書、黄版)

    『社会科学の方法』(岩波新書、青版)

    *大塚先生は東大経済学部の名誉教授。内村鑑三の弟子筋であり、人間的に 

    も尊敬できる方である。

見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書、赤版)見田先生は社会学。今活躍している

 吉見俊哉、大沢真幸らの先生にあたる。こういう普遍的な(ベーシックな)ものを

 読むことはよい。

三浦 展『東京は郊外から消えてゆく!』 

橋本健二『階級都市』・・面白い。かつ、深刻だ。標高15メートルの格差とは・・

佐々木信夫『老いる東京』

河合雅司『未来の年表』 

芹澤健介『コンビニ外国人』

サンジーヴ・スィンハ『インドと日本は最強コンビ』

川上徹也『「コト消費」の嘘』・・経営分野はよく知らない。ごめんなさい。

水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』

池上 彰『世界を動かす巨人たち 政治家編』『世界を動かす巨人たち 経済人

 編』・・トランプは後者に。

NHK取材班『トランプ時代と分断される世界』・・トランプが出てきた頃の本。

エマニエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』・・う~ん・・

高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』   

橋場弦『民主主義の源流』

丸山真男『日本の思想』これは誰でも読んでいると思うので→石田雄『平和の政治学』  イエーリング『権利のための闘争』

髙橋哲哉『沖縄の米軍基地』(なお、沖縄については沖縄の人が沢山ネットにアップ

 していて、勉強になる。ヘノコよりカデナの方が大陸からの電波を受信するには地

 形的に有利、と米兵の人が言っていたが、どうなのだろうか。世界中から軍備も基

 地もなくなるのが一番良いのだが・・?)

孫崎享(うける)『日米同盟の正体』

明石康『国際連合』明石さんは国連で偉くなりましたね。

田中彰『小国主義』

林 信吾『反戦軍事学』・・昔の本だが、武器(装備品)のお値段が書いてある。イ

 ージス艦やオスプレイはハウマッチ? 

松竹伸幸『憲法九条の軍事戦略』

伊勢﨑賢治『日本人は人を殺しに行くのか』・・伊勢崎さんは実際に現地で活躍して

 きた。尊敬できる

柳澤協二『自衛隊の転機』・・柳澤さんは小石川高校→東大法学部→防衛官僚。この

 本で、官僚としての現場にいた人の肉声を読むことができる。「湾岸戦争で日本は

 金は出したが云々」という俗説への反論が書いてあった。

松元雅和『平和主義とは何か』・・有益。

豊下楢彦・古関彰一『集団的自衛権と安全保障』

石破茂『国防』・・有名な石破さんだが、どういうことを考えておられるのか? こ

 の本で読むことができる。

伊藤 真『憲法の力』・・みなさん存じあげていらっしゃいますね。サイトで結構読

 めて、勉強になりますよ。

木村草太『憲法の創造力』

加藤尚武『戦争倫理学』・・加藤さんは哲学の先生。「パール判決」の好きな人は読

 んでみたらいい。 

中島岳志・西部邁(すすむ)『パール判決を問い直す』・・同上。 

西部邁(すすむ)『保守の遺言』・・西部さんは東大教養学部の先生(だった)。

佐藤優(まさる)『私のマルクス』・・自伝。浦和高校→同志社大神学部→外務省。

 高校大学時代の学生運動などについて書いてあり、面白い

田中森一『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』・・自伝。長崎の出身。検事、のち弁

 護士。実に面白い

長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』・・裁判官(判事)のお仕事が多少なりともわか

 る。

 

筒井淳也『結婚と家族のこれから』(光文社新書)・・社会学のデータを使ってい

 る。第4章、高所得者から男女のペアができる(「アソーサティヴ・メイティ 

 ング」)ので、放っておくと世帯間の所得格差が広がる。では、どうするか。課税 

 の 仕方で、世帯の総所得に対して累進課税をすれば格差が解消できる、子どもの

 数も入れて割り算して課税すれば出生促進のインセンティヴになる、等ドイツやフ

 ランスの税制の紹介が、勉強になった。第5章はご本人は熱心に書いておられる

 が、私には(?)であった。

 

