James Setouchi 

 

ウィリアム・シェイクスピア『夏の夜の夢』

William Shakespeare“A Midsummer Night’s Dream”

 

1 シェイクスピア (1564~1616)

 イギリスの詩人、劇作家。若いころのことは諸説あり不明な点が多い。劇団経営、俳優、座付作者などをこなした。作品は『ヘンリー6世』『リチャード3世』『ヴェローナの二紳士』『じゃじゃ馬ならし』『ロミオとジュリエット』『夏の夜の夢』『リチャード2世』『ヘンリー4世』『ヘンリー5世』『ヴェニスの商人』『から騒ぎ』『お気に召すまま』『十二夜』『終わりよければすべてよし』『ハムレット』『オセロー』『リア王』『マクベス』『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』『コリオレイナス』『ペリクリーズ』『シンベリン』『冬の夜ばなし』『あらし』『二人の貴公子』等多数。『ハムレット』『オセロー』『リア王』『マクベス』を四大悲劇と呼ぶが、喜劇などもある。(集英社世界文学大辞典を参考にした。)

 

2 『夏の夜の夢』(1595~1596か)

 喜劇。貴族(サザンプトン伯)の婚礼を祝って余興で演じられたのではないかと言われる。メンデルスゾーンがこれに『結婚行進曲』をつけた。舞台はアテネ郊外の森。ここで「森」とは、日本では山地を連想するが、ヨーロッパでは平地で都会と地続き。季節は夏至(聖ヨハネ祝日)前夜。「真夏」と日本語訳すると7-8月の印象があるが、ここでは6月の夏至の前夜。この夜には、「若い男女が森に出かけ、花環を作って恋人に捧げたり、幸福な結婚を祈ったりする風習があった。また古くは、この夜、妖精たちが跳梁し、薬草の効きめが特に著しくなると言われた。」(新潮文庫の福田恒存の解説による)。

 

 出てくるのは複数のカップル。アテネ大公シーシアスとアマゾンの女王ヒポリタの婚礼が間近。若者ライサンダーとデメトリアスは黒髪のハーミアに恋している。黒髪のハーミアの父イジアスは娘ハーミアをデメトリアスと結婚させたい。その本人黒髪のハーミアはライサンダーに恋している。ハーミアの友で金髪・長身のヘレナはデメトリアスに恋している。果たしてどの組み合わせで収まるのか?

 

 これに妖精がからむ。妖精の王オベロンと妖精の女王タイタニア、その下っ端であるロビン・グッドフェロー(パック)だ。オベロンはけんか相手のタイタニアを惚れ薬を使って懲らしめようとするが、パックがうっかり間違えたのと悪戯心を起こしたのとで、森に来ていた職人たちをも巻き込んで大騒動になる。ロバの化け物に変身した職人ボトムに女王タイタニアがほれ込んで大騒ぎするのも面白い。そして最後は…?

 

 ある本によると、妖精は『ピーター・パン』のティンカー・ベルのようなかわいいものではなく、もともとは森の魔物のイメージだそうだ。この劇でかわいい妖精のイメージになったのだとか。楽しい喜劇ではある。

 

(シェイクスピアの日本語訳)

 シェイクスピアは明治期に坪内逍遥が翻訳した。以来多くの人が翻訳している。三神勲、福田恒存、小田島雄志、野島秀雄、大場建治、松岡和子らの訳もある。  

                       

(イギリス文学)

 古くは『アーサー王物語』やチョーサー『カンタベリー物語』など。シェイクスピア(1600年頃)は『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『リヤ王』『マクベス』『ベニスの商人』『オセロ』『リチャード三世』『アントニーとクレオパトラ』などのほか『真夏の夜の夢』『お気に召すまま』『じゃじゃ馬ならし』『あらし』など。18世紀にはスウィフト『ガリバー旅行記』、デフォー『ロビンソン・クルーソー』、19世紀にはワーズワース、コールリッジ、バイロンらロマン派詩人、E・ブロンテ『嵐が丘』、C・ブロンテ『ジェーン・エア』、ディケンズ『デビッド・コパフィールド』『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』、スティーブンソン『宝島』、オスカー・ワイルド『サロメ』『ドリアン・グレイの肖像』、コナン・ドイル(医者でもある)『シャーロック・ホームズの冒険』、ウェルズ『タイムマシン』、20世紀にはクローニン(医者でもある)『人生の途上にて』、モーム『人間の絆』、ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』、ジョイス『ユリシーズ』、現代ではローリング『ハリー・ポッター』、カズオ・イシグロ『私を離さないで』などなど。

 イギリス文学に学んだ日本人は、北村透谷・坪内逍遥・夏目漱石・芥川龍之介・中野好夫・伊藤整・吉田健一・丸谷才一・江藤淳などなど、多数。あなたは、商売の道具としての英語を学ぶのか、それとも英米文学の魂の深いところまで学ぶのか。