坂上泉 「インビジブル」(文春文庫)
戦後の傷も未だ癒えぬ昭和29年・大阪城付近で、麻袋を頭に被せられた刺殺体が発見される
被害者は地元選出の代議士秘書と言うコトで、様々な背景が考えられた
初めての殺人事件の捜査に、大阪<市>警視庁の巡査・新城は意気込むが、相方としてコンビを組むコトになったのは帝大卒の、所謂『高文組』のエリート警部補・守屋だった
叩き上げの一兵と、将来を嘱望された東京モンという、ナニから何まで正反対の二人は、事あるごとに衝突を繰り返すが・・・
やがて同様の手口の事件が発生し、一躍事件は連続殺人の様相を呈し始める
戦後の・いや戦争の深い闇を探り抉る、傑作ミステリ
大藪春彦賞と推理作家協会賞のW受賞と言う、華々しい経歴に相応しいとても深く沁み入るミステリが登場した
作者の坂上はコレがデビュー2作目と言う新人で、’90産まれというからまだ若々しい才能が出現した
デビュー作は時代モノでコチラは松本清張賞と歴史時代物協会の新人賞の、コレまたW受賞しているという、とんでもない怪物クンだ *ソッチは未読だけど・・・
今作の舞台は戦後の混乱が未だに続いている大阪で、まだ大阪に警視庁があった時代
でコレは私も知らなかったし、解説を書いている直木賞作家の門井慶喜も知らなかったという、自治と国家という『2つの警察』が存在していた時期で、作中では遂に統合される模様も描かれており、ソレらの対立を主人公の中卒の新城と、現在でいうキャリア組のエリートである守屋というコンビに投影しているし、それぞれの人生観なども織り交ぜながら対立→共感・共同へと進める展開も
作中後には正式に大阪府警が誕生するコトになる、その揺れ動く狭間を描いたのも
コノ事を発掘し掘り下げたのも見事なら、モチロン作中で描かれる事件であったりソノ背景などの描写も素晴らしい
も~今後の活躍・作品が待ち遠しい作家が現れたモノだッ
舞台が大阪なので、全編「関西弁」で通されるのだが・・・(東京モンの守屋を除く)、現在TVなどで見聞きするのとは違い、チョッと・いやかなり「キッツイ」感じがするのだが、ソノ辺りは、現地の方でないとビミョ~な違いは感じとれないのかな
黒川博行 「雨に殺せば」(創元推理文庫)
大阪湾に架かる港大橋の上で現金輸送車が襲われ、行員二人が射殺され大金が奪われたッ
翌日には、事情聴取を受けた行員が飛び降り自殺した
更に、捜査線上に浮上していた容疑者の死体が発見され、事件は複雑化の様相を見せる
事件を担当する大阪府警の黒木と亀田の、通称≪黒マメコンビ≫は、飄々としながらも事件の・犯人の・黒幕の・そして奪われた1億1千万もの現ナマを追う
日本画壇に潜む膿と闇・金融システムの裏側に仕組まれた奸智に満ちた連続殺人事件の謎を解く、<大阪府警捜査1課・黒マメコンビ〉シリーズの第2弾
と、このシリーズは去年出た黒川の新シリーズに併せて関連でUpしたのだが、ココは同じ関西・大阪が舞台と言うコトで登場させることにした
あぁ~オモロかった!・・・次が待ち遠しいわぁ | みかんjamのブログ (ameblo.jp)
このシリーズの初出は’85で、文春文庫化されたのが’88 で↑の創元推理で復刻されたのが’03と、随分と間がある作品となっている
が、黒川流の「軽快さ」は既に充分に発揮されていて、黒マメコンビ及び、上司や仲間たちとの「軽妙な会話劇」が、ホンとにオモロイ
事件自体はかなり殺伐としている上に、入り組んだ内幕の話しも取り入れられているのだが、やはりそ~深刻な雰囲気にならないとこが「黒川節」と言ったトコで、スイスイっと読み進められるのはとても快い
今作では黒川の出自()である日本画壇の裏側も描かれており、その辺りの生臭さをキッチリ描けるのは、「ならでは」という感じがする