五野井郁夫・池田香代子『山上徹也と日本の「失われた30年」』(集英社)・・あ

 の事件ではT教会との関係に焦点が行った(それも大事な視点)が、もう少し視野 

 を広げて見れば1990年代からの「失われた30年」の中で起きた事件だとも言 

 える、とする。就職超氷河期、非正規使い捨て雇用の拡大などを見ると同感だ。更

 に広げると、高額所得者への税の優遇(貧富差を広げる政策)などはもっと前から(確か昭和61年、中曽根内閣?頃から)やっている。(テロは勿論だめだが、)こ

 の30年間(以上)辛い思いで切り捨てられて暮らしてきた人が沢山いて、そこへ

 のケアが政策的に不十分だった(多少の改善の努力もあったが)のは確かだ。五野

 井さんは政治学者。その言やよし。*更に言えば、Y事件ではY容疑者の母親もま

 たつらい人生を送っていたのであり、その居場所がT教会にしかなかった、その結

 果2世であるY容疑者も辛い人生となった。これらに対して、長年、十分なケアが

 為されてこなかった。村上春樹『ポスト・アンダーグラウンド 約束された場所

 で』では、O真理教に入った人(実行犯ではない信者)へのインタビューがなされ

 ている。これも参考になる。*かのA事件のK容疑者は青森県の某有名公立進学校

 の理系だった。理系の方が文系よりもより利権と結びつきより過酷な競争にさらさ

 れるのか? 人々が自暴自棄(孟子)に陥らないですむ社会を作るには、どうすれ

 ばいいのか?

 

野町和嘉『メッカ』  

桜井啓子『シーア派』  

宮田律『現代イスラムの潮流』『イラン』・・すでにやや古くなったかも。

国枝昌樹『イスラム国の正体』・・ISが荒れ狂っているときに読んだ。 

高橋和夫『イスラム国の野望』・・同上。

カーラ・パワー『「コーラン」には本当は何が書かれていたか?』・・有益。

内藤正典『イスラムー癒やしの知恵』集英社新書

*イスラム圏については私は勉強が足りない。ISの暴虐に対し被害に遭った人々

 (イスラム教徒)が「あんたたちはムスリムじゃない!」と泣きながら叫んでい

 た。普通の(大多数の)ムスリムは穏健だ、と、多少でも勉強したり交流したりし

 ていればわかる。「正しい信仰の道を進むために奮闘、努力することをイスラムで

 はジハードという。」「現代の世界では、ジハードというと、過激なムスリムの武

 装組織が異教徒を殲滅するために起こすテロを指すと思われている。しかし、これ

 はまったくの誤りである。」(上記内藤氏、43~44頁)では、過激派は何故過激化

 するのか? それは。政治・経済的な理由が大きいだろう。ヒンズー教徒(ガンジ

 ー暗殺)でも仏教徒(蘇我物部戦争・・釈尊が見たら悲しまれるはず)でも神道(国家神道、太平洋戦争)でも、政治・経済的な理由で過激化したり戦争したりして

 いる。理系の技術者はインドネシアや中東などにも出かけムスリムと出会うだろ

 う。あらかじめ偏見を取り除いておいた方がいいと思うのですが・・?

 

スタインベック『怒りの葡萄(ぶどう)』小説。アメリカ、大恐慌下の農民たち。

フィッツジェラルド『ザ・グレート・ギャツビー』小説。1920年代の、史上かつ 

 てないほど儲かっているアメリカ、NY。スタインベックとセットで読みたい。

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読ん

 だら』小説。

真山 仁『ハゲタカ』『ハゲタカⅡ』小説。経済小説。バブルがはじけた後不良債権

 で苦しむ企業を外資のハゲタカファンドが買いたたく…

橘 玲『タックスヘイヴン』小説。エンタメ。

城山三郎『わしの眼は十年先が見える 大原孫三郎の生涯』小説。大原は倉敷紡績。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ篇』小説。現代。経済と技術。

司馬遼太郎『菜の花の沖』小説。幕末。経済と外交。

池澤夏樹『静かな大地』小説。明治。北海道。アイヌや自然との共生。上記司馬の本

 を一気に相対化してくれる。

*小説は、たかが小説、されど小説。小説で正確な認識が得られると考えてはならない。他方小説(物語)は事実ではない、ある人間的真実を伝え、人を動かす。

 

*少し間違いがあったので訂正しました。失礼しました。かつ、この機に多少加筆しました。                     R6.7.30  JS

*更に加筆しました。今後お断りせず加筆するかもしれません。R6.7.31