川越不動蚤の市で見つけた帝国陸軍が野戦で使ったという「隠顕燈」(いんけんとう・おんけんとう)。再生開始
ガラスは上に引き抜く仕組み。汚れと思われたのは防護用の透明シート。
背面の反射板 あたかも神社のご神体のごとく
固着していた可動部はCRC556を一週間ほど浸透させて復活。ガラスと反射板を磨く。蝋燭筒は時代感を残すために磨かない
ここが一番固かった。やっと回りました。パーツの精度の高さが尋常でない。伸びあがったスプリングにも驚く。とても綺麗に保存されていたようです
現代のローソクの規格だと15号が良いようです。その上のサイズは20号になっちゃうので太すぎて入りません
蝋燭をセット
上から見たところ
意外に長い燃焼時間。これを5㎝ほどカットして使用
点火してみる
ホルダーの固定に内径28mmの銅製ワッシャーを使うことにしました。これで安定します
部屋で試運転。おお!いいじゃん!
↓★★↓ 調査結果 この型は非常に資料が少ないようです。やっと1件のヤフオク売買記録がヒットしました。Net上で見つけたのはこの1件のみ。
まさに同じ型です どうやらオイルランプも使えるようになってます。解説に「明治時代中期」とあります。明治20年製なら136年経ってます
↓ここにはなんらかの紙が貼ってあったと思われます。そこに2文字の刻印。「宮」「伯」。 当時は軍功により宮内省から爵位を授かることがありました。これを「明治陸軍」「伯爵」と仮定すると、その対象者は黒木為楨、後藤象二郎、乃木希典、山本権兵衛、伊藤博文、板垣退助など。かなり限定されます。爵位授与の記念品ですかねえ。尋常ならざる凝った造りもそれなら説明がつきます。今後も調査は続行します
↓追加資料 明治陸軍の将校用とされる隠顕燈(1) このシンプルな形状でも当時としては高級品だったと思われます。反射板が欠品しているのが残念
↓同時期の隠顕燈(2) 蝋燭筒は同じ構造です。こちらも反射板が欠品しています。
使い方の例を発見
↓日中戦争~太平洋戦争時の隠顕燈 照明というより夜間行軍の合図などに使われた模様。残念なことに一気に風情が減少する
専用の蝋燭があったようです。現代の規格の15号と20号の中間くらいのサイズだと思われます。ロウソクは戦地までの運送・保存に適していたのかもしれません
それでは実戦で使ってみましょう。キャンプへGO!
目覚めよ。帝国陸軍の野戦灯。同時代の燗銅壺「蒼龍」と並べて点火。本日天気晴朗ナリ。焼き鳥焼いて熱燗で一杯やりますか
130年の時を超えて明治の灯りが燗銅壺を照らし出す。これは絵になるなあ。温めた酒もサイコーにウマイぜ。世の中には燗酒が苦手な人も多いけど、昔の道具で丁寧に湯煎でお燗した酒はひと味違います。これが日本酒ですぜ
余談ですがこの燗銅壺は火壺が広いので火力に優れます。また、左右別の銘柄の酒を温めて味の違いを楽しめます。
キャンプの夜は更ける
★★翌朝 使い切った蝋燭★★ 溶けたロウが見当たらない。どうやら燃えたロウは外側に流れ出ない仕組みになってます。では内側にあるのか?
なんとこれだけ。なるほど。ロウが燃えると二酸化炭素と水蒸気を排出するのみ、とはこういうことなんだ。キャンプ用品で売ってるキャンドルランタンは大量に溶けたロウが残るけど、あれは効率が悪い形状なんだな。隠顕燈はよく出来てますな。
この角度は反射板の重要さがよく分かります。ずいぶん大きく映るなあ。ここにも優れた加工あり。カーブミラーのごとく凸面になってます。ニッポンの職人たちに栄光あれ
伯爵ランプと命名 ローソクは安全に保存できるので、災害用として持っておくのも良いかも