新庄耕 「地面師たち」(集英社文庫)
医療機器メーカーの重役だった父は詐欺師にハメられ、自暴自棄になり家に火をつけ自殺を図った・・・が、その父親と私は生き残り、母親と妻子が巻き込まれ死亡した
何もかもうしなった北本拓海は、大物詐欺師であるハリソン山中の元で不動産詐欺を働き、大金を手に入れていた
次のターゲットは、山手線の新駅開通に沸き、再開発も著しい市場価値100億を超す超大型物件で、相手はコレもまた超有名企業の石洋ハウス
あらゆる情報を集め、様々な仕掛けを施し、丁々発止のやり取りの末に、後は偽造書類に判子が押されさえすれば・・・
定年間近の老刑事・辰には、未だに心に瑕疵となって消えない事件があり、秘かに独りでハリソンの行方と仕事を追っていたが手掛かりが掴めずにいた
しかし、そのハリソンと、手下となっている拓海の間に拭いきれない因縁を見出す
圧倒的なリアリティで迫る、現代社会を写し取るクライムサスペンス
実は今作の元ネタ・というかほぼほぼ同じ題材のを以前にUpしている
「記憶」に新しい事件と・・・に蘇った事件ッ! | みかんjamのブログ (ameblo.jp)
↑のは実在の事件を描いたノンフィクションで、コチラのはコレを扱ったフィクションとなっている
その為、幾らか・というかかなりの部分・シーンが重複したりしているが、ソレでも面白さや興奮度は些かも冷めたりはしない・所か、逆にフィクションな分、ストーリーが盛り上がる仕上がりとなっている
で、奥付を見ると↑の森のとほぼほぼ同時期ので、’22・9月に刊行されている
当時は森のだけが目に入り、コチラは知らなかったのだが、新にネトフリで映像化されるとのコトで帯が掛かり、積まれているので購入した
とある大物詐欺師の元にメンバーが集められ、情報を合法非合法を問わずに入手し、書類はモチロン、人をも偽造し相手を罠にハメ、大金を奪い獲る
まるで映画やドラマ・漫画を観ている様な感覚となるが、コレも実際に起きた事件がある訳で、よく使われる諺だが・・・ホンとに「事実は小説よりも奇なり」を地で行く事件とソレらが元な作品なだけに、リアリティと興奮度はかなり高くなっている
現実世界では今、詐欺案件が大量発生して問題化しているが、ソレだけに小説界の方でもソレらに冠した作品も増えている
で、昔の『コンゲームもの』は、モチロンやってるコトは犯罪で許されるモノではないものの、犯人側に同情したり納得したり、果てには応援したくなる作品もあったのだが・・・
現在のでは、現実世界に応じて憎悪しか覚えない犯人・ストーリー・展開が増えているのは、「時代性」と言っていいのかもしれない
佐木隆三 「詐欺師」(文春文庫)
昭和50年・足利銀行の貸付係の女性行員による横領事件が発覚した
ソノ被害金額はナンと2億円を超え、2年間もの長期に渡り、秘かに造った架空口座にせっせとこそこそと、しかし一方で堂々と振込んでいたのだッ
理由は・・・旅先で出会った一人の男に貢ぐ為だった 何故女はソコまでしたのかッ
幾度も引き返す・引きかえせる機会があったのに、何故コノ女はソコまでしなくてはならなかったのかッ
頻発する女性銀行員による金融犯罪を材に取り、当代一の犯罪小説家である著者が鋭いメスを入れるッ
決してコレは「他人事」の事件・遠いドコかで起きた事件ではないッ
単行本化されたのが’78で、↑の文庫化が’82という、かなり古い作品
なので装丁も現在の文春とは違っているのがナンとも
40年以上も前の作品で、ソレもかなり事実に近い・基づいている内容なので、改めて↑のと比較すると「時代性」が鑑みえて、非常に面白い
所謂≪三大銀行横領事件≫(後の2つは滋賀銀行9億円事件と三和銀行オンライン詐欺事件で1億8千万事件)の内の1つがモデルなのだが、事件の概要と驚く程共通しており、真面目で信頼厚い女子行員が、男に騙され転がされ促され、目の前にある【現金】(というのは比喩で、実際には通帳や株式・証券などの有価物 もしくはモニターに表示されている数字のコトを指し、札束ではない
)に手を付け、男の元は運んでいた・というのが概略
しかして、現在では女が・というより男の方が踊らされ操られ脅されて犯罪に手を染める・というケースの方が多かったりする
あくまで個人の犯罪である今作と、リーダーがいてその旗の下に集まり集められチームとして仕事をする・という現代の違いが浮き彫りになり、読み比べるとソノ差異に興味を抱かれれるのではないだろうか
と言いつつ・・・佐木のはかなり古い作品だし、私も古本屋で偶然見かけ買ったモノ
*裏に鉛筆で「130」と記されてる いつもの「BO」ではなく、多分神保町へ遠征した時に均一籠に挟まってたのだと思う
なので実際に読むの・購入するのは難しいだろうが、でも記憶に留めておく・作者の佐木の名前に馴染みがなかったとしたら、少しでも頭の中にメモっておくのもお薦めする
時代は昭和モノが殆どだが、「事件ノンフ」といったら今も佐木の名前が挙がるからだ
時代を過去を振り返る時、皆なソレゾレも思い出があり色んな「史」があるのだが、間違いなく「犯罪史・及び社会史」と言うコトならば、佐木は外せないと思う
*いやぁ~・・・実は初めて「You Tubeデビュー」しました
っても「声」だけですけどネ
で画面を通すと、ホンと普段自分で聴いてる声とは違う感じになりますねぇ~
実際はもっと「美声」なんですけどネ
もしよかったら観てみてください
自分のじゃなくって人のトコなんですが・・・