「船の旅リポート」(31)その2 From Chuck
2月19日(金) 曇
今日はリフレッシュデイと言うことで、全てのアクティビティはお休みだ。従って太極拳の練習もお休みだった。しかし、運動不足なので、90分間のデッキウォーキングだけはした。何故かと言うと、海が期待に反してとても穏やかなのだ。歩くのに殆ど差し障りが無かった。まだ「吠える60度線」に達していないのかローリングもピッチングも穏やかである意味で拍子抜けだ。
本船の本日正午の位置は、南緯56度59分 西経63度40分で、ドレーク海峡の真っただ中にいるのに、波高は、7Feet程度しかない。ただ、気温は3℃、海水温も4℃と低くなってきた。気圧は1,008hPaとやや低くなってきている。風は22Ktsと強い。本船の速度は15.92Ktsで順調な航海を続けていた。
今日は南極遊覧記念トトカルチョに応募した。問題は、これから出会う南極の景色の中で、見所の一つでもある「卓上氷山(棚氷から崩れ落ちた氷山)」をブリッジが最初に観測する日時を予測せよと言うもの。最も予測が近かった人1名様をブリッジにご招待してそこから南極を観光させてくれると言う。明日の午後にはサウス・シェットランド諸島に近づき、午後1時にはキングジョージ島のアドミラル湾に入ると言うので、僕は自分の生年月日に合わせて、午前10時21分と予測して投票した。今日正午の海水温が4℃なので、南極半島に近づけば更に下がると予測すると、実際にはもっと早く観測されるかも知れない。まあ、お遊びだからあまり気にせずに投票した。
南極では、2月21日午後に、Ⅰ氏の部屋にサファリツアー参加者14名の内、南極へのオーバーランドツアーに参加しなかったⅠ氏を含めて7名が集まって南極の海と動物を観察することになっている。トトカルチョにはずれても、しっかり高見からの見物ができることになっている。
夕食前に僕たちの船室に常連のO氏、Ⅰ氏が集まってきてビール、カサーシャ、ワインを飲んだ。夕食後もまた集まってきて、先日T2氏が買ってきたスコッチ・ウィスキーのWhite Horseを開けて飲んだ。
明日は日の出が5時39分、日の入りが20時50分で、昼間の長さが15時間以上になる。当分は南下すればするほど昼間の長さが長くなる筈である。もう2月下旬に入ったので南半球も夏から秋になるが、1カ月ほど前はこの辺でも白夜になった筈である。北半球のアラスカの白夜は見たことがあるので、今回はぜひ南半球の白夜を見たかったが、本船の日程が1カ月も遅れたので、見えなくて残念。
2月20日(土) 曇時々晴
昨夜は結局波静かで心地よい朝を迎えた。今朝の太極拳の練習は屋外のスポーツデッキで行われたが、さすがに寒かった。そのうちに「あー、流氷だ!」の声で、水平線を見るとまぎれもなく白い氷の塊が浮いていた。昨日の流氷トトカルチョは完全に失敗で、最初に流氷を確認できたのは今朝の5時45分だったらしい。
朝食後の8時半から前方のブリッジのあるデッキが船客に開放され、早速持参した防寒具に身を固め見に行った。進行方向右手にキング・ジョージ島が見え、そこかしこに棚氷が切り離されて出来たと思われる流氷が浮いている。その中を本船は、アイス・パイロットの指示に従って流氷を避けながら低速で進んで行く。相当大きな流氷もあり、上部はフラットで切り口が青く光ってとても美しい。こんな流氷にぶつかったら本船もタイタニック号のように沈むだろうと言うことが容易に想像できる。
午前中は海面には無数のペンギンが本船の作る波にじゃれているようにピョンピョンと顔を出し遊んでいるように見えた。これが南極の海なのだ。こんなに沢山のペンギンが生きていけるのは南極の海が豊饒の海だからなのだ。時折ブリッジからの船内放送で、クジラが右前方で潮を吹いていますなどと伝えてくる。急いで見にいってもクジラはその頃はすでに潜ってしまって見ることはできなかった。
僕のデジカメに意外なことが起こった。どうも低温にさらしておくと、電池の消耗が激しくかつ液晶画面が暗くなってしまうのだ。それで、撮ってはポケットで温め、撮ってはまた温めるという作業が必要になった。それでも午前10時頃には電池のマークが出て、それもあと半分とのことで折角これまで撮った写真が駄目になっては困るので、船室に戻り充電をする始末だった。
その後、本船は午後1時前にキングジョージ島のアドミラル湾に入り3方を氷をいただいた岩山に囲まれた湾内に一時停泊した。朝とは変わって気温もあがり手袋無しでもデジカメを操作できるくらいの暖かさだった。本船の真上の空は低く雲が垂れこめていたが、遠くの島の上空は晴れていて海に落ち込む氷河が白く輝いていた。時折、流れてくる小さな氷山は薄いブルーで染めたような神秘的な色をしており、いくらデジカメで撮っても湖の色は再現できないのではないかと思われた。
午後からも、ペンギン(小形のジェンツーペンギン)が、波間にピョンピョン姿を現してとても可愛らしい。また、それこそ時々遠くで潮を吹くクジラが散見できた。クジラはゆっくりと背中を出して泳いでいるが、すぐに尻尾を上にして潜ってしまうので、写真に撮ることは出来なかった。それでも潮を吹くのを含めて今日は5回クジラを見た。白長須クジラのような大きなクジラではなく小形のクジラばかりで、クジラの種類は不明だった。明日はもっとうじゃうじゃいるような所に行くらしい。楽しみだ。
2時過ぎから本船からのサービスで暖かい甘酒が船客にふるまわれた。あまりに甘かったので、Tさんが日本茶を飲ませてくれるといので同室のT2氏と訪問して緑茶を粉末にして抹茶のようにしたものにお湯をさして飲ませてくれた。本船のお茶は、いつも「ほうじ茶」なので日本の「緑茶」が懐かしかった。
本船は、そのままサウスシェットランド諸島の南側のブランズフィールド海峡を南西方向に進んで19時頃にデセプション島に到着した。デセプション島は、火山のカルデラ湖のような形をしており、東側が海峡に開口しているので、本船はそこから湾内に入るとの話だったが、結局湾内には入らず湾口を右舷側に見て近くの錨地で停泊した。聞くところによると、湾内は火山の影響で海水温が高いそうである。夜間の航行は氷山などがあり極めて危険なので停泊し、明日の朝、明るくなってからブランズフィールド海峡を横切って、いよいよ南極大陸から張り出した南極半島に向けて航行することになっている。途中、ゲイラッシュ海峡を通過するが、その時にクジラやシャチなどが現れるとのことで、それをI氏の部屋から観ようという計画だ。
この辺の島々の名前や海峡の名前は、読者の皆様にはチンプンカンプンでしょうから、そのまま読み飛ばして下さい。詳しく書いているのは、僕自身の航海記のためでもあり、すぐに忘れてしまいそうなので、敢えて詳しく書いています。